表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさんが異世界でチートする話だったのに  作者: 陰キャきっず
新世界3 ハザード・オブ・ザ・デッド
82/122

その17(完)


「フハハハハ……これで世界は私のも……」


「そうはさせない!」


「ぬっ、エンとスイがやられたか」


 エレベーターを降りた先、長ったらしい通路を抜けた場所にじっちゃんはいた。

そこは何台ものモニターが設置された指令室のような場所だった。 


 ここですべての決着をつける。


 ザッと横にキレイに並ぶ俺たち。


「ニューサンブレラ首領じっちゃん。あなたを色々な罪で逮捕するわ。理由はもちろんおわかりですね?」


「はっ、もはや警察など機能してはいまい。今や世界中にゾンビが溢れているのだからな」


 銃を構えたケイさんに臆せず、傲慢な態度で話し始めるじっちゃん。


「それでも私は警察官よ。法と自分の正義感に従い、あなたを倒すわ」


 だが、相手がどんなことを言おうと関係は無い。

力づくでも止めるのだ。


「いいだろう……貴様らのはらわたごと食いつぶしてくれるわ!」


 じっちゃんが体からプレッシャーを放つ。

この気迫、四天王以上だ。


「来るわよみんな! 準備はいい!」


「タバコの恨み……ここで晴らさせてもらうぜ!」


「我は空、我は鋼、我は刃!わ―――」


「先輩と副長の仇、取らせてもらいます!」


「ゾンビがいたんじゃおちおちニートもやってられないんでね!」


 各々が戦う理由を述べる。

ついに始まる最終決戦。

俺たちの、人類の未来をかけた戦いの幕が上がる、






「フハハハ! 怖かろう!」


「な、なんて力だ……」


「強化兵士など比ではない。これがZドラッグ改の真の効果よ!」


 いつの間に改になったんだ。


 というツッコミはさておき、ニューサンブレラ四天王をはるかに上回る力を発揮するじっちゃん。

俺たち5人が束になってかかっても攻撃を捌かれてしまう。


「ふん!」


「うがああああ!!!」


「うわあああああ!?」


 一瞬にしてふっ飛ばされていく俺たち。


「クククク素晴らしい。永遠の命にこの体。世界を統べる日も近い……!」


「そのために何人の命が犠牲になったと思ってるんだ!」


「知るか。ワシ以外の生命など家畜にすぎん」


 なんと傲慢なのだろう。

彼は神様にでもなったつもりなのだろうか。


「お前にも家族がいるだろう! 人の命の尊さを知ってるいるはずだ!」


「フン……あれらは一時の気の迷いよ。そんなものは知らぬわ!」


「ぐっ!」


 柔道と空手を組み合わせたようなスタイルから繰り出される猛攻。

柔と剛。

その2つを兼ねそろえた格闘術は俺たちのだれもが敵わない。


「レッ!プゥケン!」


「ヤバい!」


 それに加えて謎の衝撃波を発生させる能力。

四天王と同じように不思議な術を使いこなしていた。


 とっさに飛び込んで回避する。


「カイザーウェイ!」


「何ぃ!?」


 だが、新たに範囲の広い衝撃波を飛ばしてくる。


「ぬうううう!!!」


 なんとかガードするが、触れた部分にすごい痛みがやってきた。


「おっさんを援護するぞ! ぼっくん!」


「分かった!」


 若い衆二人が同時に飛び出した。

暮人くんは刀での一撃を、ぼっくんはアサルトライフルの射撃をぶち込む。


「ハッハァ!」


「な」


「手のひらからバリアだって!?」


 じっちゃんはそれぞれ左右の手からバリアのようなものを展開する。

それによって二人の攻撃は防がれてしまう。


「下がって二人とも!」


 隙が生まれてしまった二人を援護するようにケイさんがグレネードをポイした。

爆発を起こし、黒煙が舞う。


「ふ、これが痛みか」


「そんな……あの爆発でそれだけで済むなんて」


 だが、じっちゃんは何事もなかったかのように立っていた。

怪物……いや、それすらも超越した何かだった。


「どうした……四天王を倒したお前たちの実力はそんなものなのか?」


「ぐっ……つええ……これじゃあアレを撃ちこむ余裕もないぜ」


 ぼっちゃんでさえ表情には余裕が無かった。

もはや打つ手は無いのか……いや。


「アレってもしかして……武器庫で見つけたアレ?」


「ああ。だが弾は一発しかねえ。それに全く隙がないんだ、このままじゃ……」


 ぼっちゃんが持ってきた切り札。

今のままではあっさりと処理されるのがオチだろう。


 だが……諦めるわけにはいかない。


 隊長たちと約束したのだ。

必ずニューサンブレラの野望を打ち砕くと。


「うおおおおお!!!」


 俺は叫んだ。

そして銃を連射しながら突っ込んでいく。


「おっさん! やけになっちゃだめよ!」


 ケイさんの警告も無視して俺は走った。

たった一瞬でいい。

奴の注意をそらすことが出来れば、まだ勝機はある。


「ふん!」


 放った弾丸は瞬時に躱されてしまう。


 そして一瞬で距離を詰めて来た。

そこまでは読めた。


 キィン! とサバイバルナイフの金属音が響いた。

とっさにそれでじっちゃんの攻撃をガードしたのだ。


 ここだーーー!!!


「捕まえ……たぁ!」


「何!」


 俺は繰り出されたじっちゃんの右腕に絡みつくように全身で抱きしめる。


「離せこのハゲ!」


「うるせーハゲ!」


 無理やり引き離そうとしてくる。

罵倒と共にすごい痛みがやってきた。

ミシミシと骨が悲鳴を上げている。


 俺はこの時、この瞬間を待っていたんだー!


「分かってるっておっさん! ぼっくん!」


 ぼっちゃんは背中に背負っていた例のアレをぼっくんへとパスする。


「こ、これは―――」


 ぼっくんに渡ったもの。

それはロケットランチャーだった。


 この場で最も火力をもった最終兵器だ。


「俺ごと行けええええ!」


「……! うおおおおお!!! おっさぁぁぁぁんんんん!!」


 ぼっくんは吠えた。

そしてその持ち前のエイムで発射された弾頭はまっすぐにじっちゃんのところへと飛んでいく。


「くそがああああ!!!」


「何だと!?」


 だが、なんということか。

今にも当たろうとしていた弾頭はじっちゃんの左手が掴み、推進力を抑え込んでいた。


「ぐううううう!!!」


 だが、中々辛そうだ。

ここにすべてをかけるしかない。


 俺はぼっくんに全てを託す。

もはや言葉はいらなかった。


 彼は俺が何をしようとするのか、わかっていたかのようにアサルトライフルに持ち替えていた。


 俺はじっちゃんから離れて思いっきり走り出した。


「ぐっ、小癪な技だったがここま―――」


 じっちゃんが自由になった右腕で弾頭を支えて放り投げようとしたその時。


 一発の弾丸がその弾頭を撃ちぬいた。


「任務……」


「え―――」


「……完了です」


 ぼっくんが放った弾丸は見事弾頭を貫き、起爆させた。


 グレネードの比ではない爆発が起こり、じっちゃんは色々ぶしゃぶしゃ流しながら吹き飛ばされていく。


「ば、ばかな……こんなはずでは……」


「亡霊は暗黒へ帰れ!!!!」


「ぐはぁ!?」


「これで最後よ!!!!!」


「うわあああああ!?」


 瀕死の状態になったじっちゃんにトドメの一撃を放つ。

これでこの世界は平和へ一歩近づいた。


「終わったな……」


「暮人……うん」


 ぼっくんは見事復讐を果たし、すがすがしい顔をしていた。


「さて、帰るか」


「そうだね……後は隊長たちとゾンビの対策をしよう」


「見て! ゾンビワクチンなる物が開発されていたわ!」


「でかした!」


「これでゾンビになった人たちを助けられる!!!!」


「ワッショイ!」


 こうして短いやり取りの中で無事、希望を見つけることができた。

俺たちの戦いはここで終わったのだ。


 さあ! 希望の未来が俺たちを待っている。






 だが―――。




『警告。この基地は間もなく爆破されます。繰り返します……』


「な」


「ん」


「だ」


「っ」


「て」


「l」


「l」


「l」


「!」


「?」


 皆、一字一句同じ反応をしていた。


 聞き慣れたヤベーイ警告音と赤ランプがサイクロンジョーカーしている。


 例によって最後の脱出劇が始まろうとしていた。

俺たちは困惑しながらもそそくさと出口を目指すのであった。


  




「逃げるぞ!」


「走ってみんな!」


 今まで来た道を引き返す俺たち。

RPGならパパッとダンジョンからワープできるのだろうが、生憎これはアドベンチャーのようだ。


「さあ! こっちよ!」


 さっき使った巨大エレベーターに乗り込む。


「上げるぞ!」


 ぼっちゃんが機械を操作し、上昇を始めた。


『あと、9分で爆発します』


 律儀にアナウンスで爆破までの時間を教えてくれる。

ありがたい。


「よかった。この調子なら余裕で間に合いますね」


「ああ……毎度のことだがハラハラもんだなまったく」


「その割には顔が笑ってるじゃないかぼっちゃん」


「そうか?」


「「アッハッハッハ!」」


 皆、慣れすぎていた。

ここまでくれば大体どのくらい大丈夫だとかまで把握できるようになっていた。


 しかし、何か出来過ぎではないだろうか。

妙な胸騒ぎを覚えた。


 俺は不安になってケイさんの顔を探した。


「……」


 するとはしゃぐ3人とは裏腹に、俺と同じように浮かない顔をしていた。


「ケイさん」


「おっさん……あなたも感じたの?」


「ええ。ラスボス戦の後だと余計に」


 彼女もどうやら似たようなことを考えていたらしい。




 その時だった。




 ドン!!!!! と大きな音と共に地鳴りがやってくる。

エレベーターが激しく揺れた。


「な、なんだ!」


 相変わらず引き出しが無かった。

毎度同じ展開にきっとあなたは正気を失ってしまうだろう。


「ニガサンゾ……キサマラアアアア!!!」


「じ、じっちゃん!?」


「生きていたのか!」


 なんと倒したはずのじっちゃんがなんかグロテスクなムキムキぶよぶよになってエレベーターへ飛んできた。


 体中に血管が浮き出たりなんか目がひっついていたりしている。

第二形態とでも言いたいのだろうか。

なんと傲慢なのだろうか。


「シネエエエエエ!!!」


「うわー」


「うわー」


 じっちゃんは自分の腕を伸縮させて遠距離からの攻撃も可能になっていた。

その強靭な腕から繰り出される攻撃に俺たちは翻弄されていく。


 QTEも見えない。

もうだめだ……。


 体力はすでにレッドゾーン。

どうしようもなくやばいって、体中が悲鳴を上げている。


「くっ、死人はさっさと墓に入りなさい!」


 ケイさんがグレネードを投げまくっている。

ボンボン爆発が起こるが、じっちゃんの体はダメージを受けたところから再生していく。


「コシャクナァ!」


「きゃ」


「ケイさん!」


 じっちゃんがケイさんを掴みあげる。

今にも握りつぶそうな勢いだ。


「ぐ……」


 このままじゃケイさんがやばい。


 俺は無意識に駆けだしていた。


「おっさん! これを使え!」


 もうボロボロで動けない暮人くんが己の武器を投げてきた。


 俺はすかさずジャンプしてキャッチする。


「サンキュー!」


「フッ」


 暮人くんは親指を立て、そして崩れ落ちていった。


 俺はそのまま抜刀してじっちゃんの腕を一閃する。


「グッ……!」


 俺の一撃でちぎれ落ちていく腕。

ケイさんも脱出できたようだ。


「ニンゲンイカノヒキコモリニートノブンザイデエエエエ!!!」


「違うッ! ニートは力なんだ! この異世界を支えている力なんだッ!」


「????」


「????」


「????」


「????」


「????」


 じっちゃんは困惑していた。

みんなも困惑していた。


「隙ありいいいいいいいーーー!!!」


「ウギャアアアア!!?」


 だが俺はその一瞬の隙を見逃さなかった。

天高く飛翔し、じっちゃんの脳天に刀を突きさした。


「フフ……風が……吹いておる」


 無風です。


 じっちゃんはそれだけ言い残し、なぜか石となってしまった。

死ぬ間際の彼の表情は、どこか穏やかでとても世界をわが物としようとした悪者とは思えなかった。


 きっと彼には彼なりの正義と信念があったのだろう。

だが、それを認めてしまえば世界は悪い方向へと行ってしまう。


 これでよかったのだ。


「終わったわね」


「ケイさん」


「さあ、帰りましょう」


「はい」


 こうして俺たちは無事基地を脱出した。


 基地の爆発を俺たちは外で見届ける。

ようやく夜明けが来たのだ。


 



 その後、しかるべき場所でワクチンを解析し、それを量産した。

隊長たちと俺たちはそれを世界中に散布する作業に追われた。


 ゾンビになった者たちは何とか一命をとりとめ、元の健康な姿に戻ることができた。


 だが、失われた命はあまりにも多い。

これから世界が復興していくにはかなりの時間を要するだろう。


 一緒に戦った仲間たちはそれぞれ自分の道へと進んでいった。


 ぼっちゃんはイセカイシティの復興を手伝っている。


 暮人くんはぼっくんを誘ってハイスクールに戻った。

ぼっくんも慣れない学生生活に戸惑っていたが、今では楽しくやっていると電話で話していた。


 ケイさんはその後も警察官として騒ぎの収拾に努めている。


 そして俺は……。



「ちょっと、おっさん。書類溜まっているわよ」


「急いでやってるよ!」


「この後パトロールだから、早くね」


「へ、へい」


 俺は何故か事態解決の立役者として、何故か警察の特殊部隊のメンバーに抜擢された。


 ケイさんがいつの間にか推薦していたらしい。


 未だ混乱が続くイセカイシティ。

ゾンビ化は治ったが、怪物は今も人々の暮らしを脅かしている。


 俺とケイさんはそんな怪物退治の専門部隊として日夜戦いに明け暮れている。


 これじゃああの時と変わらないっていうか、むしろ忙しくなったっていうか。


 とほほと、乾いたため息が漏れる。


 と、そんな時おオフィスに電話の着信音が鳴り響く。


「はい、こちら特殊一課……え? 山間部に怪物が現れた?」


 隊員のその声に俺とケイさんは目を合わせる。


「おっさん」


「ケイさん」


 俺たちは急いで準備をする。

これが今の俺の日常だ。


「やれやれ、働くのは苦手なんだけどな……」


「フフッ。頼りにしてるわよ、おっさん」


 こうして、俺たちの物語は続いていく。

ケイさんとは相棒のような関係がしばらく続いていくだろう。


 その後、関係に進展があったかは神のみぞ知ると言ったところか。


 この世界に平和が訪れるその日まで、俺たちは戦い続ける。


 その願いだけはきっと、夢で終わらせない。



 

 ハザード・オブザ・デッド 完




 夢で終わらせなくてよかったです。

あと私は何を書いているのでしょうか?


次回、新章です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ