キミはどうしたい?。
──翌日の現場。
リクはあれから、頭の中がぼんやりとしていた。
資材運び中。
「リク!こっち持ってくれないか!」
「ッス……!」
何かが違う。
ヴォルトはそれを見ていた。
明らかに、リクの反応が遅い。
(いつもなら、言われる前に「そっち持つっすー」とか言うだろお前……)
昨日の午後からだ。
その日の午前中はうるさいくらいに元気だった。
ヴォルトはポケットに手を突っ込み、リクへ近づいた。
「……オイオイ」
「さっきからボーッとしすぎだろ」
「飯でも抜いたのか、お前」
リクはその声に振り返って、苦笑いを浮かべた。
「……いやー、ちゃんと食ったはずなんすけどね!」
なんてことないような口調。
だがやはり──。
「お前な、なんかあったか?」
そんな唐突な言葉に、リクは慌てて喋りを早くした。
「え?!いやいや全然っすよ!」
ヴォルトは少し真剣な表情を浮かべた。
「あのな、仕事に支障出てんじゃねえか」
「そりゃなんかあったのかと思うだろ」
ヴォルトは気だるそうなため息を吐きながら言う。
「……言いたくねえなら別にいいが」
目を細めて続ける。
「抱えたまま動くのは危ねえぞ」
リクは笑顔を作らずにヴォルトを見上げた。
「……聞いてくれるっすか?先輩」
そう言うと、ヴォルトは笑った。
「おう。……言ってみろ」
リクは視線を落とし、落ち着いたトーンで話し始める。
「……自分、昨日エニに会ってきたんすけど……なんか、様子が変で、気になったんす」
「……でも、自分が間違ってたらって。……踏み込んでいいのか、分かんなかったんすよ」
ヴォルトはその話を聞いた上で、少し黙った。
そして口を開いた。
「……お前、自分を信用してなさすぎやしないか?」
「……え?」
リクの目が点になった。
「お前がそこまで気にする時点で、放っておく気はねえんだろ」
「……結局、お前はどうしたいんだ」
言葉に詰まる。そこまで答えが出かかっているのに。
「それは……」
ヴォルトは待った。
だが、少し待った後、口角を上げる。
「今すぐじゃなくていい」
「……ただ、考えるのは”自分が間違ってるか”じゃないだろ」
「……はは」と、リクは頭を掻きながら、困ったように笑った。
「……なんか、自分。順番、間違えてたかもしれないっす」
「ちゃんと、考えてみるっす」
すると、ヴォルトはいつもの笑みを浮かべた。
「おう。……ただし、考えるのは仕事が終わってからな」
「わ、わかってるっす!今は集中するっすから!」
──仕事終わりの休憩室。
リクは全員がいなくなるまで静かに過ごしていた。
そして最後の一人が出ていった時、リクは端末を起動する。
開いたのは、エニとのメッセージ画面。
目的もなく、読み返す。
(前から思ってたけど……既読が付くのは早いのに、返事には時間がかかるよな、エニ)
珍しく、小さなため息を吐いた。
「……自分が、どうしたいか……」
その思考は、静かすぎる室内に溶けていった。




