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みて、みて、みてぇ~!今世紀初の勇者になったんだ。やったね!でも魔王が十万匹いるらしい……だりぃ~  作者: イニシ原


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003話 ~ ルゥ&レェが追加されました

 デリバリー魔王開始から。

 ――三週間後。


「プライム様、魔王番号25をお持ちしました」


「うむ」


 檻に繋がれた魔王を、スケさんとカクさんが連れ出す。

 プライムは慣れた手つきで心臓を刺すと、灰になっていく魔王を気にも留めず、そのまま椅子へ座り直した。


「空調が効いた部屋での魔王退治、いいぞ!」


 プライムはワインを飲みながら、処理され連れ出される魔王を眺めていた。


「どんどん持って来ていいから。初めからこうすればよかっただろ」


「プライム様……まだアルコールを飲んではならない、ご年齢ですので……」


 少し顔を赤らめたプライムは、鋭い目付きで言った。


「外に出る時は解毒魔法掛ければいいんだろ? この間、覚えたよ」


「はぁ。あまり飲み過ぎないようにお願いします」


 カクさんは困った顔をしながら、スケさんと、次の用意に向かって行った。


 ピンポーン!


 来客を告げるアラームだ。


「……俺が出るよ」


「いや、待って下さい。私が出ますので、プライム様は座っていて……」


 奥の部屋からカクさんの声が飛ぶ。

 だが、既にプライムは立ち上がっていた。


「いいって、ちゃんと酔いは覚ますよ」


 この数日、誰にも会っていなかったからだろうか?

 プライムは、自分に魔法を掛けながら、テントの扉を無言で開けた。


「……ん? いない」


「……います。ヴェルサスです」


 声のする方を集中すると見えた。

 頭を掻いて照れているヴェルサスがいた。


「何かご用件かな? グループ長」


「配達不可能な魔王がいました! 申し訳ありません、現地討伐を……」


 プライムはうなずいた。


「スケさん、カクさん。魔王退治に出るぞ!」


 スケさんが、鎧一式持ってきてくれた。


「私が、詳細を聞いておきますので、ご支度をどうぞ」


「外気温は少し低めですので、こちらの外套も」


 いつの間に現れたのか、カクさんが追加の装備を差し出していた。


 どうやら、強行軍なら一日で着く距離らしい。

 だがプライムは、それを半日も掛けず駆け抜けるつもりだった。


 村のある者が、勇者パーティーを見た。

 慌てて家族へ知らせに戻ったが、その頃にはもう遥か遠くへ消えていたそうだ。


「そう言えば、どうしてその魔王は、テントまで運んで来れないんだ?」


 プライムはパーティーの先頭を走りながら、隣のカクさんへ声を掛けた。


「はっ! かなりの回復力を持つ魔王だそうです」


「それだけでか?」


「そのことなのですが、どの意匠学を持つ者も、見たことのないようで。傷を与えても――」


「治るから縛れないってことか」


「はっ、その通りです。プライム様なら、とのことでございます」


「ふーん、そうか。俺でさえ、まだ覚えきれてないからね」


「お! あちらの丘の上に、ダンジョン入口がございます」


「よし、そこで休憩だ!」


 丘の上から見ると、ぽつぽつとパーティーメンバーたちの姿が見える。

 無理な強行軍で、陣形は長く伸び切っていた。


「最近の若者は、魔法の使い方がなっておりませんな。プライム勇者殿」


 そこにいたのは、見かけだけ老人の魔法使いだった。


「あ、これは魔法協会理事長ナドラドさん。お久しぶりです」


 丁寧にお辞儀をするプライム。

 スケさん、カクさんは準備をしながら、気にしている様だ。


「元、協会理事長じゃ。メルキオルは元気なのか?」


「はい! ナドラドさんがメンバーに入ってくれて喜んでました」


「ふぉ、ふぉ、ふぉ。ところでプライム勇者殿、このダンジョン入口の階段、もう数えたかね?」


「……いや」


「意匠だけではない。階段にも情報は刻まれておる。北向き十五段なら、魔王の間は地下十階じゃ」


「え? それはここへは一度、見て来ているから言ってるのではないのですか?」


「ふぉ、ふぉ、そうかもしれんし、そうではないかもしれん」


 プライムが返す言葉を探している時、カクさんの声が飛んだ。


「プライム様、集まりました。参りますか?」


 手を振るナドラドを背に、プライムは勢いよく階段を駆け下りた。

 そのままモンスターやトラップを突き抜ける。

 気づけば、地下十階の魔王の間へ辿り着いていた。


「とりゃー!」


 プライムの頬を汗が流れる。

 振り下ろされた剣から、魔王の赤い血が滴り落ちた。


「スケさん、カクさん! 俺一人で倒せたよ!」


 プライムは笑顔で汗を拭いながら、カクさんの合図を制した。


「もう皆を帰らせてくれ」


 祝福を受けることもなく、気づけば残っていたのは、スケさんとカクさんだけだった。

 一時的には嬉しい勝利も、一人で倒せた喜びはすぐに薄れた。


「魔王ガエルか……レベルが低かったな」


「それでも、お一人でお勝ちになられたのです」


「それにしても、魔王はそこまで回復力が強かったか?」


 プライムは、灰になった魔王を見下ろした。


「……いや、おかしいのは、この意匠か。まさか、お前たち何か隠しているのか?」


「ま、まさか。このカク、隠し事などしていません!」


「私も同じです。……何か、魔王に変化でも……」


 スケさんは、何かを感じ取るように目を瞑る。


「メルキオル様へ連絡なさるのが、良いかと思います」


「そうだな……」


 プライムが聖フォンを取り出そうとした、その時だった。

 ふと、何処かにトイレがないかと辺りを見回すが、魔王の間にそんなものがないことくらい、わかっていた。

 でも、丁度よく影に隠れた大きな柱があった。


「俺、ちょっとオシッコ」


 魔王の間でこんなことをするのは初めてだった。

 呪いでも掛けられないかと思ったけれど、二人からは注意もないし、気にしないことにした。


 チョロロロ~。


 それは、プライムがひと息ついている最中だった。

 いつの間にか目の前に子供が立っている。


 ……カシャ。


 ――マジックフォンのカメラの音。


 次々と現れる疑問で息が止まった。

 最初はパーティーメンバーに紛れていた子供だと思った。


 でも、そこは勇者の直感とでもいうものが働いた。

 その子は魔王だと。


「……フフフ」


 その笑い声は、反対側からだった。

 ズボンを整えながら振り向くと、そこにも子供がいる。

 似たような顔をした、もう一人の魔王だった。


「姉さん、やったね」


「あーし、面白い物撮っちゃったよ」


 魔王なのに、殺気がない。

 いや、それよりも、子供にしか見えなかった。


「お前たち魔王だろ?」


「そうだけどなに? これ見ればわかるでしょ?」


 女の子ぽい魔王が自ら意匠を見せながら、ケラケラ笑う。


「僕のはこれです」


 男の子ぽい魔王も手のひらの意匠を見せびらかせていた。


「……ルゥとレェか」


 プライムは、二人の意匠を交互に見た。

 読めないことはないが複雑な形の意匠だった。


「そうでーす」


「あの、勇者さんもお持ちですよね」


「フォンくらい誰だって持ってるでしょ? あーしと交換しよーよ」


 プライムは思わず眉をひそめた。

 魔王と連絡先を交換する勇者など、聞いたこともない。


 そんなことより、今すぐ切り殺すべきだと思った。

 見た目に躊躇している場合ではない。


 ……だけど。


 スケさんとカクさんに、この声が届いていないことが気になった。


「魔王たち、死んでもらうぞ」


 双子の魔王を見ながら、プライムは腰の剣を聖なる呪文と共に引き抜いた。


 恐れる様子はなかった。

 ルゥが足の裏に書かれた意匠を見せびらかせていた。


 プライムが読んだのは、77レベル。

 その数字は、絶対信じられないことだった。

 だけど、動けなくなった。


 近づいて来る双子に声すら出ない。


 ピッ。


 その音だけが、プライムの頭の中でこだまする。


「プライム様、お腹の調子でも悪いのですか?」


 カクさんの声が聞こえた。

 まるで寝てしまっていたようだった。


 だけど、そこには聖フォンの画面に映る魔王の名前があった。

 ルゥ&レェと……。

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