アナタのこと。+
──共有ラウンジに着いたあと。
ジャネットがじっとリクを見ていた。
リクは片足に重心をかけ、戸惑ったような表情を浮かべた。
「ど、どうしたっすか?なんか付いてます?」
ジャネットはリクの手元を覗き込む。
「え?いや、オレンジが好きなのかな〜って」
「あ〜、好きっすよ!これ2本目っすし!」
リクはジュースの缶を少し持ち上げた。
ジャネットは、リクの鮮やかな頭のてっぺんと、手元の缶を交互に眺めた。
「ヘぇ〜。なんか、そのまんまだね」
再びきょとんとした表情を浮かべるリク。
「そのまんまって……どういうことっすか?もしかして、そんなに好きそうに見えます?!」
「見えるよ!いや〜、キミの好きなもの覚えやすくていいね!ほら、髪とか見たらすぐ思い出せそう!」
ジャネットが「あはは!」と笑う。
「髪色は関係ないっすよ〜!」
リクは缶を持っていない方の手を頭に当てて、口角を上げながら言い返した。
ジャネットはそれを見て楽しそうに肩を揺らしたが、ふと手元の端末に目を落とした。
画面を確認すると、迷いのない動作でそれをポケットに収める。
「おっと、ちょうど時間だ。私、そろそろ行くね」
リクは「お」と声を漏らし、ラウンジの壁に掛かった時計を見上げた。
「あ、もうそんな時間っすか。了解っす!」
「うん。ちょっと話せて楽しかったよ、リクくん」
ジャネットは歩き出し、すれ違いざまにリクの肩をポンと叩いた。
「じゃあ、またね!」
「はい、またっす!」
リクは振り返り、軽快な足取りで廊下を戻っていく後ろ姿を見送った。
完全にその姿が見えなくなると、手元の缶に残ったジュースを最後の一滴まで飲み干す。
「さて、自分は、っと……」
空になった缶をゴミ箱へ放り込み、リクは今度こそラウンジのソファへと歩き出した。




