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第99話 永遠の命とその悲しみ

「確かに不老不死は人によっては魅力的なのかもしれませんね。島田准尉や彼が30歳になったら結婚すると宣言しているグリファン中尉などのように能天気で何も考えない人には理想的な世界なのかもしれません……」


 そう言うリンの表所が急に寂しさを帯びたものに変わったのに誠は惹きつけられた。


「そうですね。島田先輩とかサラさんは基本的に何も考えて無いですから。でも、地球の人達もその力が欲しくて今、茜さん達が追ってる三谷の日雇い労働者を拉致したりしているんでしょ?病気かかってもすぐ直るし、怪我をしてもすぐ直る。どんな放射線を浴びても動き回れるし何しろ永遠に使える時間がある。僕は遼州人でしかも男だから絶対に死ぬしかないんですよ」


 少し諦め口調でそう言う誠にリンは優しい笑顔を浮かべてじっと見つめた。


「でもそれが本当に幸せなんですか?確かに長い時間があるのは良いように見えます。しかし、その時間が楽しいものばかりとは限らない。例えば隊長やクバルカ中佐を見てください。彼等は今は楽しいのかもしれません……でもこれまでもそんな楽しい時間を過ごしてきたと思いますか?」


 リンにそう言われてしまうと誠は黙り込むしかなかった。


 嵯峨は戦争犯罪人として多くの罪を犯し、それを償うこともできずに生き続ける宿命を背負わされている。以前、ランに遼南内戦での彼女の非道な行いは今なお幼く見える彼女の心を蝕み続けている。


 永遠に続くその過去と向き合い続ける時間。誠はその事実を指摘されて黙り込んだ。


「それに隊長もクバルカ中佐も『特殊な部隊』の社会不適合者に過ぎない隊員達に深い愛情を向けている。しかもその多くはいずれ二人より先にこの世から消えていくんです。それはどうしようもない確定事項なんです。それに誠様は耐えられますか?」


 リンの真剣なまなざしに誠の心は重くどんよりとしたものへと変わっていく。


「私は真の従うべきお方として誠様を選びました。その誠様もいずれはこの世を去ります。誠様の居ないこの世界など私にとっては意味がありません。人は死ぬために生まれ、死ぬために行き、そして死んでいく。それが本来あるべき姿なんです。隊長も、クバルカ中佐もそのあるべき姿のレールからはみ出して永遠の贖罪を生き続けなければならない。二人とも愛情を注いだものが死んでいくことを黙ってみていることしかできない。そんな運命を私は受け入れたくはありません。ですので私は誠様と一緒に生き、そして死んでいく運命を受け入れたいと思います……命を救うべき医者の言うべきことでは無いのかもしれませんが私の個人的感想はそれです」


 そう言ってリンは少し悲し気に誠に笑いかけた。

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