第88話 リンの助言とかえでの予想する最悪の事態
「かえで様。それと同時に医療関連部材の商社を当たってみましょう。東和は基本的に地球圏からの緊急時のワクチンなど以外の医薬品の輸入を認めていません。ですので、バノンも地球での治療器具を現地で調達する必要があります。それにもしバノンが肝臓癌であるとするならば腹水の排出等の処置を施す必要があります。当然、その際には大量の医療器具が消耗品として必要になります。それを定期的に納入しているとなれば病院よりは医療関連部材を扱っている商社を調べるのも一つの手かと」
淡々とした口調でリンはそう言った。
「なるほど、さすがリンだ。医薬品を扱う商社はそれほど数があるわけではないからね。ただ、民間の医療機関でもそれらをバノンが大金をちらつかせて強引に購入することも可能だ。公的な診療機関……国立病院や大学病院は別としても民間病院を一通り回ってそちらの医療器具の管理を担当している人物に会ってみるのも必要になるかも知れないね」
ここで初めてかえでが満足げな笑みをリンに向けた。
「私の足りない知識を補っていただき恐悦至極に存じます。このリン、必ずやバノンの行方をつきとめて見せます」
静かに頭を下げるりんに笑顔を向けると今度はかえでは同じよな笑みを誠に向けてきた。
「やっぱり誠君の言う通りなんだね。結局、捜査は足で動かない事には何も始まらない。これまで僕やリンが話したこともこれまで分かっている事実を勘でつなぎ合わせて捜査対象を絞っただけだ。もし、バノンが米軍とのつながりがあり、遼帝国の米軍基地から『租界』を経由して必要な医療器具を手に入れていたとしたら僕達はどうすることもできない。ただ、そうでないという幸運が僕達にあれば僕達はバノンにたどり着ける……島田准尉には悪いが今はその程度の事しか僕達には出来ないんだ」
かえでの笑顔に誠は笑いかけた。そしてかえでの言う最悪の事態である米軍とバノンがつながっている場合を想像すると誠の背に冷たいものが走った。
「ただ、米軍がバノンと繋がっていたとした場合……バノンは米軍に利用されているということなんだろうな。米軍は男性は不死人に慣れないということを十分に知っている。その情報を米軍がバノンに伝えていたらそもそもバノンは死期を早めてまでこの遼州圏までの長い亜空間シャトルでの移動などしないはずだ……僕が考える限り、米軍がバノンと繋がっている可能性は限りなく低い……大丈夫さ、きっと僕達はバノンにたどり着く。そしてバノンが島田准尉に何をしようとしているかもそれで明らかになる」
そこまで言うと晴れやかな顔をしてかえでは立ち上がった。




