第15話
朝の光が窓から差し込み瞼を持ち上げる。
サラサラと揺れる木々の葉たちにつられ白いカーテンが踊る。はぁ、いい朝。もう少し寝ていたいなぁ……。
肌触りのいいシーツを撫でてもう一度目を瞑ろうとした。
「おや、メルはお寝坊さんだね」
聞きなれた穏やかな声にビクリと肩を揺らした。
……なんでいるの。
「もう外は明るいぞ」
両脇から話しかけられ無視を決めるわけにもいかない。渋々体を起こして長い髪をかきあげた。
「……お兄様がた?いくら兄妹といえ淑女の寝室に勝手に入るのは如何なものかと」
「ふふ、ごめんね?でも、お出かけの誘いをしようと思ったんだけど、まだ寝ているって聞いてね」
「いつまでも起きてこなさそうだったからさ、迎えに行こうかって」
うーん、そう言われると何も言えないな。二度寝しようとしたのは事実だし。私の抗議はどこかへ消えていった。
「お出かけって?」
ベッドから足を下ろしてふわふわのスリッパを履く。欠伸を噛み殺して訊ねるとアレンお兄様はニコリと笑った。
「久しぶりにピクニックでも行こうか。満開のフリージアの花が綺麗だそうだよ」
「そうそう、メルの好きなチョコの入ったマフィンとスコーンを用意して貰ってるんだぞ。ジャムもバタークリームもたっぷりな!」
胸を張っているブランお兄様は私よりも楽しみそう。
まぁ、確かにたまには運動がてらお出かけもいいかしれない。この兄たちのことだから、きっと既にどこかの庭園を貸切にでもしているんだろう。
「はぁーい、じゃあ準備するぅ」
寝起きの頭のままステラのところへ。
「あらあら、お嬢様、お着替えしましょうねー」
「服はこの間買ったワンピースにしてくれ。靴も」
「帽子は白い大きなリボンのやつな!」
「はい、かしこまりました」
私のボサボサの髪を撫でながら苦笑したステラはお兄様たちの指示によりテキパキと動き出した。
うとうととしている間に支度が整う。
ボーッとしながら紅茶を飲んでいると段々と意識が覚醒する。あら、私、いつの間に着替えたのかしら。
既に髪も編み込み終わり、軽く化粧をして整えるだけとなっていた。
「ようやく起きられましたね。ほら、もう終わりますよ。アレン様たちは応接室でお待ちになっていますよ」
日焼け防止のクリームを塗られ、うすーく化粧を施される。
鏡の中には可愛らしいフリルのついた白いワンピースを着た少女。シンプルな町娘風なデザインに少しだけ似合ってるじゃない、と言いたくなった。
やっぱりドレスよりワンピースの方がこの顔には合っていると思う。
綺麗なリボンと共に編み込まれた髪は動きやすい。
帽子を被れば完成だ。
タタタッと応接室まで少しかければ、優雅にお茶を楽しむ貴公子たち。ふたりとも水色の髪をキラキラとさせて微笑む。若い令嬢たちが見れば黄色い歓声が上がるんだろうな。
「お待たせしました、準備できましたわ!」
「うん、いつものように可愛い。まるで花の精だね」
「ああ、連れ去られないか心配なほどだな」
カップを置いて私に近づいた兄たちはまた過剰な褒め言葉を残した。
「私も、ドレスより動きやすくて好きですわ」
袖はヒラヒラしていて可愛いし、真っ白で汚れないかが心配なこと以外は文句はない。
「うん、じゃあ行こうか。馬車を用意してあるから、乗って」
「あ!兄上、ずるいぞ、俺もメルをエスコートしたかったのに!」
そっと私の手を取ったアレンお兄様に着いていく。
馬車に乗ると賑やかなブランお兄様の声を聞きながらゆっくりと車輪が動き出した。




