第89話 不死身のヤンキーはやっぱり不死身だった
誠達はそのまま本部棟の階段を下りてハンガーに入った。そこで三人は意外な人物の姿を見た。
「島田先輩……寝てなくていいんですか?内臓グチャグチャなんでしょ?痛くないんですか?」
乗り入れてきたトラックの荷台を眺めているつなぎの上に派手な刺繍のスカジャンを着た島田に誠はつい声を掛けていた。
「おう、神前か?腹の中が滅茶苦茶でも飯を食わなきゃいいだけじゃねえか。俺は不死人だから餓死はしねえ。だから腹がめちゃくちゃだと腹が減らねえから飯代が浮く。いっそのことこのまんまの方がいいかもしれねえな」
そう言って笑う島田だが、明らかに頬はこけ、顔色は土気色のまさに病人と言った有様に島誠には見えなかった。
「班長!バイクはどこに置けばいいんですか?奥の第三倉庫のいつもフルスクラッチカーを置いてる場所で良いんですか?」
トラックの助手席から降りてきた西が島田にそう尋ねる。
「おう、そこでいいぞ。なんでも今度の異動で高梨さんがまた国防省に戻るらしいからな。次の管理部長が誰になるかは知らねえけど痛くもねえ腹を探られるのは面倒だからしばらくはあそこでのプロジェクトは延期だ。だからあそこに置いておけ!」
島田はそう叫ぶとさすがに内臓の損傷による体力の消耗に力尽きたのかその場に座り込んだ。
「『不死身のヤンキー』が疲れて座り込むとは……落ちたものだな」
そう冷たく言うのはかえでだった。
かえでは誠以外の男には本当に冷酷非情な存在と言えた。彼女自身も『誠君以外の男は僕の性欲を満足させるためだけに存在する道具だ』と公言してはばからないので、誠は多少自分に目をかけてくれている先輩である島田に冷たく当たるかえでの態度には少し引いていた。
「なあに……こんな傷三日もあれば直りますよ……それより俺をがけ下に突き落とした変な宗教の連中は日野少佐達が追うんですってね」
島田は強がるような笑みを浮かべながら自分を見下すかえでとその隣で相変わらずの無表情を装っているリンに目を向けた。
「ああ、そうだ。粗末な持ち物しか持たない島田准尉でも『特殊な部隊』の仲間だからな。敵は必ず取る。それに今月末には僕の機体も来るんだ。それまでにはちゃんと身体を直しておいてもらわないと僕が困る」
相変わらず島田を汚いものを見るような目で見るかえでに誠は口を挟もうとするが島田の目のらんらんと輝くそれを見て口をつぐんだ。
「新型……いや、改良型ですからね。いじりがいがありそうですよ。先週ようやく『武悪』のアクチュエイターと重力制御推進装置の05式互換タイプへの換装が終わったところですから……もういつ来ても良いんですがね……俺がこんな身体じゃなかったら」
島田はそう言うと立ち上がり荷台からクレーンで降ろされる自分の愛車を見つめていた。
「フレームは大丈夫みたいだな……しかしハンドルが……そんなもん直せばいいか……とりあえず気長にやるか」
愛車を見つめながらそうつぶやく島田に何も言わずに立ち去ろうとするかえでとリンの後ろをついて誠は駐車場に足を向けた。




