ナロナロクにて その3
「やぁぼっちゃん、久しぶりだね」
ぬるっと現れた美青年。
おそらく彼が一回戦での相手だろう。
「ああ。1500年ぶりだったか?」
「そうだね」
どうやら二人は知り合いだったようだ。
とりあえず握手を交わす二人。
しかし、表情とはうらはらに二人の目は真剣そのものだった。
ひとしきりの挨拶を終えたぼっちゃんとぱっくん。
会場にはピリピリとした空気が漂う。
「ま、余計な挨拶は抜きにしようや」
「つれないなぁ」
やれやれ、とおどけるぱっくん。
「はっ、出せよお前のチームを」
せっかちなぼっちゃんはとっとと始めたいそうだ。
俺たちは戦闘態勢になり気合を入れる。
「そう急がないで。カモン!僕の転生者たち!」
指パッチンとともに姿を現す三つの影。
来るのか―――。
「俺は炎のエン」
「私は水のスイ」
「俺様は火のカ」
「属性偏ってね?」
「やっぱ最強四天王だったか」
「え」
姿を現した敵チームメンバー。
四天王という割に三人しかいないという
ツッコミは野暮なのだろうか。
「さあ始めようか」
「よし、行けお前ら!」
「おう!」
そんな俺の心の内を知らずに
戦いのゴングが鳴り響いた。
「まずは陣形を組もう!フリーファイトだ!」
「よし!」
「行くぞ!とりあえず突っ込め!」
「ワーワー」
順調に特訓の成果を発揮する俺たち。
主導権は俺たちにあると思われた……だが。
「馬鹿め……食らえ俺様のチートを!」
「なっ……!?」
火のカの周りが燃え盛った。
燃やされたあたりはマグマのようにドロドロになっていく。
「なんて火力だ!」
「俺様のチートは火を自由に操れるのだ!」
まさに、地獄の業火とも呼ぶべき攻撃に
ぼっくんは次第に追い込まれていく。
「そ、そんな!どうやって破ればいいんだ!」
「ぼっくん!落ち着け!!」
「おっさん!」
「君のチートなら使い方次第で勝てるはずだ!」
「……!?そういうことですか!」
このアドバイスの意味をぼっくんなら……。
過去にともに戦った彼になら伝わるはずだ。
「させませんわ!」
敏感に何かを察知したのか
水のスイがぼっくんの方へと駆けだした。
「暮人くんは水のスイを頼む!」
「任せろ」
すかさず俺は指示を出し、暮人くんをカバーに入らせる。
そしてなんやかんや戦いが熾烈をきわめていく。
「いっけぇぇぇぇ!使い方次第でチートブレイカー!!」
「ぐっ、ぐわぁぁぁぁあぁ!!?そんな使い方が存在するなんて……」
どうやらぼっくんは、上手く火のカを倒すことができたようだ。
「やりましたよ!おっさん!」
ガッツポーズでこちらに笑顔を向けるぼっくん。
よくやったぞ。
「そ、そんな」
「焦るなスイ。奴は四天王の中では最弱……」
「そ、そうね」
一人抜けたことにより不利なるぱっくんチーム。
しかし、あの炎のエンという男、かなりやるようだ。
「この調子で逝きます!」
「だから字!」
「食らいなさい!私のチートを!」
「ぐわぁぁぁぁぁ!!!」
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
「二人ともーー!!」
ぼっくんは悪い癖が災いし、暮人くんはなんとなく
水のスイの攻撃で吹き飛ばされていった。
「こ、これがチートを与えられた転生者同士の戦い……!」
想像以上に過酷な戦いに、俺の精神は
じりじりと追い込まれていく。
そんな時だった―――。
『焦らないでおっさん』
聞き覚えのある声が脳内に直接響く。
「ショーくん!?でも、どうすれば……」
『忘れたのか?あなたにはチートがあることを……!』
「……!!!?そうか!!!」
その一言が俺に冷静さを取り戻させる。
まさに、鶴の一声とはこのことだった。
「食らえ!超級武神チートアタッカァァァァァ!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「試合終了!勝者!チームぼっちゃん!」
間一髪、チートにより事なきを得ることができた。
「あ、危なかった……ショーくんのおかげで助かったぜ」
『サポートですから』
誇らしげにそう言うショーくん。
こんなに頼もしい仲間は他にいないだろう。
「ぐっ、すまないおっさん」
「面目ないです」
「二人が頑張ったおかげさ……」
ぼろぼろになった二人に俺は
ねぎらいの言葉をかけるのであった。
「な、なぜだ!僕たちが負ける要素はなかったはずだ!」
敗北により取り乱すぱっくん。
偏った編成でよく言えたものだった。
「そんなこともわかんねえのか?だとしたら期待外れだぜ」
「ど、どういうことだ!?」
「絆だ」
「き、絆だって?」
は?何言ってんだコイツ?。
「そうだ。絆ってもんは時にチートを凌駕する力を発揮する」
普段とはかけ離れた熱い一面を見せるぼっちゃん。
「転生者のレアリティ?高位のチート?
そんなもんはただの要素だ。
本当に大事なモノは心なんだよ」
「そ、そうだったのか……」
ガクリと倒れこむぱっくん。
ぼっちゃんのそれっぽいご高説に心打たれたようだ。
「だからもっと高レアな転生者を引いて
そいつらを強化素材にすればいいさ」
「そうだなw」
「キモ」
明日は我が身か……、フッ。
「おっさん、やっぱりお前を選んでよかったぜ」
笑顔で俺をねぎらうぼっちゃん。
勝利できた俺も誇らしいよ。
「もちろん俺だけの力さ。他のみんながいなくても勝てたよ」
「本音出てますよ?」
疲れのせいか、思っていたことを
口に出してしまったようだ。
すまない、本当にすまない。




