その15
そして場面は戻り―――。
謎の自爆警報が鳴り響いてから数分。
俺とケイさんは三人を探すために下の階へと急いでいた。
「おっさん急いで!」
「ま、待ってよ。ぜえぜえ」
「声が出せるならもっと早く走りなさい!」
鬼かコイツ。
40代のボロボロの体は丁重に扱え。
そしてエレベーターに乗り込もうとした時だった。
「あ」
「おっさん!」
ぼっちゃんたちが下からエレベーターでやってきた。
「この警報は? 一体何があったの?」
「それがですね……」
ぼっくん達からこれまでのあらましを聞いた。
「それは大変だったね」
「ああ、正直間一髪ってところだ」
タバコを吹かしながらも、ひたいからは汗が流れ落ちている。
よほどの戦いだったのだろう。
「じゃあ早いとこ脱出しましょう」
全員が頷き、俺たちはエレベーターで一階を目指すことにした。
「アアア……」
「ウウウウ……」
「ちっ、わんさかいるじゃねえか!」
一階に降りた俺たちだったが、玄関にはゾンビがギュウギュウに詰まっていた。
正直、通り抜けられそうにない。
「この数は流石に相手にしきれないぞ!」
暮人くんからも悲鳴があがる。
だが、他の脱出手段などあるのだろうか。
「ロボットを連れてこれないのか?」
「だめだ。あれは重さがハンパないから普通のエレベータには乗せれられねえ」
暮人くんの疑問にぼっちゃんが首を横に振って答えた。
もはや打つ手はないのか―――。
「あ、見てくださいアレ!」
そんな時、ぼっくんが何かを見つけたのか、指をさしていたのでそっちを見る。
そこには、展示用のトラックとバイクがあった。
「なんでこんなところに?」
「社長の趣味かしら?」
「だが、あんなのただの置物だろ。年代物みたいだし燃料もない。動くわけ……」
「これエンジンかかったよ!」
「でかした!」
試しに中に入って刺さっていたキーを回す。
するとブルオオオオとエンジンが起動した。
「こっちも動くぞ」
暮人くんはバイクがいいのか、すでにそれに乗っていた。
ぼっちゃんとケイさんは中の席へ、ぼっくんと俺は荷台に乗り込む。
『あと1分で自爆します』
もはや一刻の猶予もない。
どこか別の出口を探す俺たち。
「玄関は無理だ。横のガラスを割って道路に出るぞ!」
「OK!」
ぼっちゃんのやけくそな提案に俺たちは乗るしかなかった。
銃を何発か打ち込み、ガラスを脆くさせる。
そして俺たちはガラスの壁を突き破り、道路へと躍り出た。
「行きましょう、決戦の地、北のクレーターに!」
「応ッ!」
『自爆します』
遠ざかるビル。
そこでは大規模な爆発が起こっていた。
間一髪、俺たちは助かったのだ。
そして俺たちは気持ちを引き締め、最後の戦いへと挑むのであった。
ゾンビを避けながら、俺たちは北のクレーターへと向かう。
だが、道中にはゾンビと化した動物たちが出没していた。
「もうめちゃくちゃだな!」
暮人くんが大声で叫ぶ。
ゾンビ犬、ゾンビライオン、ゾンビ虎など、怪物へと変貌したスピードに長けた動物たちが追ってきている。
「おっさん、狙撃しましょう」
「ああ!」
俺たちはハンドガンで敵を狙い撃つ。
足に当たれば動きを止められるのだが、中々うまくはいかない。
何体かは落とせたが、このままではすぐに弾薬が尽きてしまうだろう。
「やれやれ。見てられないな!」
俺たちの様子をちらっと見た暮人くんがなんか言い出した。
すると、いつから持っていたのか、刀を手にしていた。
「ハア!」
「ギャン!?」
そして、バイクで走りながら刀を振るい、ゾンビ動物たちを蹴散らしていく。
でたらめなその行為に俺たちは唖然とする。
あいつあんなにできるやつだったか?
「暮人も成長したんですよ、この地獄を生き抜いて」
ぼっくんには何か感じられたのか、ぽつりとそう言った。
これが若さか……。
俺たちは道路を爆走しながら必死に戦うのであった。
そして幾たびの戦闘を経て、北のクレーターへとやってきた。
地面に空いた大きなくぼみしか見えないが、ここのどこかに基地への入り口があるはずだ。
「どの辺かな?」
「手分けして探しましょう」
そしてしばらく入口を探す俺たち。
だが、何もない荒野が広がるだけで、他には工事用の重機が置かれているぐらいだ。
「フハハハ……そんなところいくら探しても無駄だぜ!」
そんな時、男の高笑いが聞こえた。
「誰だ!」
「俺様は四天王の一人、火のカだ!」
なんと四天王が現れた。
ぼっくんたちの話しではやべー強さだという。
「どうした! おっさん!」
そんな俺の状況に気付いたのか、みんなが駆けつけてくる。
「全員まとめてぶちのめしてやるぜ!」
「うわー!」
「うえあー!」
圧倒的なまでの火のカの身体能力になす術もなく吹き飛ばされていく俺たち。
バカな……強すぎる……。
「炎のエンがやられたっていうから期待してきたが……こんな雑魚だったとはな」
「ぐっ」
あの時はぼっちゃんが機転を利かせてロボットを使うということができたらしいが、ここにはそんなものはない。
まさに崖っぷちだった。
「死ね!」
そして俺の心臓を狙い、火のカの手刀が俺をつらぬく―――。
「みんな! 目と耳を塞いで!」
「!」
なんかいきなりケイさんが俺の目の前に筒状の何かを投げてきた。
その後、眩しい閃光と爆音が鳴り響いた。
「ぎゃああああ!!」
「ぎゃああああ!!」
俺は目と耳を守れず、もろに効果を受けてしまう。
やばいって。
だが、火のカも効果を受けている。
ちょっと周りの様子がわからないが。
と思ったら誰かが俺を引っ張ってどこかへ連れていかれる。
すまない。
そしてようやく目と耳が戻ってきた。
「よおおっさん大丈夫か?」
「……ぼっちゃんか」
あれからどうなったのか。
「ああ、安心しろ。火のカならほら……」
ぼっちゃんが顔をくいってやって示したのは、倒れ伏す火のカとそれを囲む三人だった。
倒したのか……スタングレネードつおいなぁ。
「さあ! 言いなさい! 基地の入り口を! どうなの!」
「は、言うかよ……」
「どうなの!」
「だからいわな……」
「どうなの!?」
「ちょ」
「どうなの!!???」
「え」
「どうなの!!!!!?????」
ケイさんによる激しい尋問の嵐によって見事基地の居場所を突き止めた。
流石イセカイ警察だ、やり口が汚い。
そして俺たちは最終決戦の地へと足を踏み入れるのであった。
「ここがニューサンブレラの基地か……」
謎のステルス迷彩によって隠されていた基地。
火のカをなんとか倒し、侵入することができた。
ここから先は敵に本拠地、どんな罠が待ち受けているか分からない。
慎重に行動しなくては……。
「みんな、気を引き締め……」
「みんな! とりあえず突っ込むのよ!」
「応ッ!」
「ちょ」
俺が注意しようとした瞬間、ケイさんの号令により全員が走り出した。
ふざけんな脳筋どもが。
「ちょっとみんな!」
「どうせ俺たちが来たことなんてお見通しだろうぜ」
「だな、後はダンジョンを駆け抜けるのみ」
「おっさんも急いでください」
そうかもしれないが……。
「今までもノリでなんとかしてきたでしょう? 大丈夫よ、きっと」
ケイさんはもっと合理的な人だと思っていたが、変な方向に変わったのかもしれない。
ま、それもいいか。
「やれやれ……目立つのは大好きなんだけどな!」
俺もみんなに追いつくために走り出す。
あたり一面、鋼鉄の通路を疾走する俺たち。
「ウウウウウ……」
「アアアアア……」
そんな中、大量のゾンビが現れた。
だが、今の俺たちにはそんなものは脅威にはならない。
「無双アタック!」
「ギャアア!!!」
「ギャアアア!!!」
暮人くんが刀を使い、無双ゲーを始めていた。
まるで一騎当千と言ったところか。
「あいつもやるな!」
ぼっちゃんも負けじとゾンビの足を狙い撃ち、動きを止めてから格闘戦で追撃をかける。
まるでチンピラのような戦いだ。
「グレネード!」
「アアアア!!」
ケイさんはぽいぽい爆弾を投げていた。
これがボンバーガールってやつか。
「三つ、四つ、六つ、九つ!」
ぼっくんは淡々とヘッショを決めていく。
強い。
俺がやることがないくらい、ゾンビがあっという間に殲滅されていく。
そして快進撃を続ていると、開けた空間に出た。
周りには水槽のようなものがたくさん置かれていた。
その中には人ではない何かがぷかぷかと浮かんでいた。
「こいつは……コードネームZとかいうやつか」
「じゃあヤバいやつじゃん」
「ああ、それにこの数……本気で世界を征服するつもりか……!」
もはや一刻の猶予もなかった。
世界がニューサンブレラに支配されてしまう……そんなことは許しては置けない。
そしてついでに両親の仇を取る。
銃を握る拳にいっそう力が入る。
「行こう」
「ああ」
俺たちはさらに奥へと進んでいく。
どんなに悲劇が待っていようと、俺たちは止まるわけにはいかなかった。




