その6
翌日、俺たち三人は約束通り
冒険者ギルドの一室へと向かっていた。
即戦力の助っ人とは一体どのような人物なのだろうか。
少し緊張していた。
そしてドアを開ける。
「失礼します」
「あ、ようこそお待ちしていました」
マホツさんと挨拶を交わす。
その隣にはクレトくんと同じくらいの年だろうか、これまた美少女が居た。
「紹介しますね。こちらの子はサイ・キツカ、冒険者です」
「……はじめまして」
ちょこんとお辞儀し挨拶してくる。
何か思っていたのと違う人物だ。
「どうも、俺はおっさんです。こっちの二人はクレトくん、ぱっくんです」
「ども」
「ど~も~」
自己紹介を終えての感想だが、少なくとも頼りになりそうな見た目ではなかった。
それとも何か隠された力でもあるのだろうか。
「期待していたような人物とは違うようだが?」
クレトくんも疑問に思ったのか、本人を前にマホツさんに問う。
そういう図太いところ、嫌いではないが好きでもないよ。
「キツカ」
「ん」
サイさんは手のひらを前に差し出す。
「なっ」
すると、そこに炎を造り出したのだ。
「驚きましたか?キツカはサイキックなのです」
「サ、サイキックだって!?」
「知っているのぱっくん?」
いつもマイペースにしているぱっくんが驚愕していた。
どういうことなのだろう。
「うん、サイキックは魔法で説明がつかないような超常現象を起こすことができる特別な人間のことさ」
博識にもぺらぺら説明してくれるぱっくん。
魔法で説明がつかないとはどういうことなのだろうか。
俺の知らない20年の間に世間は変わったのだろうか。
「とまあ、このように実力はあるのですが……人付き合いに難があって……。私と組もうにもまだそこまでの実力はありません」
「そこで俺たちに、ですか」
確かに自分の話をしているのに、さっきから黙って俺たちのやり取りを聞いている。
人見知りというのも本当なのだろう。
「はい、どうでしょう?あなた方にとってもいいお話しでは?」
確かにそうだ。
「わかりました、サイさんもそれでいいですか?」
「……うん」
本人の了承を得て、正式に仲間になった。
「では、後のことは頼みます。私はこれから仕事ですので」
「あ、はい。ありがとうございました」
そう言ってマホツさんは部屋を出ていった。
部屋には沈黙が訪れる。
まさか年若き少女を紹介されると思わなかったのでどういう話しを振っていいかわからない。
「えーとサイちゃん?だったっけ。この通り男ばかりのむさいパーティーだが、意見があればなんでも言ってほしい」
そこでぱっくんがナイスアシスト。
クレトくんとは違って本当に気が利く男だ。
普段のウザさには目をつむってあげよう。
「わかった……」
サイさんは一言だけそう言った。
すると、少し俺の方を見て、視線を前に戻した。
どうしたのだろうか。
まあ、気にするほどのことじゃないだろう。
「じゃあ、とりあえず深淵に行こうか」
仲間も増え、ついに俺たちは死の4階へと進む。
その先にはいったい何があるのだろうか。
期待と不安を胸に、俺たちは暗い穴底へと潜っていくのであった。
「サイキックパワー!」
「ギャォォォス!?」
「スゴォィ……」
あまりに壮絶な光景に俺たちはそんな言葉しか出てこない。
魔法とは違う、幻想的な現象に圧倒されてしまう。
そして、魔物との立ち回りも相当なものだった。
4階という未知の領域に気後れしていたが、なんとも頼もしいことだ。
「クレト、後ろ」
「わかった」
そしてなによりも気配を察知する能力。
彼女は今後、深淵探索の要になるだろう。
クレトくんも、負けじと魔物をばっさばっさ切り倒して行く。
負けず嫌いなクレトくんの成長も楽しみだった。
「おっさん、とどめお願い」
「OK!」
ならば俺も年長者としての意地を見せねば。
気合を入れて瀕死の魔物に突撃するのであった。
「ここからしばらくは魔物の気配はない……」
サイさんがそう言うので、俺たちは少しだけ休憩することした。
「サイさんはすごいね……おかげで随分助けられてるよ」
「……」
「あ、あれ?サイさん?」
何か言えや。
ちんもくかい。
おっさんやから無視しとんか?え?。
「名前」
「はい?」
ちょっと間を入れて一言だけ出てきた。
名前、ネーム、君の名は……?。
中年を無礼るな!何言ってるんだ!。
予想外過ぎる展開に俺は混乱してきた。
「下の名前で呼んで」
「な、なんで?」
「なんとなくそう思った」
なぜかそっちをご所望のようだった。
神の一手極めるんじゃなかったのか。
「え、キツカさん?」
なんて心の内は置いておいて
恐る恐る名前を呼んでみる。
「さんはいらない」
注文が多かった。
どこぞの名人ですかあなたは。
「き、キツカちゃん?」
「うん」
どうやらご満悦のようで、少し頬を紅くして笑顔になる。
なんやこいつ。
と、普段なら思うところだか、俺もなぜかうれしいような懐かしいような気持ちになっていった。
「なあクレト……」
「ああ」
「おっさんのどこがいいんだろうね」
「きっと頭もサイコなんだろ」
好き放題言ってくれやがる。
だが、手前らは所詮敗北者。
我が憤怒は胸の内に留めておいてやろうぞ。




