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第96話 消えることが無い『ラスト・バタリオン』の『従属本能』

 リンは微笑みかける誠を見ると流していた涙を拭って静かに息を整えると再び顔を上げて誠を見つめた。


「これからはこのリンの本音をお話しします……他の場所では隊の社会不適合者の馬鹿女に邪魔されるのでこれが良い機会です」


 涙をぬぐい終えたリンは決意を固めたというような表情を浮かべて誠を見つめた。


「誠様は私達『ラスト・バタリオン』には『従属本能』と呼ばれるものがあるということは何度か聞かされておりますよね」


 そうつぶやくリンに誠は静かにうなずいた。


『従属本能』それは戦闘用人造人間である『ラスト・バタリオン』に仕込まれた呪いともいえる思考本能だった。


 それに支配された『ラスト・バタリオン』はその対象となる人物の言うことを絶対視し、一切の疑問も反抗もせずにそれを実行してしまうという非人道的な思考システムだった。


 戦時起動型のアメリアはその『従属本能』から戦後も抵抗を続けたゲルパルトのネオナチの基地で戦闘と兵士の慰安を疑問もなく続け、リンもまた最下層の女郎と言う境遇を甘んじて受け入れていた。


 そのまるでエロゲの催眠のような本能について聞くたびに誠は悲しい気分になった。


「ハイ知っています。でも、アメリアさんもリンさんもそれは解かれて自由になったんでしょ?だったらそんな話今は関係ないじゃないですか」


 誠は今の自由に主人の悪口を平気で言うリンもまた自由を手に入れた『ラスト・バタリオン』のあるべき形の一つなんではないかと思いながらそう言った。


「はい、一応表面的にはそのように見えるように行動することは可能です。ですが、クラウゼ中佐や私のような戦時生産型の『ラスト・バタリオン』の『従属本能』を消すことは脳生理学上不可能です」


 そんなリンの言葉に誠は愕然とした。


 アメリアは誰がどう見ても『従属本能』のかけらもない自分勝手に趣味に生きている女性である。リンは平気で本来は一番に持ち上げるべき存在であるかえでを平然と『社会不適合者』と切って捨てている。どちらを見ても『従属本能』のかけらが残っているようには見えないと誠は思った。


「ああ、クラウゼ中佐がまるで『従属本能』が無いように見えるということですか?それはそう見えるだけで実は彼女はかなりその影響である人物に従うことを本能では望んでいても理性でそれを抑えています。あの人は非常に理性的な方ですから……もしその理性の抑えが取れれば非常に私の『従属本能』の対象者に対してご迷惑をおかけし、女同士の醜い争いをその方にお向けすることになるので助かっています」


 リンはそう言って笑顔を浮かべて誠を見つめた。

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