その3
キン!キン!キン!。
子どものころの夢はなんだっけか。色あせていくもんなんだな。
そんな変なことが脳裏に浮かんでくるくらい
動揺してしまう。
「やべーぞ!ヤベ―オブスカルナイトだ!」
「逃げろ!」
なんと下に降りてすぐのことだった。
どうやら冒険者の一団がボスっぽい敵と戦闘中のようだ。
無残にも血しぶきを上げてやられていく冒険者たち。
「がぁぁぁぁぁ!!!」
「ガリーーー!!」
「ガリくーーーん!!」
まさに阿鼻叫喚。
この世の地獄がそこにあった。
「イケくんどうしよう!」
「ぐっ……」
冒険者の一人が負傷したようで
リーダーらしきイケメンが考えを巡らせている。
だが、でかい骨はなおも立ちはだかる。
「カワ!お前だけでも逃げるんだ!」
「そんな!そうします!」
どうやらイケメンくんは仲間の少女を
逃がすために一人で戦うようだ。
あっぱれといったところか。
「ぐっ、ガリの仇ーーー!!!」
大きな剣を振りかぶり突撃していくイケメン。
「ホネホネー!」
「ぎゃあああああああ!!!」
だが、圧倒的な実力差の前にはなすすべもなかった。
俺はその光景を岩場の陰で呆然と見つめることしかできない。
すまないやるだけのことはやったんだが……。
俺は申し訳なさを感じてしまう気がした。
「そ、そんな……」
悲観に暮れるイケメン。
せめて安らかに眠れるよう俺が祈りをささげようとした時だった。
「フン、見てられないな!」
「ッ!?」
謎の少年がいきなり現れたのだ。
「ホネホネ―!」
「無双アタック!」
「ギャアアアア!!!」
その少年はあのヤベ―骨を圧倒していた。
かなりの実力者のようだ。
「お、お前……ヒネか!?」
「そうだ。お前らのパーティーから理不尽にも追い出されたあのヒネ・クレトだ」
よくわからないが彼はイケメンくんらの元パーティーメンバーのようだ。
「あ、イケくーん!助けを呼んできたよー」
先ほど逃げていったはずの少女が戻ってきた。
そうか、彼を呼びに行ったのか。
「カワがどうしてもというからわざわざ来てやったんだ」
「なっ……」
なんとも上から目線な男だった。
きっと友達は少ないに違いない。
そして彼の登場によりなんとか事なきを得たのだった。
あれから俺は怖くなったので引き返すことにした。
イケメンくん達も決して弱くは無かったはずだ。そんな彼らでも敵わない魔物がいる2階を一人で探索するのは危険だと判断したからだ。
誰かちょうどいいメンバーはいないものか……。
ギルドでお宝を買い取ってもらい、宿へと帰る。
すると、扉をくぐったところで
見覚えのある人達がいた。
「ヒネくん!パーティーに戻ってきて!」
「断る。追い出したお前たちが何をいまさら……」
「そんな、私は……」
どうやら先ほどのヤベ―オブスカルナイトと戦っていた人たちのようだ。
なにがあったのか彼らは修羅場を展開している。
他のお客様にも気を使ってもらいたいものだ。
帰ってこいと言う彼女に対し、捻くれ太郎は
意にも介さず自分の部屋へと入っていった。
断られ、しょぼくれた彼女はしぶしぶ帰っていくのだった。
どうやら、ヒネくんとやらはフリーのようだ。
彼のような仲間が居れば心強い。
性格に大きく問題があるが、そこには目をつむってあげよう。
俺は彼の部屋をノックする。
すぐに扉は開いた。
「……誰だ?」
「どうも始めまして。おっさんと言います」
どうやら40のおっさんがいきなり視界に入ってきたので面食らっているようだ。
「実はパーティーメンバーになってくれそうな方を探してまして」
色々と説明をする。
「悪いが誰の仲間にもなる気はない。帰ってくれ」
追い返されてしまった。
何がいけなかったんだろうか。
きっと人間不信なんだろう。
日を改めて勧誘することにした。
俺は武器屋に来ていた。
目的はロングソードを強化するためだ。
「おお、おっさんか」
「やあぼっちゃん。武器の強化を頼めるかな?」
「ああ。まかせろ」
いつの間にやらすっかり常連さんになっていた。
意外にも店長とは馬が合うのだ。
たまに飲みにいったりもする仲になったほどだ。
「ま、適当に座っててくれ」
そういって、作業に集中していくぼっちゃん。
仕方ないので静かに待つか。
そう思った時、店のベルが鳴り響いた。
「あっ」
「あっ」
入ってきたのは例のヒネくんだった。
お互い気の抜けた言葉が漏れる。
「あなたもここの常連なんですか?」
「あ、ああ。まあな」
とりあえず世間話で間を持たせる。
「おっさん終わったぞー……ってクレトじゃねぇか」
作業が終わったらしいぼっちゃんが戻ってきた。
「ほらよ」
「おお!」
装備してステータスプレートを見てみる。
確かに攻撃力が上がっていた。
「そうだクレト。おっさんが仲間を探してるみたいなんだよ。組んでやってくんねえか?」
うまいぞぼっちゃん。
渾身のアシストに称賛の雨あられを心の中から送る。
「……まあ、ぼっちゃんがそういうなら」
どうやら彼とぼっちゃんは相当な仲のようで
意外にもすんなり受け入れてくれた。
「じゃあ握手しようか。俺はおっさん」
「ヒネ・クレトだ」
互いに手を交わす。
どうしてだろうか。
どこか懐かしいような気分に俺は心地よさを感じるのであった。




