第85話 アメリアの異議、茜の黙認、かえでの我慢、リンの思惑
「えー!なんで私が誠ちゃんと一緒じゃないのよ!第一小隊の捜査の統括はどうせ茜ちゃんがするんでしょ?じゃあ私は必要ないじゃないの!もしかして私を意地でも誠ちゃんと引き離したいわけ?」
急に立ち上がり机を叩いてアメリアは激しい口調で抗議した。
「正直申し上げてその通りですわ。クラウゼ中佐。あなたには誠君をネットオークションで誠君を淫らな道具として売り渡そうとした前科がありますよね?それに日野少佐と妙な約束をして隊の風紀を乱そうとするようなことを平気でする。そんな人を将来有望な誠君の蕎麦に置いておくことなど私には出来ません」
茜は冷たくそう言い切った。
「それならかえでちゃんが誠ちゃんといつも一緒にいるのはどうして認めるの?かえでちゃんはまだ逮捕はされてないけど全裸徘徊や未成年の女の子に自分のあられもない姿を見られることが大好きな露出狂よ!それに何度となく誠ちゃんを襲った前科がある。それに一緒にいるリンちゃんも毎晩誠ちゃんへの夜這いを繰り返している。これが隊の風紀を乱すことじゃなくて何が隊の風紀なのよ!」
激しくそう言い返すアメリアだが茜はアメリアに視線を合わせることもなく手元の書類の整理を始めた。
「かえでさんは誠君の『許婚』です。これは双方のご両親も認めています。かえでさんのそう言った非行の責任は『許婚』である誠君の問題……つまり未来の夫婦間の問題です。他人が立ち入る事ではありません。それにかえでさんはお父様やクバルカ中佐に今後このようなことをしたらその『許婚』の地位を取り上げると強く言われています。それにこのところ勤務中はかえでさんはそのようなみだらな行為に走ることは無いとも私にも話していただけました。私はかえでさんを信じておりますの」
そう言って茜は敵意むき出しの目でかえでを見つめた。
「そうだね、僕は誠君一筋で生きることを決めたんだ。だから、そのためには好みのすべてを犠牲にしても惜しくないよ。目先の欲望などに負けるほど僕は精神力の弱い人間ではないからね。それより僕はリンが心配だ……リンは有能だが手段を選ばないところがある……リン、あくまで勤務中は誠君に手は出さないように。まあ、勤務中以外は僕は君に干渉するつもりはないけれどね」
かえでもまたあっさりと茜の言葉にそう返す。そしてその視線を誠の向こうに座るリンに向けた。
「かえで様のご意向とあればそれに沿うように努めます。これも日野家家宰の務め……その辺はご安心ください」
そう言ってリンはいつもの無表情に人工的な笑顔を作って誠の顔を見つめた。
『すべての僕の意志はこの女性達には無視されるんだ……僕の存在って……僕の立場って何なんだろう?』
誠は日に日に弱くなっていく自分の立場に呆れながら会議が終わり資料をかたずけ始めた一同に合わせて席を立った。




