第11話 クロードside
寂しげに笑う様子に不憫だと思った。
何かを諦めた表情に同情してしまった。
まだ年若い彼女が街の中をろくに歩くことが出来ないなんて、酷くつまらないのではないか。人が当たり前にできる経験をしたことが無いなんて、可哀想ではないか。
女神と謳われる彼女は案外普通の少女だった。
家族である父親の前ではコロコロと表情を変え楽しげに笑う。手作りだというサンドウィッチはとてもよく出来ていて、素直に感想を述べると嬉しそうに頬を緩める。
料理をするのは貴族令嬢として一般的ではないが、外出が出来ない彼女を思えば気を紛らわす手段なのかと思えた。
だから、つい引き受けてしまった。
俺であればある程度の事象は対処できる自信がある。
この哀れな少女に外の世界を見せてあげたい。
そう思ったから。
返事をしてから、彼女が嫌がったら、と思ったがそれは杞憂だった。
恥ずかしげに頬を染める様子は愛らしい。「慕っている」と伯爵からの言葉通り、俺に対して友好的な態度はその控えめな性格と相まって好ましい。
特別な意味ではないとしても、その純粋な好意が嬉しかった。
だが、騎士団の宿舎に帰りよく良く考えれば、俺でなくとも、という考えが頭を占める。
俺と並んで歩けば余計に目立つだろう。
それに、年頃の令嬢だ。俺との仲を勘違する……奴がいるかは知らないが、噂になれば彼女の今後に傷がつくのではないか。
とここまで考えて首を振る。
一度約束したことだ。
騎士として二言は無い。
それに、あの伯爵のことだ。溺愛している娘の不利になることはしないだろう。何か考えがあるのだろう。
余計なことは考えずに彼女が自由に過ごせるようにすることが自分の役目だ。
……念の為に父上たちにも報告して手を貸してもらうか。




