第92話 段取りよく捜査を進める『斬大納言』
「それではリン、まずは医療器具の入手ルートから調べてみることにしようか。千要で医薬品商社となる……しかもバノンのようなある程度こだわりのある人物が選びそうな大手の所となるとどれくらいあるのかな?」
まるでエンジン音を感じないような高級車の車内の雰囲気は爆音が響くカウラの『スカイラインGTR』のそれとはまるで違った。
「はい、この東和共和国では医療系商社の寡占状態が続いています一位のシェアの『東和メディカル』がそのほとんどを占め、続いて『スズシロ』が二位と言うところでこの二社でほぼ90%のシェアを占めています。恐らくバノンであればそのどちらかを選ぶと考えられます」
車は県警本部の敷地からそのまま国道を出て千要の中心街の片側二車線の道路を北上した。
「そうか、ならばまずは『東和メディカル』から当たるとしよう……場所は?」
かえではまるでゲームでも楽しむような無邪気な笑顔を浮かべて運転に集中するリンを見つめていた。
「はい、点台になります。誠様のご指摘通りこの車はあの界隈では目立つでしょう。幸い、モノレールの駅があります。策佐部から一駅ですのでそちらの近くのコイン駐車場に止めるということを考えておりますがいかがでしょうか」
かなめとアメリアとカウラのにぎやかな言い争いをしながらの推理合戦とは違うどこまでも先を読んだかえでとリンの行動計画に真っことはひたすら感心していた。
「そうだね、そうしよう。それと三人で行くというのも問題がある。それに誠君は少しシャイなところがあるからね。ここは僕が出よう。君達は車で待っていてくれたまえ」
すべてを操るのは自分だ。そんな自信に満ちた表情がかえでの顔に見えた。
「かえでさん……こんなに段取りよく捜査対象を絞り込んだり行動計画を立てたりって……本当に法術関係の捜査は初めてなんですか?あのたたき上げで捜査関係の経験豊富のラーナさんを見ているみたいですよ」
誠は茜の助手を務めるかわいらしい女子警察官のように見えて実は地道な足を使った捜査のプロであるラーナの事を思い出してそう言った。
「ああ、初めての経験だ。ただ、この隊に小隊長として配属されることが決まった段階で甲武で警察学校で一週間ほど研修を受けたんだ。まあ、あまり役に立つものではなかったがその基本とあとは軍学校での情報収集科目での知識を応用しているということかな?君には才能が有るんだ。僕の足りないところがあればいつでも言ってくれたまえ。現場の生の声。僕はお姉さまの愚痴ぐらいしか聞いたことが無い。それでは意味がないからな……それに君の言葉には僕を従わせたくなる魅力がある……」
そう言って笑いかけるかえでの瞳に淫らな欲望の色が見て取れて誠は思わず目を逸らした。




