その2
深淵へはゲートなるものを使って行くそうだ。
俺はさっそくゲートを通って深淵へと赴く。
ここが深淵一階か。
薄暗いがまったく見えないことはない。
とりあえずたいまつを持ってゆっくりと進んでいく。
いや、やはり突撃するしかない!!!。
俺はとりあえずダッシュで深淵を駆け抜ける。
道中には深淵に生息する魔物がうろついていたが
なに、気にすることは無い。
とりあえずお宝になりそうなものを手あたり次第に拾っていった。
だが、それが悲劇の引き金となった。
なんと行き止まりに遭遇した。
入り組んだ迷路のような深淵をテキトーに走りまくったので、ここがどこかもわからない。
そして後ろには魔物の群れが行く手を阻む。
終わった。四面楚歌とはこのことだろうか。
早かったな俺の死も……。
諦めかけたその時だった。
「燃えよ爆炎!グレネードランチャー!」
何か掛け声とともに炎の弾丸が魔物の群れに爆裂する。
あれだけいた魔物のほとんどを殲滅する威力だった。
一体何が……。
「大丈夫ですか?」
現れたのは美少女だった。
「あ、ありがとうございます。助かりました……」
「いえいえ、人として当たり前のことをしただけです」
とりあえずお礼を言い、深く頭を下げる。
「私はマホツ・カイと言います。一般的な魔法使いです」
名刺をもらう。
明らかに文明的な機器をお持ちのようだが
きっとツッコんではいけないんだ。
「これはご丁寧に。おっさんです」
俺は名刺代わりにのど飴を渡す。
「どうも。見る限り新米冒険者のようですけど……」
「は、はい。そうなんです」
「そんな装備で大丈夫だと思ったんですか?武器を全くお持ちでないようですが」
痛いところを突かれてしまった。
武器を買うお金もなかったので
丸腰でやってきたことを説教されてしまう。
「すみません……俺が浅はかでした」
「いえ、わかってくださればいいのです」
目先の欲に眩んで、大事なことを忘れていたようだ。
「その状態じゃあ一人で帰るのは危険です。私も同行しましょう」
まさに聖人君子。
パーフェクト美少女ヒロインとはこのことだった。
「ありがとう……ございます」
長らく人にやさしくされてなかった俺は
感動のあまり涙をながしてしまう。
「泣かないで」
そんな俺に彼女はそっと、ウェットティッシュを差し出してくれるのだった。
その後、無事にギルドへ帰ってきた俺は
戦利品を売りさばいた。
合計7600マネーと、まずまずの成果であった。
「これ、助けてもらったお礼です」
俺は謝礼として500マネーを彼女に差し出す。
「別に構わないのですが……お受け取りしないとあなたも納得しませんよね」
彼女はしぶしぶといった感じで受け取ってくれる。
正直、つっかえしてくれることを祈っていたのだが。
「では、私はこれで」
「あ、はい。色々とお世話になりました」
マホツさんは去っていった。
「とりあえず武器を買いに行こうかな」
俺は過ちを繰り返させないために
装備を入念に整えようと思ったのだ。
「ようこそウエポンショップゆきのふへ」
カランカランというベルの音と共に
入店したのは、この街一番という武器屋さんだ。
「俺は店長のぼっちゃんだ。まあゆっくり見ていけ」
「は、はあ」
なんかタバコをふかしながら態度も若干悪い感じの店長に挨拶する。
喫煙者が肩身の狭い世の中で
タバコを吸い続けるとはそうとう肝の据わった男だ。
「なんか初心者におすすめなのあります?」
とりあえず知識がないので店長に質問してみた。
「そうだな。このロングソードなんてどうだ?」
渡されたロングソードを持ってみる。
ぎりぎり振れそうな重さだ。
「まあ、序盤ならこんなもんか」
「ちなみに+10まで鍛えまくれば最強武器だぞそれ」
「マ?マジ卍の助五郎開眼!?」
2000マネーというそれなりの値段だが
良い買い物をしたようだ。
「ありあとあしたー」
ついでにカイトシールドと色々な道具を買って
俺は店を出るのであった。
再び俺は深淵一階へとやってきた。
今度は細心の注意を払いながら
魔物を一体ずつ倒しながら進んでいく。
お宝を拾う効率は悪いが
自分の実力も上がるし、安全だ。
もう数時間ほどたっただろうか。
下に進む階段を見つけた。
普通に考えれば回れ右をして
地上に戻った方がいいのだろう。
だが、そんなことでいいのか。
ニートと馬鹿にされ、親からも見捨てられた俺が成り上がるには、もっと粋がらないといけないんじゃないだろうか。
俺は深淵二階へと進むことにした。
だが、それが悲劇の引き金となるとはつゆとも思わなかったのだ。




