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転生令嬢は恋がしたい  作者: 海瑠トワ


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第13話

 なんだか少し落ち着かない馬車をおりて劇場の前に立つ。馬車を降りた途端ものすごい視線とざわめき。

 一瞬だけ何っ!?ってなったけど、そうだったと思い出して落ち着いた。絶世の美女(笑)である私と醜いと言われるクロード様の組み合わせが物珍しいようだ。


 それをわかってしてか、クロード様は少し申し訳なさそうに眉を下げた。


 私としてはこんなイケメンの隣に立っていることを自慢したいくらい。だから気にしないで欲しい。

 クロード様の腕を取って見上げる。


「私、すごく楽しみにしてたんです。連れてきてくれてありがとうございます!」


 周りの目なんか気にしないぞ、とニッコリ。

 なんだか顔を赤くして倒れる人も見えた気がするけど気にしない!気にしたら負けだ!


「それなら良かった。今日は二階の個室を取っている。その方がゆっくりできるだろう」


 個室……!

 VIP席みたいな感じで壁で区切られている席。完全個室ではないけど、小声なら周りに聞こえないだろうし、何より五月蝿い視線も減る。

 クロード様の心遣いに感謝だ。


 時間があるからと、劇場に備え付けられたカフェのような場所。こんなところもあるんだ。まぁ、確かにお芝居を見ながらお茶をしたかったりするもんね。

 貴族席の人たちは、使用人に頼んでこのカフェでコーヒーや紅茶を用意してもらうこともあるみたい。


 そんな事をクロード様から聞きながらふむふむと辺りを見回す。相変わらず視線はいたいけど、視界が良好で少しだけテンションが上がった。


 時間が迫り二階に上がる。

 高めの位置から見る舞台はなんだかワクワクしてしまう。たくさんの人を見下ろす感じが、うん、『人が〇〇のようだ!』って言いたくなった。


 そんな私を微笑ましげに見ていたコンシェルジュの人に気付いてそそくさと席に座った。

 私の横にそっと腰をおろしたクロード様は可笑しそうに笑う。


「せっかくだからもう少し見ていても構わない」


 なんだか子供扱いされているみたいで頬が膨らんだ。


「いいのですわ!見たくなったらまた連れてきてもらいますもの!……えっと、ダメですか?」


「………………構わない」


 伺うように覗き込めばふい、と顔を逸らされる。ぶっきらぼうな言い方だけど、また連れてきてくれるらしいクロード様はとても優しい。

 嬉しくてえへへ、と笑えば開演の合図が鳴った。


 今日の演題は『愛の花』だって。

 最近流行りの身分違いの恋をテーマにした話らしい。


 身分違い、ありきたりだよね。


 私はロマンチックな話が好きではあるけど、割と現実主義なほうかな。こういう王子様と平民が、っていう話はどうも、よく考えたら現実的にありえないよねと思ってしまう。

 生まれた環境が違うんだから、結ばれたあとの苦労は計り知れないと思う。それで結局破局するんだろうなぁ、なんて思いながら見てしまうのだから我ながらひねくれている。


 薄暗い館内で少しだけひやりとして軽く腕を擦る。

 するとチラリとこちらを見たクロード様が着ていた上着を私の肩にかけてくれた。


「え……あ、リオレンド様が冷えてしまいますっ」


 慌てて返そうとしても「今掛けるものを頼んだからそれまで着ておけ」と諭される。

 ふわりと香る彼の匂いが私の鼓動を早めた。


 途中からお芝居よりもクロード様が気になってしまった。それでもそんなに悪くない内容だったと思う、物語だし。


 帰りの馬車。

 楽しかったこと、連れてきてもらったお礼と劇の感想を話していた。私が興奮してペラペラと喋ってもクロード様は嫌な顔ひとつせず聞いてくれる。たまに相槌を打ってはクス、と笑う。


「……あ、あの。リオレンド様」


 少し間を置いて緊張する手を祈るように握った。


「ん?どうした?」


「えっと、その……良ければ私のことはメリーベルとお呼びください」


 ずっとそう呼んで欲しかった。

 家名ではなく、私というひとりの女として。


 熱くなって赤い顔を隠すように俯けば、自分の心臓の音がクロード様まで聞こえていそうだった。


「……分かった。俺のこともクロードと……」


「いいのですかっ!?」


 嬉しくてパッと顔を上げる。

 驚いたのか目を丸くする彼は「ああ」と軽く返事をするとフッと笑った。

 わあ、今日はクロード様の色んな表情が見れて最高の日だ。


「また、是非一緒させて下さいませ」


「そうだな。俺も楽しかった」


 馬車をおりて屋敷の前。ふわふわと夢心地のまま見上げれば穏やかな顔。ぺこりと頭を下げて「また」と言われると胸がキュンとなった。


 『また』があるのか……!


 クロード様を見送った私は、しばらく部屋のソファに横たわりながら余韻に浸っていた。

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