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転生令嬢は恋がしたい  作者: 海瑠トワ


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第16話

「メル、少し寄り道していくところがあるんだけど、いいかい?」


 向かいに座ったアレンお兄様がなんだか楽しげだ。


「ええ、全然構いませんよ」


 もともと私の予定にはなかったお出かけだし、こうして兄ふたりと馬車に揺られるのも久しぶり。

 そういえば、小さかった頃はよく手を繋いで歩いたなぁ。あの頃はまだ自分の顔が危険なものだなんて思ってなかったから。


 馬車の小窓から外をチラリと覗けば見覚えのない屋敷の前に止まった。


 …………どこ?

 お兄様はこんなところになんの用事なの?


 馬車をおりる背を見送ってソワソワとしていると、外から聞こえた声に目を見開いた。

 え、待って、嘘……。この声……。


 お兄様と共に乗り込んできた黒髪の男性は小さく屈んで静かに私の横に腰をおろした。


「お久しぶりです、メリーベル嬢。……ブラン殿、今日はご一緒させていただきます」


「クロード殿、俺も今日を楽しみにしていたのです。それから、もう少し砕けて話して頂いてもいいですよ」


「では、そうさせていただきますね」


 談笑を始める三人。あまりの展開についていけない。

 どうなってるの? なに? 夢?


「ふふっ、メルは嬉しくて固まってしまったみたいだね?」


 クロード様を見上げたままポカンとする私をアレンお兄様は面白そうに笑う。


「お、お兄様!?私、聞いてませんよ!?」


 確かに!この間会う口実がないと愚痴をこぼしたけど!?どうやってデートに誘うか迷うと相談したけども!

 いつの間にそんな仲良くなったの?ずるいわ!私を差し置いてそんな楽しげに話をするなんて!


「すまない……聞いていなかったのだな」


「あっ!違います!!あのっ……嫌だとか、そんなんじゃなくて!知ってたらもっとオシャレしたのに、って……」


 なんだって今日はシンプルな格好なんだ。お化粧も薄いしこれじゃ地味すぎないか……。

 それに比べてクロード様は、黒いシャツにスラックスとシンプルながらもそれがとても似合っている。引き締まった体が強調されて素敵だ。さすがは騎士様である。


 ぐっと帽子で顔を隠せば戸惑ったような声が降ってきた。


「あ、いや……十分、綺麗だと、思う」


 短いその言葉に勘違いしそうになる。

 落ち込んだ私を励ましてくれただけ!そう!


「あ、ありがとうございます……」


 ドキドキと跳ねた心臓を落ち着かせて見上げるとパチリと目が合って逸らされる。


「…………僕たちがいるの忘れてないかい?」


「ほんとだよ、俺はいつまで黙っていればいいんだ?」


「あっ……えと、ごめんなさい?」


 呆れ顔のお兄様の声でハッとした。

 隣にクロード様がいると考えただけで意識がそっちに引っ張られてしまうから大変だ。


「それはそうとして、お兄様、いつクロード様と仲良くなりましたの?」


「ああ、この間メルを連れて観劇に行ったと聞いてお礼を言いに行ったんだよ。そしたら思ったよりウマが合ってね、是非僕も仲良くしたいと思ったんだ」


 ん? お礼を? アレンお兄様が?

 一見優しげに見えるアレンお兄様だが、これでも次期伯爵。表情を取り繕うのは得意だし、相手の真意を読み取るのも上手なのだ。

 そんなお兄様がお礼を言いに行くだけなんてあるの?


 ジッと見つめていると、パチンとウインクが飛んできた。


 ……もしかしてお兄様。クロード様を探るために近づいたのね……。どおりで、あの時やけに詳しいなと思ったのよ。

 こうして逢瀬の機会をつくってくれることには感謝なんだけど、妹の想い人を内緒で調査するのはいただけないと思うのよ。


 なんて、抗議しても無駄なんだろうけどさ。


「ま、いいですわ!それよりクロード様、お忙しいのに兄のわがままに付き合ってくださりありがとうございます」


「僕はわがままなんて言ってないよ?」


 このピクニックも結構無理を言ったのではないだろうか。副騎士団長というお忙しい仕事柄、少ないであろう休みは体を労わった方がいいのではないだろうか。


「いや、外でゆっくり風に当たるのも好きだ」


「そうなのですね!……でも無理はしないでくださいね」


 私がそういえば、ぱちくりと不思議そうな顔をした。


「俺は君の方が心配だ。すぐにでも風に飛ばされてしまいそうだ」


「え?」


「こんなに細くて俺が触れたら折れてしまいそうだ」


 クロード様の赤い瞳に見下ろされて、真剣な顔で言われる。よく分からないけど、じわじわと笑いが込み上げて我慢できなくなった。


「ふふっ、あはは!ふふふ、そ、そんなことありませんわよ! ほら、触れただけで折れるなんて。大丈夫ですわ!」


 何が心配か知らないけど、眉を下げて真面目に言うから大きな捨て犬みたいでちょっと可愛いって思っちゃった。ほら、兄たちも苦笑しているわよ。

 クロード様の手を取ってギュッと握る。彼との厚みの差は歴然だけど、これくらいでどうこうなるわけないし。


 ピクリと一瞬だけ固まったクロード様は、笑い転げる私を見て穏やかに微笑むとキュッと指先を握り返した。

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