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第97話 リンの本当の『ご主人様』

「それでは私が抑えきれぬ『従属本能』を向けている対象がどなたかお分かりになりますか?」


 まるで謎をかけるようにリンはいつもの無表情から人間味のある笑みを誠に向けてきた。


「もしかして……僕……と言うことはありませんよね?」


 少し嫌な予感がして誠はリンに向けてそう言った。


 しばらくの沈黙が流れ、リンの表情はサラに明るさを増した。


「よくお分かりになりましたね。まあ、私のこれまでの行動を冷静に分析すればそれが絶対服従を強制的にその思考に植え付ける『従属本能』のなせる業だということはバレてしまっているかもしれませんが」


 戸惑うこともなくそう言い切るリンに誠は戸惑って作り笑顔を浮かべた。


「でも、僕はそんな特別な存在ではありませんよ。気も弱いし、乗り物に酔うと吐くし……」


 なんとかその場をごまかそうとして慌ててそう言う誠にリンは人間的な優しい笑みを浮かべた。


「かえで様に命じられて誠様の精液採取を行った際……あれほど立派なものをお持ちと言う時点で私の『従属本能』のリミッター解除を行う決意が付いたのです。その時から私は誠様の為だけに生きる存在となりました。ですので、名目上の主人はかえで様ですが、私の真の主人は誠様……あなたなのです」


 覚悟を決めたようにリンは誠に向けてそう言い切った。


「そんな……僕は人に命令したり従わせたりするのはゲーム以外ではやりたくありませんよ!」


 アメリアから聞いていた『従属本能』の恐ろしさを思い出し、恐怖したように誠はそう叫んだ。


「はい、私も誠様がそう言う思考の持ち主であるということは十分承知しております。ですので、誠様の理想を叶えるためにお力をお貸しすることが私の生き甲斐……いえ、存在意味だと理解している。そう言う風に軽く考えていただければ結構です」


 リンの言葉を聞いて誠はリンのこれまでの行動が理解できてきた。


 明らかに社会不適合者の誠の周りの女子から誠を引き離そうと画策し、時には主君であるかえですら性犯罪者と呼んで罵倒することをいとわない。


 そして誠の希望を実現するならばいかなる手段を用いることも何の抵抗も感じることなくやって見せるリンの行動は理性に制御された『従属本能』のなせる業だと考えればすべて説明がつく。


 微笑むリンを見ながら誠の背筋に寒気がするのを感じていた。


「それに私は『ラスト・バタリオン』です。しかも誠様のおかげで法術師として覚醒することもできました。その恩はかえで様に与えていただいた恩に匹敵するもの……いえ、それ以上のものだと私は考えています」


 リンは誠を真正面に見ながらはっきりとそう言い切った。

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