その7
休憩が終わり、俺たちは探索を再開した。
4階ともなると見たこともないお宝がごろごろ眠っている。
ふと、思ったのだがこれらは本来どういう使い方をしていたのだろうか。
一見、ただの置物のようなものだったり四角い板みたいなものが何か特別な力があったのかもしれない。
深淵に深く潜るにつれてここの存在に疑問が膨らむばかりであった。
「気を付けて、何かいる」
キツカちゃんのその声に俺はハッとする。
いかん、どうやら考え事に没頭していたようだ。
マホツさんに言われたことを思い出し、俺は集中する。
俺たちは慎重に進んでいく。
そこには巨大なオオカミがいた。
恐らくボスだろう
「ヤベ―オブウルフロード」
キツカちゃんがつぶやく。
俺たちにはまだ気づいていないようだ。
「どうしようかみんな?」
「俺たちは体力的に問題はないが……」
「勝てるかどうかねぇ」
悩みどころだった。
「キツカちゃんはどう思う?」
「うん、今の私たちならギリギリってところかな」
彼女の考えでは倒せるが相当なリスクを予想されるそうだ。
「帰る分の余力も考えないといけないから……うーん」
欲をかいてこれ以上進んでいいものか。
「ん……?おっさんあれ!」
クレトくんが何かに気付いたのか
ボスがいる部屋の中を指さす。
「ウ~、ワンワン!」
ボスはいきなりうなりだし、そして吠えた。
「しまった気づかれたか!?」
「いや、違うようだよ」
逃げる算段をつけようと思った時にぱっくんがそれをさえぎる。
目を凝らして部屋の中を見てみる。
すると別の通路から一人の人間が現れたではないか。
「別の冒険者か……だが一人でとは。よっぽどの馬鹿か自信があるのか」
「そんなこと言ってる場合?大丈夫かなあの人」
緊張した雰囲気の中、俺たちは遠くにいる冒険者を見守る。
「ワン!」
ボスが先に仕掛ける。
まるでロケットスタートのような速さだった。
「ハァ!」
冒険者、おそらく青年だろうか。
彼は自分の何倍も大きな狼に怯まず、ギリギリのところで攻撃を回避した。
その身のこなしは俺たちのそれとはまったく違う。
相当な場数を踏んでいるようだ。
そして懐から何かを取り出す。
ただの銀の棒に見えたその先端から光の剣が出現した。
「なんだ……アレ」
「恐らく、オーパーツの一種だと思う」
見慣れない武器に驚く俺たちをよそに
キツカちゃんは冷静に分析していた。
そして終始優勢に立ち回る青年。
たった一人で4階のボスを手玉に取っていた。
「勝ったな」
「ああ」
俺たちは彼の勝利を確信する。
その時だった。
「あ、電池切れた」
「ワン!」
「ぐぉぉぉぉぉぉ!!!」
なんと光の剣が突然消滅し、繰り出そうとした攻撃は空振りに終わる。
そしてボスのカウンターにより一撃をもらった青年は
天井まで吹き飛ばされバウンドし、大ダメージをもらっていた。
「早かったな俺の死も」
どうやら青年はあきらめムードだった。
「みんな!」
キツカちゃんが叫ぶ。
ああ、わかってるよ。
この子はきっとよく知らぬ誰かでも見捨てられないのだろう。
「やれやれ目立つのは好きじゃないんだが」
「やれやれ目立つのは好きなんだよね」
「やれやれ好きなのは目立つんだよね」
俺たちは三者三様、出てきた言葉は違えど
思っていることは同じのようだ。
「待て!」
「ワゥ?」
俺たちはボスの前に飛び出した。
「な、あなたたちは……」
「話はあとだ、下がっていて」
青年を安全なところまで下がらせる。
「短期決戦でいくぞ!」
「応ッ!」
相手は先ほどまでの戦闘で傷を負っているはずだ。
全力攻撃で一気に仕留める!。
「チートレスアタック!」
「無双アタック!」
「イケメンアロー!」
「サイキックパワー!」
そして今、四人の力がひとつになる。
「チート!」
「無双!」
「イケメン!」
「パワー!」
流れるように個々の技が繋がっていく。
俺たちの連携技、《チート無双イケメンパワー》がさく裂した。
「くーん」
ヤベ―なんとかは今の一撃を食らって沈黙した。
四人の思いが奇跡を呼んだ、すさまじい威力だ。
「なんとか勝てたな」
「ああ、そうだね」
俺とクレトくんはハイタッチを交わす。
つづいてぱっくん、キツカちゃんとも。
「ありがとうございますおっさん」
助けた青年がこちらへ歩いてきた。
「あれ?俺名乗ったっけ?」
「いえ、中年に見えたので」
「あ、そっちかぁ」
黙れ小僧。
俺はまだ40歳だ。
「いてて……」
「大丈夫?地上まで送っていくよ」
俺たちは助けた責任があるので一応そう言っておく。
「本当ですか?ありがとうございます」
青年は願ってもないといった感じだった。
「俺はパーティーのリーダーおっさんです」
「俺は……」
彼はそう言いかけてすぐに口をつぐんだ。
「……どうしたの?」
「あの、実は俺……」
どうしたのだろうか。
急に目を泳がせて言いずらそうにしている。
「記憶、喪失みたいです」
やっとでてきた言葉に俺たちは戸惑いを隠せなかった。




