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食物人間 -しょくにん-  作者: 弦陸 流音
第一章 自由と出会い
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第一章 第三話



第三話




収穫後の翌日~5日までならグラウンドへ出ることが許される。


正直外の空気はなんというか独特の香りがする気がする。

ふんわりと柔らかいような。


施設内に戻ると、ツンとするような匂いを感じることがある。


外の世界に出たらこの匂いの違いをもっと的確な言葉で表現することができるのだろうか。



そんな今、二人はとある決意を迫られていた。



「おい787 本当にこれ食べるのか?」

スプーンにすくったそれを俺に見せている。


「ああ、一晩で数ミリ再生した俺たちの身体、食べてみるしかない」

そう言いながらも、なかなかスプーンを口元に運べない。


「目をつむれのぶなが、死ぬときは俺も一緒だ…」


俺はのぶながの、のぶながは俺の肉を。

俺たちはお互いの尻の部分に再生した肉を食べることにした。


なぜ尻か?必ず服を着ろと言われるから、

外から見えない部分として必然と尻にたどり着いた。


「…うん 噛み応えのある豆腐だな」

「…そうだな 無味無臭というわけではないが特に臭いも味もしない」


初めて口にしたしょくにんの肉、飲み込まずによく噛んだ。

「これは…」


「まじー」/「まずい」

お前もか、のぶなが。


「この実験で知りたいことはただ一つ、

身体へ影響が出るか出ないかを調べる」


通過儀礼だ。

と言っても2週間しか経過観察できないので大博打である。


「次は調味料つけたり他のおかずに混ぜて食べてみるか」

「ああ、そうしよう」


ん~

「味噌、意外といけるな」



そうして脱走予定の当日まで続けた結果、

とくに身体への異変も再生の異変も無く、

脱走当日を迎えることとなった。



今回の収穫は昼間。

収穫時間はその日によってバラバラのためここだけは運だった。


「夜じゃないのは少し不安だ」

あれ?珍しく俺が思ったことを口に出していた。


だが、そんな俺を気遣うことなくのぶながが言う。


「787、いよいよ今日だ。決心したか?」


無言を貫いた。

お前だけでも脱走させてやるとは言わなかった。



スピーカーがノイズを放つ。


「AブロックR1から1000番へ、収穫エリアへ移動してください」


来たか。


「さあのぶなが、家出の時間だ」


のぶながは俺の背中を叩く。

「家出じゃねえ 脱走だ」


なんてことない、いつもの俺達だ。


「のぶながへ 本日の作戦を復唱せよ」


「イエス ボス」

「いや、ボス(主導者)はお前だろ!」

と軽く突っ込みを入れた。


「作戦内容はこれだ」


収穫号令と共に、列の真中へ紛れてB棟へ向かう


A棟とB棟の連絡通路でダクトAの場所から脱走する


Bゲート付近のダクトC付近で唐辛子、コショウ、小麦粉を入れた紙袋 粉塵爆弾陽動作戦を実行し、

Bゲートから脱走をする


あとは真っ直ぐ300m進んだ場所に地下通路があることをアースマップで確認済のため、

ここを目掛けて全力疾走 その先が安心かどうかは神のみぞ知る。


「そういえばフンジンバクダン? て何だ」

「まあ即興で作った爆弾だ上手くいけばいいけどな」


「そんな材料で作れるのか?」


いや即興なんだ本当に。


「うまく引火さえすれば多分行ける…はず!

コショウと唐辛子は保険だ」


「お前にしてはなんとも詰めが雑だが…」


「まあ失敗しても俺たちは初犯だし軽く済む。

そして何としてものぶながは行かせる」



「さあ行くぞ」


俺達は俺達が暮らした部屋を飛び出した。



俺とのぶながは息をのんで連絡通路へ向かった。


「まずはダクトだな」

以前と同じ手順でダクトのねじを外し中入る。


「大丈夫だ誰にも見られていない」

ダクトを通じてBゲート付近へ向かった。


これまでに感じたことがない緊張感、不安感、

だがそれにも増す高揚感。



四つん這いでダクトを進んでいき、

目的のポイントまでついた。



「のぶながはここでまて、あれを仕掛けてくる」


陽動作戦と言う奴だ。


「本当に大丈夫なのか?それ?」

「まあ見てろって」


試してもないのに自信満々に言う。

そして俺はCダクトへ向かった。


電池と針金で作った引火装置。

「さあ…上手くいってくれ…」


紙袋を膨らませてかき混ぜて外に置き、

のぶながの元へ戻った。



「おお戻ったか っで爆弾は?」

「銅線が熱くなれば何かしらに引火する…はず」


スチロールカッターと言う奴だ。

原理はそれと同じだ。


「俺たちの捜索が始まる前に何とか動きがあればいいが」


外の様子をみているのぶながに俺は背中を叩く。


「大丈夫だ、何かあれば俺が陽動に出る」


そう答えた矢先、

焦げ臭い臭いが漂ってきた。


外から声がする。

「ん? 何かあそこに煙が見えないか?」

「あ!本当だ」


そうしてゲート前に立っていた二人はダクトCのほうに向かっていった。


「爆発しねーな…」

俺はのぶながの尻を叩く。


「787!行こうぜ!!!」


ダクトから勢いよく飛び出した。


俺は走ってしまった。

身体が勝手に動いて無我夢中で走ってしまった。


今まで適度な運動しかしたことがなかった。

全力疾走をしたのは年一の精密検査以来だ。


収穫直前ということもあり、

生きていた中でおそらく一番ブサイクな姿をしているだろう。


そして俺たちはゲートを突破し、

外の世界へ飛び出した。


太陽が、俺達を見つめているだろう。

だが、その瞬間に何かが弾けた音が聞こえる。


そして、俺は片腕を失った。






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