第14話
クロード様と観劇を見に行った数日後。出かけた次の日には、感謝の手紙とお礼のお花を贈って貰った。赤くて綺麗なラナンキュラスの花が彼みたいで、お花には興味ないかなと思いつつもつい手に取ってしまったのだ。
今日は天気も良くて風も爽やか。庭に咲いているチューリップを眺めながら、楽しかった思い出を反芻し次の予定を考えていた。
「メルー!どうして俺に言ってくれなかったんだ!?」
お茶の時間に乗り込んできた兄ふたりにビックリした。
「ブランお兄様……?言わなかったって、何をですか?」
私が首を傾げるとブランお兄様はガックリと項垂れた。
「メルが副騎士団長が気に入ったって聞いてね、ブランは大慌てだったんだよ。 メル?脅された、訳では無いよね?」
状況の説明をしてくれたアレンお兄様はニコリと笑うと私の隣に腰掛けた。
「そんなことありませんわ。私がお父様にお願いしたのですわ」
「そう……それならいいんだけど……」
そういいながらもアレンお兄様は思案顔だ。
向かいのソファに雑に腰掛けたブランお兄様は、ステラが用意した紅茶を飲んで一息つくとジッと私を見た。
「はぁ、確かになぁ…………家格や人柄は問題ないんだがなぁ」
「そうだね、彼は優秀だし真面目で誠実。侯爵家自体も悪い噂はない……ないんだけどね」
兄たちの言いたいことは分かった。でも、これに関しては家の迷惑にならないのなら口を出して欲しくない。
仕方ない。ここは私の必殺技を使うべきか。
俯いて一拍。
「……お兄様たちは反対ですの……?私、あんなに楽しかったお出かけ、初めてでしたの……でも、お兄様たちがダメだと言うなら……我慢しますわ……」
そう言って顔をあげるとふたりはギョッとして目を見開く。
俯いた拍子に瞬きを我慢してめいいっぱい涙を溜めた目でお兄様たちを見た。
「いやいや!反対なんて言ってないぞ!俺はいいと思う!な?だから泣くな!?俺はお前の幸せが一番だ」
「そ、そうだよ!?メル?君が笑ってくれないと僕は心配で夜も眠れないよ……それに、下手に王家に囲われるよりマシだ」
ふぅ、ちょろいん。
オロオロとしながら慰めにかかるお兄様たちに若干呆れるけど、それもこれも私が好きすぎるせい。全く、少しは自分たちの結婚の心配もして欲しいものだ。
「ありがとうございます、お兄様!大好き!」
そう言ってアレンお兄様の腕に抱きつけばふわりと頭を撫でられた。
「メル!?俺は!?」
「ブランお兄様も!大好きよ!」
「こらこら、メル、君はもう立派な淑女なんだから」
そう苦笑しながらもアレンお兄様は嬉しそう。と、そういえば、聞き逃しそうになったんだけど、少し疑問。
「ねぇ、お兄様?どうしてさっき、王家が、なんて言ったの?」
私の疑問にアレンお兄様は少し疲れた顔をした。
「ああ……どうやらレオン王子もセドリック王子も、メルに興味をもったみたいでね……父上がキッパリと断っているのだがどうにかして会いたいと言っているんだ」
「ええ?どうして?私、伯爵家の令嬢よ?公爵家のご令嬢もいるのに、その方たちを差し置いてなんて無理よ」
もう会うことなんてないと思っていた天上の人たち。
レオン王子はザ・王子様って感じの爽やかそうな感じで、セドリック王子は少し硬派そうというか俺様っぽいというか、って感じだった。
顔は……正直あまり覚えてない。
ほら!あの時、私、緊張してたし……?
確か、どっちも金髪だったなぁ。
「ははは、メルは分かってないなぁ!こんなに可愛いんだから、王子たちが惚れるのも当たり前だろ?」
「でも王家にはあげられないよ。一度城に入ってしまえば帰ってくるのが難しい。その点、侯爵家ならば僕たちが訪問してもいいし、フローレス家の近くに家を新しく建ててもいい。なんなら離れに住んでもいいんだ」
「おっ、それいいな」
なんだか少し乗り気になったお兄様たち。私と会えなくなるくらいならクロード様との仲を応援するということなんだろう。
「王族は私も嫌です!仕事多そうで大変そうだし……ダンスは未だに苦手ですもん……」
完璧を求められる王族と並ぶのは私には難しい。この兄たちだからこそ笑って許されているんだから。
「ふふ、そうだね?メルのダンスはバンビのようで可愛らしいけど、王族として名を連ねるには少しお転婆すぎるかな」
え……そこまで?
確かに運動音痴な自覚はあるんだけど、アレンお兄様にそう言わせるくらい私のダンスって酷いんだ……。
「ま、まぁ、靴に足跡が少し残るくらいにはなったんだから大丈夫だ!それに、メルにどれだけ踏まれても痛くないしな!」
………………そっか。
「……うん、もう少し、マシになるように頑張るね」
素直なアレンお兄様の言葉になんだか少し悲しくなった。
足を踏まずに踊れるくらいになれたらクロード様を誘ってみようかな……いや、やっぱり滑稽だろうからやめた方がいいか。優しいお兄様曰く、バンビのような踊りを見せるのはやっぱり恥ずかしいからね。




