その16
「くっ、強い!」
「クレトくんはぼっくんのカバーを!」
「了解」
「ザマァくんはキツカちゃんの護衛を!ぱっくん突撃するから援護よろしく!」
「わかりました!」
「おっけー」
9階を進軍中の俺たち。
かつてないほどの敵の強さに俺たちは苦しめられていた。
だが、これまで得た経験と実力はそれに負けないものでもある。
魔物が入り乱れる通路で連携して敵を倒していった。
「これでラスト!」
「ギャァッァァ!」
戦闘が続いたが、ようやく最後の一体を撃破する。
ボスでもない魔物ではあるがかなりの時間がかかってしまった。
「これが9階の魔物……、まるで一体一体がボスみたいだ」
俺たちは想像を絶する戦いに疲弊していった。
一戦一戦が気を抜けないものになるからだ。
「なんだおっさん、もうへばったのか?」
「おっさんももう年だからね」
「殺すぞ」
けれど若い面々はまだまだやれると言わんばかりに減らず口をたたいている。
ふ、負けてられないな。
「見て、あれ……」
キツカちゃんが何かを見つけたのか、通路の先の部屋を指さす。
「あれは!?」
それは絶望的な光景だった。
「あ、あれは……」
9階のボス部屋に待ち構えていたのは、竜の頭、獅子の体、コウモリの翼、そしてサソリの尻尾を持った魔物だった。
「キメラってやつか……」
「そんなのが本当に存在するなんて……」
クレトくんとぼっくんと同様な感想を俺たちは抱いている。
「グルルルッル……」
キメラからは今までの魔物とはまるで違うプレッシャーを感じた。
あのドラゴンたちを相手にするよりもはるかに戦慄している。
「倒し甲斐があってよさそうじゃないか」
俺は自分を奮起させるようにつぶやく。
みんなが俺の顔を見た。
虚勢だったが、俺はリーダーなんだ。
だから強がってでもみんなを引っ張っていかなきゃならないんだ。
「ふっ、良いですね。そういうの嫌いじゃないですよ」
まるで俺のビビり具合など承知と言わんばかりにぼっくんがそう口に出す。
そして剣と盾を構え始めた。
「時間外労働手当は頼みますよ」
それに続き、ザマァくんがさりげに給与に言及するというジョークをかます。
肩をぐるっと回し、光の剣を構えた。
「そう、どんなときもあなたはひとりじゃない」
さらに続き、キツカちゃんも戦闘態勢を作り上げる。
「こんな中年のハゲに付き合って上げるなんて僕ってやっさしいねぇ」
さりげにディスリながら弓を構えるぱっくん。あとハゲじゃねぇし。
「せいぜい足を引っ張ることだけはするなよ?」
そして最後にクレトくんがいつものようにイキリ出した。
「やっぱり最高の仲間たちだよ……」
俺は半分泣き顔になりながら決心する。
そして、俺も剣を抜き、それを天に掲げる。
「みんな!これですべてが終わる!」
高らかに俺は宣言する。
「突撃ィ――――!!!!」
そして、最後の戦いへの合図を送った。
「うぉぉぉぉぉーーー!!!」
キメラへと突撃する俺たちであった。
そして激闘が繰り広げられた。
一撃が致命傷になる戦闘で俺たちの精神はギリギリまで研ぎ澄まされていったのだ。
「クレト!」
「ああ!」
「「武神最強波ァーーー!!!」」
「グォォォォ!?」
そして土壇場で成功するクレトくんとぼっくんの協力必殺技がさく裂する。
恐ろしいほどに名前の引き出しが無かった。
「引っ張りモンスターハンティング!」
「友情フルコンボ!」
さらにぱっくんの放つ矢を能力で強化するきつかちゃん、二人の協力技が追い打ちをかける。
「ギャァァァァァ!」
そのどちらもキメラへの大ダメージとなった。
俺たちが積み上げてきたものは決して無駄じゃなかった。
「ザマァくん、俺たちも!」
「はい!」
「「コンビネーションアサルト!」」
原作になさそうな技で俺たちは持てる限りの武装を使い攻撃する。
完璧なコンビネーションによる攻撃で反撃の隙も与えない。
「グルルルルァァァァ!!!」
だが、相手も雑魚じゃない。
無理やり俺たちを吹き飛ばし、空高く舞い上がっていった。
「ぐ、空にいたんじゃどうしようもない!」
「私に任せて!」
「俺も!」
空中へと避難したキメラをザマァくんとキツカちゃんが追撃する。
「ガゥ!?」
そしてダメージに耐え切れなかったのか地上へ戻ってきた。
「おっさん!」
「おっさん!」
「クレトくん、ぼっくん!」
そして、そのわずかに出来た隙を狙って俺たち三人が突撃する。
「オオオオオ!!!」
俺たち三人は限界を超えて光の速度になり、一本の矢となってキメラへと向かう。
「いっ」
「け」
「えぇぇーーーーー!!!」
「ォォォォォ――――!!!!」
「ガゥア!?」
そしてキメラの腹を貫通した。
ズザァ、と土煙を上げながら停止する俺たち。
振り返るまでもなく、俺は勝利を悟った。
俺たちは深淵を制覇したのだ。
「勝ちましたね」
「ああ」
「行きましょう」
キメラを倒した俺たちははしゃぐわけでもなく、静かに10階を目指した。
精魂疲れ果ててしまい、勝利の余韻を味わう暇もなかったからだ。
さらに下への階段を下りる。
その先は今までのような迷路と違い、先が無い大広間だった。
そして、中央にそびえ立つ巨大な建造物、あれが第二のゲートだろう。
「これが例の……」
「でかいですね」
その大きさに俺たちは圧倒された。
「この先に俺の過去が……」
ザマァくんが静かにそのゲートを見つめる。
深淵の謎と彼の記憶がこの先にあるんだ。
俺たちがゲートを調べようとしたその時だった。
「やれやれ、まさか本当に10階までたどり着くなんて……」
コツ、コツと足音がなった。
誰もいないはずのフロアから声がする。
そして、薄暗い部屋の奥からその姿を現す。
「本当に、計算外ですよ……」
その姿には見覚えがあった。
鮮烈に焼き付いて記憶から離れない、その美しさと気高さを、俺が忘れるはずないからだ。
「ねぇ……おっさん」
「マホツ、さん?」
深淵の最下層にて、この世界の運命を決める決戦が今、始まろうとしていた。




