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第100話 『ラスト・バタリオン』として生を受けたことを誇る『下剋上』を座右の銘とする女

 二人はしばらく沈黙した。


 不死人。


 この前の会議室でかわされた三谷の日雇い労働者や風俗街の女性達の永遠に続く変わらない日常を押し付けているこの国の仕組み。そしてその仕組みの外にありながら、その過去に永遠にさいなまれることになる嵯峨やラン。


 それは決してかつて地球人が望んだ不老不死と言うものがいかに能天気で考え知らずのものであったかと言うことは理系脳で鈍感な誠にも十分理解できた。


「でも、私は『ラスト・バタリオン』として限りある生を生きる事に満足しています。そして『ラスト・バタリオン』であることはかえで様よりもより幸福なのではないかと考えることもあります」


 そう言うリンの顔はどこか油断ならない曲者が浮かべる笑みに変わっていた。


「なんだか、リンさん怖いですよ、その顔」


 誠は思わずそんなことを口にしていた。


「いえ、かえで様ですが……あの方は不死人ではありません。いずれは老いていきます。女の花の盛りは短いもの……今は美貌で誰をも惹きつけるお方ですが、あと10年もすればあの三谷の日雇い労働者を狙っている地球の超富裕層と同じ気持ちになる事でしょう。容色は衰え、あの自慢の胸は垂れ、お尻の肉も垂れ下がってきます……まあ、あの方は日頃から美容には気を使っていますから普通の庶民のそれに比べれば遅いかもしれませんがそのことは定められたことなのです」


 そう言うリンの目は明らかにかえでを見下すような色を帯びていた。


「その点、私は『ラスト・バタリオン』です。60年間は見た目には何一つ変化は起こりません。ですので、誠様はいつでも22歳の姿のままの私と共に生きていくことが出来ます。あの隊長は女は40過ぎからが魅力的だと言っていますが、それはあの人の個人的な趣向出あって誠様も妻にはいつまでも若く会って欲しいと望まれているのでしょう?」


 リンの勝ち誇ったような笑みに誠は引き気味に苦笑した。


「確かにそうかもしれませんけど……そこまで恩のあるかえでさんを出し抜きたいんですか?」


 つい誠の口を突いて出たのはそんな言葉だった。


「私の座右の銘は『下剋上』です。力ある者が上に立ち、より美しいものが幸せを手に入れる。私は『ラスト・バタリオン』として産まれたことでかえで様より優位に立っているのです。確かにかえで様の事ですからあの地球圏の超富裕層の女性達のように三谷の日雇い労働者を利用して永遠の命を手に入れようというようなことを考えるかもしれませんが、そうすればかえで様はかえで様の唯一認めた男性である誠様に先立たれむなしい永遠の時を生きることになる……かえで様ほど思慮深い方がそのような道を選ぶとは思えません」


 リンのそんなかえでを褒めているのか貶しているのか分からない言葉に誠はリンの底知れぬ恐ろしさを感じていた。

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