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おっさんが異世界でチートする話だったのに  作者: 陰キャきっず
新世界2 サガ・フロム・アビス
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その15


 7階での激闘を終えた俺たちは命からがら地上へと帰ってきた。

正直生きているのが不思議なくらいだ。


 そして、俺とザマァくんは二人で話し合いをしていた。

 

「ザマァくん、あんな真似は二度としないでくれよ」


「おっさん……すいませんでした」


 彼は自分を犠牲に俺たちを救おうとした。

だがそんなことをされて喜ぶ者はこのパーティーにはいないはずだ。


「誰かを犠牲にした勝利なんて意味はないんだ」


「……そうですね」


 ザマァくんは深く反省しているようだった。


「分かってくれたならいいんだ。さぁ今日はもう休もう」


「はい」


 そして今日は解散となった。

戦いの激しさは今後増していくだろう。


 十分な休息が俺たちには必要だ。


 俺も帰ろう。


 宿への帰路につく。


「あら?おっさんじゃないですか」


「マホツさん?」


 すると、途中でマホツさんに会った。

こうも偶然に出くわすことが多いと運命を感じる。


「探索の帰りですか?」


「ええ、7階を制覇したんですが大変でしたよ」


「まあ、それはすごい」


 その報告にマホツさんは本当に感心しているように見えた。

これで一歩また彼女に近づけたのだろうか。


「ドラゴン達は大変でしたでしょう?」


「ハハハ……流石に死ぬかと思いましたよ」


 少し前の激闘を思い出し、乾いた笑いが出る。


「強いんですね、おっさんって」


「違いますよ、仲間に恵まれただけです」


 彼女が俺を褒めるが謙遜しておく。


「ふふふ、本当に成長しましたね。最初に出会ったころとは大違い……」


「その節はお世話になりました。これからは頼ってくれてもいいんですよ」


「まぁ、言いますね」


 懐かしい。

彼女と出会った時は無力な中年だったのに、今ではもう少しで肩を並べられそうなほど強くなった。


 何かを始めるのに遅いことはないんだな。


 しみじみとそう思った。


「何でしょうか……こんな風に男性とお喋りするのが楽しいと思うのは初めてです」


「え?」


 何だろうか。

聞こえようによっては口説かれてると思われるようなことを言われた。


「もしかしたら私、あなたのことが……」


 うるんだ瞳で見つめてくるマホツさん。

なんだこの空気は……。


 何故か心臓が高鳴る。


 マホツさんの手が伸び、俺の頬をに触れる。

何やらただならぬ雰囲気になる俺たち。


 そしてお互いの唇同士が触れ―――。


「おーいおっさん」


 その呼び声にハッとなる。

お互いバッと離れて何でもないかのように振る舞う。


「なんだ捻くれ太郎か」


 何だクレトくんか。


「殺すぞ」


 しまったつい本音を……。


「フッ……それではおっさん。また……」


「あ、マホツさ―――」


 さっきまでの雰囲気は何だったのか、彼女はさっさとどこかへ行ってしまった。


 クレトくんが邪魔しなければどうなっていたんだろう。


 俺は、どこかもやっとした気分で宿へと帰るのだった。





 


 そして一週間後。

完全回復した俺たちは再び深淵へやってきた。


 8階は恐ろしいほどのモンスター達が……と思っていたのだが、ドラゴン3体との戦闘でかなり俺たちのレベルが上がったらしく、サクサクと探索は進んでいった。


 出てくるモンスターをばっさばっさと切り倒すクレトくん。


 敵を翻弄して華麗に敵を倒すザマァくん。


 大ダメージを与えるキツカちゃん。


 ミリほど体力が残った敵に止めを刺すぱっくん。


 真っ先に敵の前に立つぼっくん。


 俺は臨機応変に役割を変えていく。


 俺たちの動きは最早完成されていた。

信頼関係が完璧に出来上がっているからな。


 そして進撃していく俺たち。


 8階のボスなど敵ではなかった。






「ギャアアアアア!」


「ボスを倒したぞ!」


「やった!」


 8階のボスを倒した俺たち。

7階での死闘を思えば楽に感じるのは、少し感覚がマヒしているんだろう。


「なんだか拍子抜けだな」


「もはや敵なし」


 クレトくんも同じ感想をもったようで、キツカちゃんさえも余裕があるようだ。


「残すは9階……その先には」


「10階……第二のゲートですね」


 ぱっくんのつぶやきにザマァくんが答える。

自分の過去がそこにあるかもしれないのだ。ザマァくんの気持ちは高まっていることだろう。


「みんな、今日はちょっと余裕があるし9階の様子を見ていかない?」


 俺は少しでも次の探索が楽になるようみんなに提案する。


「いいんじゃないでしょうか?僕もここからは本当に未知の世界ですし」


 ぼっくんが賛成してくれる。


「そうだな、ま、危なくなったら逃げればいいだろ」


「うん」


 みんな賛成してくれたようだ。


「よし、気を付けて進もう!」


 俺たちは9階へプチ探索しに行くのであった。






 9階へと降りてきた俺たち。

何かまた一段と温度が下がった気がする。


 言いようのないプレッシャーがひしひしと伝わってくる。


 ここが冒険者たちの目指す場所か。


「キツカちゃん、索敵を欠かさないで」


「ん、任せて」


 敵レーダーと化したキツカちゃんは本当に頼もしい。

ここまでの冒険でもずいぶん助けられた。


 慎重に歩を進めていく。


 が、その時だった。


「ッ、強大な魔力反応!」


「なんだって!?」


 サイキックであるキツカちゃんが何かを感じ取ったのか、血相を変えて報告する。


「後ろ―――」


 そして、俺たちが進んできた通路の方から爆音が鳴り響き大地が揺れた。


「な、なんだ!」


 俺たちは何があったか確かめるために急いで来た道を戻る。


 すると―――。


「な、階段がふさがれている……だと」


 戻ってみると、8階への階段が巨大な岩にふさがれていた。


 先ほどの揺れのせいだろう。


「―――ダメだ。僕たちの装備じゃこれは何ともできない」


 ぱっくんが冷静に状況を分析した。

すると俺たちは今、閉じ込められてしまったということか。


「罠、か」


 俺はぽつりとつぶやく。

もしかしたら、敵は近くに存在したのかもしれない。


「どうする?俺たちはおっさんの指示にしたがうぞ」


 みんなが俺の考えを待つ。

待って救助を待つのは望みが薄すぎる。

9階まで戦えるような冒険者はマホツさんがくらいだが彼女に見合う冒険者は今はいない。


 さすがにマホツさんでも一人で9階まで来るのは難しいだろう。

つまり、9階まで来れるような冒険者はいないことになる。


「……進もう!」


 ならば前進あるのみ。

ここまで来たんだ、戻れないなら進むしかない。


「そういうと思った」


「フフフ、これで冒険者として拍がつくってもんだね」


 キツカちゃんとぱっくんが知ってたと言わんばかりに準備を整えている。


「過去を早く知れるにこしたことはありませんし」


「俺は止まんねぇからな」


「僕もこの町のために早く問題を取り除きたいですから」


 ザマァくん、クレトくん、ぼっくんもどうやら準備万端のようだ。

みんな、ここまで戦って疲れてるだろうに笑みを浮かべている。


「みんな……絶対に死ぬな!」


「応ッ!!!!!」


 俺たちは円陣を組み、最後の命令を出す。

みんなはそれに大きな声で答えてくれるのだった。


 アビスの深淵、その先にいったい何が待ち受けるのかは分からない。


 だが、俺たちならばどんな困難をも越えていけるはずだ。


 俺たちは9階を進んでいくのだった。

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