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おっさんが異世界でチートする話だったのに  作者: 陰キャきっず
新世界2 サガ・フロム・アビス
52/122

その5

さあやってきたぞ深淵3階。


 ぱっくんは弓を使うそうで

後方支援を担ってくれるそうだ。


 さっきからここぞという時に援護をしてくれている。


 ウザい性格とは裏腹にもそれなりの実力がある。


 二人で戦っていた時とは段違いに戦いやすくなった。


 これならなんとかやっていけるだろう。


「おっさん!そっちいったぞ!」


「わかった!」


 俺は迫ってくる魔物の攻撃をなんとか回避する。

そしてすれ違い様に剣を振り攻撃する。


 だが、致命傷には至らない。


「トドメは任せて!」


 最後はぱっくんが弓で仕留めてくれた。


 なんだよ……結構いいチームじゃんか。





「少し休憩しようか」


 慣れてきたとはいえ、40歳の体は若い者にはかなわない。

それなりの疲労が蓄積されていた。


 俺たちはしばしの休息をとることにする。


「君たち、ずいぶん連携が取れてるけど長いの?」


「いや、そういうわけじゃないが……」


「不思議とどう動くのかわかっちゃうんだよね」


 ぱっくんが疑問に思うのは無理はない。

他でもない俺たちでも驚いているのだ。


 まるで長年戦いを共にしたように

俺たちは心が通じ合っていた。


「ふーん……でもそれが自然な気がするよ。なんでかな……」


「前世で何かあったのかもな」


「……かもね」


 どこか遠い場所を思い出すような不思議な気持ちになっていたのであった。





 休憩を終え、数時間。

俺たちは3階の奥へと進んでいく。


「……見て、大広間だ」


 迷路のような道を抜け、いかにも何かありそうなところへ出た。


「ここが最奥か、下へ行く階段は……あそこだな」


 クレトくんは目を凝らして4階へ続く階段を見つけてくれた。


「おっさん、お宝はどれくらい拾った?」


「えーと、いつもの2倍くらいかな」


 目に見えて成果を上げると気持ちいいものだ。

冒険者としての力もついてきたしな。


「じゃあ、帰るか」


「そ~だね」


「うん」


 一応、周囲にお宝が無いか探しておく。

あ、結構落ちてるじゃん。


「おっさん置いてくぞ」


「すぐ行くって」


 あ、ここにもある。

しめしめ、少しだけ独り占めしよう。


 俺はポケットに詰めるだけ詰め込む。


 こづかい程度にはなるかな……。

そう考えていた時だった。


「ッ!おっさん上だ!」


 いきなり叫んだのはぱっくんだった。

何事かと思い、天井を見上げる。


「クモー!」


 なんとそこには巨大なクモがいた。

ヤベ―大きさだ。


「ヤベ―オブスパイダーキングだ!」


「やべーぞ!逃げろ!」


 俺は急いで二人の方へ駆けだした。

しかし、俺の前方へ降りてきてしまう。


 しまった、分断されてしまった。


「おっさん!くっ!」


「まって、クレト。正直ボスを倒すには手数が足りない」


「仲間を見捨てろっていうのか!?」


「そうじゃない!冷静になれと言ってるんだ」


 向こうで二人が言い争いをしている。

ケンカなんてやめて早く助けに来て。


「クモクモー!」


「ごはああああぁぁぁぁ!!!」


 ほらみろ大ダメージ受けたやんけぇぇぇぇぇ!!。


 巨大な質量から繰り出される攻撃に俺は吹き飛ばされていく。


「おっさーん!」


 かすむ目で見れば二人がクモに攻撃を仕掛けている。

だが、微動だにしていない。


 完全に役立たずだったボケが。


 死ぬのか……。


「吹き飛べ灰塵!ロケットランチャー!」


「えっ」


「えっ」


「えっち」


 どこかで聞いたことのある声だった。

大胆な詠唱のあと大きな爆発が起こった。


「クモー!?」


 あの巨大なクモが嘘のように吹き飛んでいく。


「またあなたですか。つくずく縁があるようですね」


 煙がはれるとともにやってきたのはいつか見た美少女。

《アビス》で名を知らぬ者はいない魔法使い。


「マホツさん……!」


 彼女に命を救われるのは二回目のことだった。


「グモォ……」


「どうやらまだ息があるようですね」


 彼女はまたも文明的な機器を用いて

巨大グモと対峙する。


「ヘビィーマシィンガン!」


「ギャアアアア」


 ネイティブなのかそうじゃないのかわからない絶妙な発音で魔法を放つマホツさん。


 弾丸の雨あられを食らったヤベ―オブなんたらは沈黙していく。


「あれが……《アビス》最強の魔法使い、マホツ・カイ……」


 実際にその力を見て驚愕しているぱっくんとクレトくん。


 きっと魔法使いも時代と共に様変わりしたんだろうたぶん。

俺はそんなことを考えながら意識を失っていく。


 なんとも漢らしい美少女の背中を見つめながら気を失ってしまったのだった。  






「あ、起きた」


 気が付けば俺はやわらかい感触を頭に感じていた。

このちょうどいいかんじのやわらかさは間違いない、膝枕だ。


 申し訳程度のヒロイン要素だった。

私もみんなのようなハーレム好きだったのだが膝に矢を受けてしまってな。


 などという些事はさておき。


「あ、知ってる天井!これ真剣ゼミでやったところだ!」


「は?さっむ」


 見事にすべってしまった。

年を取るとつまらないギャグではしゃいじゃうものなんだよ。


 年下の女の子に膝枕されていることの照れ隠しにはちょうど良かったが。


「二回も助けてもらっちゃって……なんとお礼をしたらいいか」


「いいんです。今回も成り行きですから」


 彼女はなんでもないかのように振る舞った。

なんと人間の鑑のようなお方であろう。


「謝礼でしたら結構ですよ。この前ので十分です」


 彼女は神かなにかなのだろうか。

俺は取り出しかけた宝をしまう。


「送っていきます。そちらのお二方も大層お疲れのようですから」


「ま、その通りだね」


「……ふん」


 二人のあちこちに傷が新たに出来ている。

俺を助けるために頑張ってくれた証拠だった。


 ひ、捻くれぇ……!ぱっくん……!。


 俺は二人の優しさに涙するしかなかった。

ごめんね特にクレトくん。

心の中でイキリ捻くれ太郎って呼んでてごめんね。


「なかないで」


 そんな俺に彼女はそっとレストランとかにおいてそうなティッシュ的な何かを差し出してくれるのであった。


 






 俺たちは地上に帰ってきた。

この瞬間が一番気持ちのいいものだった。


 俺たちは宝物を売却した後、お礼をかねてマホツさんを食事に誘ったのであった。


「あらためてありがとうございました」


「ふふふ、たいしたことではありません。これも何かのご縁なのでしょう」


 大層な器だ。

これが大魔法使いたる所以なのだろう。


「あなたたちはさらに下へと潜るつもりなのですか?」


 食事をしながら雑談に移る。


「それは……」


 その質問に俺は即答できなかった。

ついこの間までは成り上がることしか考えていなかったが、さっきの出来事もあり、冒険者というのは死と隣り合わせなのだと改めて悟ったからだ。


「当然だ。俺は俺を馬鹿にした連中を見返さなければならない」


「僕は~まあ何でもいいんだけど、お金は稼げるにこしたことはないしね」


 どうやら二人は若さゆえの元気が有り余っているようだ。

俺にはそれが眩しく見える。


「だとしたら忠告しておきます。4階からは死の領域、並みの冒険者たちでは生きて帰ることはできないでしょう」


 俺たちはゴクリと唾を飲み込む。

マホツさんほどの人が言うんだ、間違いはないのだろう。


「一瞬の油断が命取り……気の休まる暇はありません」


 優雅に紅茶を飲みながら淡々と口にするマホツさん。


「何か、アドバイスとかないですか?」


 どうすればいいのか質問してみる。


「そうですね。圧倒的に戦力があなたたちには足りていません」


「ぐっ……」


 あのクレトくんでさえなにも言い返さない。

よっぽどあの戦闘が堪えているのだろう。


「そこで提案なのですが……」


 彼女はお茶目にも人差し指を立てて

ずいっと机に乗り出す。


「私の知り合いをおっさんたちのパーティーに加えていただけませんか?」


「知り合い?」


「はい、ちょっと引っ込み思案なところがありますけど強いし、いい子ですよ」


 なんと願ってもない即戦力を紹介してくれるというのだ。


「ぜひ、お願いします!」


 俺は即答した。


 その後、明日またギルドで会う約束をして

今日は解散したのだった。


 あたりはすっかり暗くなっていた。

夜の《アビス》はいっそう雰囲気が怖い。


 ぱっくんと別れ、俺とクレトくんは宿屋への道を歩く。


「いやー今日は疲れたね。さっさとベッドに潜り込みたいよ」


「……」


「クレトくん?」


 さっきからこの男、まるで喋らない。

どうしたんだろうか、捻くれすぎてしまったのだろうか。


「悪いが先に帰っててくれ……ちょっと用事が出来た」


「えっ、あ、うん」


(俺は強くならなきゃならないんだ……!特訓するしかない)


 とか考えてそうなしかめっ面で夜の町へと消えていくクレトくん。


 若いっていいね。

俺はお言葉に甘え、帰って寝ることにした。

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