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おっさんが異世界でチートする話だったのに  作者: 陰キャきっず
新世界2 サガ・フロム・アビス
64/122

その17

「どうしてマホツさんがここに……」


 突然現れた来訪者に俺は驚愕する。

何故、どうして……。


「決まっているでしょう?10階に用があるからです」


「え?」


「あなた方は深淵とは何か、考えたことはありますか?」


 深淵。

様々な魔物、オーパーツが存在する謎の領域。


 冒険者はその謎を解明するため、またはオーパーツの技術の研究のために冒険者というものが誕生した。


 しかし、未だその謎を明かされていない。


「この第二のゲート、その先に答えがありました」


「なん……だって?」


 ゲートを見上げながら不敵に笑みを浮かべるマホツさん。

そしてその言葉が本当なら彼女はこの先へと進んでいたということだ。


「魔界。我々人間たちが住む世界とは異なる魔神たちが住む世界です」


「魔界……だって?」


 彼女の口から語られた真実は想像を絶するものだった。


「このゲートは繋がってしまった魔界を閉じるための鍵なんですよ」


「深淵は恐らく旧人類がこのゲートに人を近づけないように作られたんでしょう。ボスや魔物はそれを守護する者たち」


「私はそこで世界の真理を見ました。私が使う魔法など赤子のようなものだったのです」


 マホツさんは恍惚とした表情で自分語りを始めた。


「限界だと思っていた私の力も、その世界ではまだまだ先が存在して……私はその全てをこの手に掴みたかった」


 ぎゅっと拳を握る彼女。


「マホツさん……!!」


「マホツ・カイですか……偽りの名のはずだったのに、どうしてですかね。あなたに呼ばれるとその名に意味があるような気がするのは」


 彼女はどこか悲しそうな表情を浮かべているように見えた。


「私の本当の名は、びっちゃん」


「……まさか!?」


「クレトくん知っているのか!?」


「ああ……伝説の冒険者として名を知らしめたぼっちゃんのかつての仲間だ!」


 彼女の真実の名を知り、俺は驚く。

そして、彼女はぼっちゃんのかつての仲間だというではないか。


「そうか……第二のゲートへ消えた人っていうのは……!」


「そうよ!そのまさかよ!」


 彼女の正体を知り、戦慄する。

そしてマホツさん、否、びっちゃんは存在を知らしめるかのように大きく両手を広げた。


「私はゲートの先であらゆる魔法を得た。その中には魔物を操る術も存在しました」


「じゃあ、ヤベヒーモスも、ドラゴンたちも全部あなたの仕業だったっていうのか」


「そうです。魔物球は数に限りがあるのが問題ですが……私が個人でここまで往復する戦力としてだいぶ役立ちました」


 魔物球。それが魔物を操るための道具か何かだろう。


「このゲートへ近づかせないためにも使ったのですが……おっさんたちのせいでそれも叶わないようで」


「……あなたの目的はなんだ!」


「この世界を……潰す!」


「何!?」


「私は嫌いなんですよ。私以外の人間すべてが」


 まるで憎しみの権化のような顔をするびっちゃん。

彼女の過去にいったい何があったのだろう。


「そのためには多くの魔物を地上へと解き放ち、やがて魔神共もゲートを通じてこの世界に連れてきて暴れさせてやろうと思いましてね」


「ここの存在がバレたら私の計画に邪魔が入る。けれどあなたは来てしまった」


「びっちゃん……どんな理由があろうとも、今を頑張って生きている人たちの平和を乱すことは許されない!」


「そんな綺麗ごとはどうでもいいんです。私は私の憎しみを解き放つだけです」


 もはや語ることなどないと言うように、そう吐き捨てる。


「決着をつけましょう、おっさん」


 魔法具を構えるびっちゃん。

一人で戦おうというのか。


「あなた方が私に勝てるとでも?とんだ思い上がりですね」


「ッ!、ウォォォォォ!」


 俺はとりあえず突っ込む。


「燃えよ爆炎!グレネードランチャー!」


 魔法具から炎の弾丸が撃ちだされる。

その弾丸は地面に着弾すると大きな爆発を起こした。


「ガァッァァ!?」


 回避するも、衝撃波で吹き飛ばされてしまう。


「敵よ吹き飛べ!エネミーランチャー!」


 さらに大きな筒状の弾頭がみんなのところへ次々と放たれる。


「うわぁぁぁぁぁ!?」


「ぎゃぁぁぁぁ!」


 圧倒的な火力の前に俺たちはなす術もなかった。


 これが、伝説の魔法使いの本当の実力……!。


「どうしました?その程度なんですかあなたたちの力は!」


 これまでの戦闘で疲弊した俺たちは十全に力を発揮できない。

なんとか残っている力で戦うしかなかった。


「くっ、マホツさん……!」


「私はびっちゃん、それ以上でもそれ以下でもない!」


「マホツさんですよ!あなたは!」


「黙れ!」


「少なくとも、俺の中では命を救ってくれた恩人なんです!だから!」


「黙れと言っている!」


 思いのたけをぶつける。

だが、彼女の魔法が次々と俺を狙って撃ちだされる。


「がはッ……!」


 もはや躱すことも叶わず俺は爆炎に飲まれていく。


 だが、痛みはやってこなかった。


「ハァハァ……おっさん!」


 どうやらキツカちゃんが能力でバリアを張ってくれたようだ。


「マホツ……あなたは他人が嫌いだという。ならなぜ私の世話を焼いてくれたの?」


「それは、将来駒として使えるかもしれなかったからです」


「嘘、だってあなたは私をおっさんに託した。あなたにとりついた闇が心のすべてを覆い尽くす前に」


「……!?」


「レベルが上がった今なら見える。あなたの中に住む闇の姿が」


「キツカちゃん、どういうこと?」


「マホツはきっと闇に囚われている」


「ぐっ、何を、言って……!ああ!?」


 突然、頭を押さえ、取り乱し始めたびっちゃん。


「きっと誰かに止めて欲しかったんだと思う。だから何度も私たちを助けてくれた」


 サイキックのきつかちゃんだから分かったことだった。

マホツさんはその闇とやらにそそのかされ、力を手に入れ他者への憎しみを増大させていった。


 そうだ……彼女は強くて気高くて美しい。

そんな彼女が心の底から誰かを傷つけたいだなんて思うはずがない。


「今もきっと戦ってる、それを助けてあげられるのはきっと……あなただけ、おっさん」


 キツカちゃんが真剣な眼差しで俺を見上げた。


「わかった……俺は彼女を殺さない。その中に潜む執念を殺す!」


 俺は決意した。

絶対に彼女を助ける。

心の闇を消し去って見せる。


 それが俺にできる、彼女への最大の恩返しだ。


 俺は力を振り絞り、剣を握る。

そして再び彼女へと突撃する。


「くっ、消えろ!あなたを見ていると私はぁ――――!!!!」


 再度魔法での攻撃をしようとするびっちゃん。

だが―――。


 一発のビームが彼女の持っていた魔法具を弾き飛ばした。


「ぐっ、魔法具が!」 


「おっさん……俺にできるのはこれくらいです、後は……」


「ナイスアシストだ!ザマァくん!」


 ザマァくんからの援護により、彼女に隙が生まれた。


 その隙をねらって俺は一撃を入れる。


「がぁぁぁあぁぁ!!!」


 そして吹き飛んでいくびっちゃん。

いくら攻撃が強くても、体は生身の人間だ。


「もう目を覚ますんだ!マホツさん!」


 お互いボロボロの状態だった。


「ククク……私は正常ですよ」


「なっ」


 むくりと立ち上がった彼女からは、どす黒い闇のオーラが湧き上がってきた。

あれが、彼女の心の闇……。


「これを使うとこになるなんて……おっさん、やっぱりあなたは最高です」


 何をする気だ―――。

そう思った時だった。


 地面を突き破り、何かが飛び出してきた。


「さぁ、目覚めなさい、《エターナル》よ!!!」


 それは、漆黒に染まった巨人だった。

その姿はまるでオーパーツのような材質で構成されている。


 その巨人と融合していくびっちゃん。


「そうか……そうだったのか!」


 ザマァくんが何かに気付いたのか声を荒げる。


「思い出しました……俺はアレに乗ってやってきた。しかし、魔神との戦いで傷ついた俺は深淵へと逃げ延び、そこで倒れた」


「何だって!?それは本当かい?」


「はい、そしておっさんたちに助けられたんです」


 急に明かされるザマァくんの記憶。

彼は何者なのかはまだわからないが今はそれどころではなかった。


「あれは一体?」


「《エターナル》は人の思念を力に変えるマシンなんです。本来、限られた人間にしか動かせないそれを彼女は憎しみだけで動かしている」


 人の思念で動かす機械とか、前代未聞の産物だった。


「どうすれば彼女を救えるの?」


「闇が《エターナル》を通じて具現化しています。今ならダメージを与えることでそれを打ち消せるはず」


 漆黒の機体から闇のオーラがあふれ出る。

禍々しいプレッシャーを放っていた。


「そして伝えるんです。《エターナル》に乗っている状態の彼女になら思念が、心の奥にまでおっさんの思いが届くはず」


 彼女を助ける方法をザマァくんが提示してくれた。

だが……。


「勝てるのか…俺は」


 だが、自信が無かった。

どす黒い感情ごと、彼女を受け止められるだろうか。


「勝たなきゃどうするんです?男でしょうあなたは」


「簡単に言う……!」


「言いますよ、あなたになら」


「ザマァくん……」


 期待と信頼を込めた眼差しでそう言ってきた。

信じよう、彼の、仲間の言葉を。


「これを……」


 そして、彼は自らの武器である光の剣を渡してきた。

あんな硬そうな装甲は俺の剣じゃ切れなさそうだから助かる。


「ありがとう」


 グッと気合を入れる。


「おっさん!」


 ぼっくんが俺を呼んでいた。

彼がいる方を見るとみんなが態勢を整えていた。


「僕たちが隙を作ります。その間に……!」


 みんなが俺を手伝ってくれようとしている。


「みんな……びっちゃん!いや、マホツさん!」


「そのうるさい声をやめろぉぉぉぉーーー!!!」


 マホツさんの乗る《エターナル》が俺を押しつぶさんとその巨大な腕を振り下ろす。


「させるか!」


「てやぁ!」


 しかし、その攻撃は横からぼっくんとクレトくんによって軌道がずらされた。


「ちょこまかとぉ!」


 作戦通り、注意は仲間の方へ向かったようだ。


 俺も、漆黒の機体へと走り出した。


 すまないみんな……そしてありがとう。


 仲間の思いを背負い、俺は剣を構える。


「足の後ろの関節部分を狙ってください!」


 ザマァくんの言う通り、俺は背後を取り、一撃を叩き込む。


 光の剣が硬い関節を溶かして切り裂く。


「なぁっ!?」


 そして片方の足がぐらつき、バランスを崩した《エターナル》。

片膝をつき、動きが制限されたようだ。


「この程度で!」


「ワー!」


「ギャー!」


 だが、腕で薙ぎ払う攻撃をしてきて仲間たちが吹き飛ばされていく。


「ぐ、すまないみんな」


 俺はぐっと思いを抑えて

自分の成すべきことに集中する。


 そして大きく力を込めて機体めがけて跳んだ。

闇のオーラを光の剣で切り裂く。


 だが、思った以上に壁は厚かった。


「ぐ、うぉぉぉぉぉーーー!!!」


 雄たけびを上げながら俺は限界を超えた力を引き出す。

激しい痛みが襲うが、我慢だ。


「私の中に入ってくるな!」


 両腕で俺を吹き飛ばそうと迫りくる。


 だが―――。


「サイキックパワー!」


「イケメンアロー!」


「無双アタック!」


「使い方次第でチートアタック!」


「オーラソード!」


 仲間たちがそれぞれ両腕を必殺技で受け止めてくれた。


 まったく……最高だぜお前ら。


「今だおっさん!いっけぇぇぇぇぇーーー!」


 みんなの声援が聞こえてくる。

不思議とパワーが湧き出す。


「俺自身が光の剣の矢となってぇぇぇぇーーー!!!」


 俺は謎パワーにより飛翔する。

そして空中で加速しスピードをつけた俺は光の剣を突き出し突撃する。

すると俺の姿は光を纏い、一発の矢になった。


「なん……だと……?」


 その攻撃は闇のオーラを突き抜けて《エターナル》ごとぶち抜いた。


 倒れ行く《エターナル》を振り返りながら見つめる。


 大丈夫だ、急所は外した。


 俺の思いと、仲間たちの力が起こした究極の奇跡だった。


 すると、《エターナル》の機体の色が白へと変化し、禍々しい闇のオーラも消えていった。

そして、融合が解け、マホツさんが空中に現れた。


 俺はそれをさっとキャッチする。


「マホツさん!目を開けて!」


 だが、彼女はぴくりともしない。

死んでしまったのか……?。


 そんな焦燥感にかられてしまう。


「……おっ、っさん」


「!マホツさん……!」


 しかし、彼女はゆっくりと目開けて、俺の名を呼んだ。


「聞こえたよ……あなたの声、私の心に」


「よかった……よかった……」


 俺は感極まってぽろぽろと涙を流す。

いい年下おっさんが情けなかろう。

だが、どうしても抑えられなかった。


「泣かないで……」


 そんな俺に、彼女はそっと、自分の指で涙をぬぐってくれた。


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