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おっさんが異世界でチートする話だったのに  作者: 陰キャきっず
新世界2 サガ・フロム・アビス
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その13

 そして俺たちは7階にやってきた。

出現する魔物は今まで以上に手ごわい。


 だが、ぼっくんが仲間になったことによりキツカちゃんやザマァくんの力を温存できるので、ボス戦での余裕もある。


 さすがは騎士と言ったところか、実に優秀なジョブだった。


「ふぅ。この階もなかなかきついな……」


「でもすごいよ。クレトやおっさんも自分の実力を分かっていてそれでいて自分の役割をきっちり果たしている。なかなかできることじゃないよ」


「どーも」


 クレトくんがぼっくんに褒められている。

なんでもないように返事するクレトくんだが、内心はウヒョォー!とでも言って喜んでいるに違いない。


「うん、このパーティーなら何とかなりそうだ」


 アビス最強候補のテンプレ騎士団団長のお墨付きとあらば安心してよさそうだ。


「はははありがとう。ぼっくんも馴染めたようでなによりだよ」


 高名なパーティーからの移籍ともあって上手くやっていけるか心配だったけど、意外に彼は腰が低く礼儀正しい人間だった。






「この階のボスはヤベ―オブドラゴンと言って、竜種の強敵です」


「ドラゴンか……大丈夫かな」


「ああ、安心してください。今までのデータから安全な戦闘方法も確立しています。このパーティーなら余裕で圧勝ですよ」


「そ、そう?」


 俺たちは休憩中に作戦会議をしていた。

ぼっくんが言うには俺たちでも余裕で対処できるらしい。

流石巨大パーティーを引っ張ってきただけはあるな。

知識、戦闘指揮、作戦立案までどんとこいといった感じだ。


「それにしても遅いですね、偵察に行ったクレトくんとぱっくん」 


「ん、確かに」


 ザマァくんが少し前にボスの様子を見に行った二人のことを心配している様子だった。

 

「確かにそうだね……何かあったのかな」


 もう少し待って帰ってこなかったら俺も行こう。

そう思った時だった。


「おい、おっさん!大変だよ」


 ぱっくんが一人で帰ってきた。

それも走ってきたのか息も絶え絶えだ。


「どうしたのぱっくん、それにクレトくんは?」


「クレトはボス部屋の前に……。それよりも聞いてくれ!」


 かなり焦っている様子だった。

いったい何があったんだ。


「ボスが……二体いるんだ!」


 ぱっくんから放たれた情報は俺たちを戦慄させるものだった。







 あれから俺たちはぱっくんと共にクレトくんと合流することにした。

ボス部屋の前にいるクレトくんがこちらに気付く。


「来たか……見てみろ」


 言われた通り視線をボスに向ける。

一体はぼっくんが言っていたヤベ―オブドラゴンだろう。

そしてもう一体はなんだ……黒いドラゴン?。


「あ、あれはヤベ―オブダークネスドラゴン!?」


「知っているの?ぼっくん?」


「はい、あいつは9階に出現する魔物なんです。僕もギルドの資料でしか見たことがありませんでしたが……」


 なんていうことだ。

6階の時と同じく下層の魔物が上に移動している。

それも同種だからか二体の魔物は争うことなく8階への階段を守っていた。


「勝算は?」


「細かい見積もりはできませんが……2割もないかと」


 あまりに危険すぎる。


 ぼっくんでさえ未知の敵がいるのだ。

ここは引くべきか……。


「待っておっさん」


 キツカちゃんが俺が何を考えているのか察したのか、意見を言いたそうにしていた。

俺はどうぞと合図した。


「今戻ってみて再度来た時に魔物が増えている可能性もある」


「それは……」


 確かに、その可能性もゼロではなかった。

あんな魔物を移動させる手段が何かは知らないがそれなりに時間がかかるだろう。


 だが次来た時もう一体追加なんてされてたらもう勝てない。


「まるで深淵の底を絶対に覗かれたくないって感じだな」


 クレトくんが何と無しにそうつぶやいた。


 冒険者が最下層に行くのを防いでいる……?。


『俺たちは見たんだよ、9階の先の10階で第二のゲートをよ』


 以前ぼっちゃんが言っていた話が脳内でリフレインする。

10階の存在を知っている誰かが冒険者が来ないように邪魔をしている……そういうことなのだろうか。


 だが不思議なのはそれほどの冒険者がアビスに存在しないことだ。

個人の力がいくら強かろうがパーティー単位での攻略が絶対条件になる。


 もしや本当にその第二のゲートから何者かがこちら側に来ているのだろうか。


「おっさん……?」


「あ、ごめんごめん」


 しまった、今はそんなことを考えてる暇はない。

目の前のボスを考えなければ。


「おっさん、あの剣を使ってみるのはどうですか?」


 ザマァくんが例のヤバい兵器の使用を提案してきた。

だがあれは威力が強すぎる。そして一回しか使用できない。


 この先の階でさらなる敵が待っているかもしれないし。


「それはダメだ。少なくとも使いどころは今じゃないと思う」


 そうですか……とすぐに納得してくれた。


「行くしかない……か」


 いくら考えてもいい手が浮かばない。

時間だけが過ぎ、出てきた答えは一つしかなかった。


「みんな、聞いて。ここから先は本当に死ぬかもしれない、だから……」


「命が惜しいやつは帰れってか?」


「冗談言わないで」


「僕がいるんだ楽勝でしょ?」


「そうですよおっさん」


「はい。僕たちは真の仲間じゃないですか」


 俺の言葉はそのまま続かず、みんなが一斉に返事をする。

その表情に全員曇りなんてない。

絶対に生き残るという意思がビシビシと伝わってくる。


「そうか……ありがとう」


 俺は目を閉じてみんなとの絆をかみしめる。

ここに来るまで様々な体験をしてきた。

 

 クレトくん、ぱっくん、キツカちゃん、ザマァくん、ぼっくん。

きっと俺たちは出会うべくして出会ったのだろう。


 これまでも、そしてこれからも俺たちは最高のパーティーだと確信できる。


「みんな……行こう」


「行こう、だなんてらしくないな」


 しんみりしていた所にクレトくんからツッコミが入る。

彼も発破をかけるのがうまくなったもんだ。


「そうだね……よしみんな―――!」


 俺はボスの方を向き、気合を入れる。

そして鞘から剣を抜き、戦闘態勢をつくる。


「―――行くぜ!!!」


「応ッ!」

 

 そうして、俺たちは一斉に二体のドラゴンへと突撃した。

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