第84話 地球人が法術師になれるのは女性だけと言う現実
「はい、遼州人の法術師の能力の移譲は男性の法術師から女性の非遼州人の女性に対してのみ可能です。これは米軍がかなりの徹底した研究を行ったので明らかになっていますが、法術師の男性の精液をいくら男性の地球人の直腸に長期間吸収させてもそのような現象は起こりません。それと先ほどのカルビナ巡査のバノンの状態を見るにそれは典型的な肝臓の異常……すでに臓器移植では対応しきれないほどに進行している可能性が高いと考えられます。『神聖聖書協会』の教義については私は深くは存じ上げませんが多くの宗教では医学的処置が禁秘とされていることから考えるとバノンはその状態になるまで臓器移植を拒否していた可能性が高いですね。初期の肝臓異常であればその部位の切除により治癒可能ですし、それが癌であったとしても臓器移植や最悪サイボーグ化などによる延命が可能なのは東和も地球も同じです」
リンは淡々とそう言って周りを見回す。
一同はかえでとリンの見事な状況分析に拍手でもしかねない勢いだった。
「なるほどねえ……地球人の男は後天的には法術師にはなれねえわけだ……すると地球人の女は全員お蔦みたいになるのか?そしたら地球は大変なことになるぞ」
思わずそう言ったのはかなめだった。
「かなめ姫。その女性にも条件があります。その女性は初潮を迎えた後から閉経数年前までの女性に限定されます。その時期に大量の法術師の精液を子宮に流し込まれるという状況下に無い限り法術の転移の可能性はゼロです。ですので今、地球圏でその条件に当てはまる政治指導者は5人に満たない……それが現状です」
こんどもかなめの言葉をあくまで理論で屈服させるところがいかにもリンらしいと誠は感心していた。
「じゃあ、僕には『光の剣』は使えないんだね……」
突然かなめの隣の席で落ち込んだようにそうつぶやいたのはアンだった。
「はい、元々女性だった場合。例えサイボーグであってもその現象は起きますが、男性が女性型義体を使用して同じ状況下に置かれてもそのような現象は起きない……まあ、アメリカもなんでこんな奇妙な研究をしていたのかひよこ軍曹からその話を聞いてアメリカの軍の法術研究の専門書を取り寄せて読んでみた時には正直呆れました」
自分は誠から誠の合意もなく採取した精液で誠の法術『干渉空間』や『光の剣』を使えるようになった割には冷淡にリンはそう言ってアンを同情の視線で見つめた。
「そんな話はどうでもいいんです!それよりも今回の捜査は二手に分かれて行います!三谷の事件は第一小隊と私、ラーナ、それにクラウゼ中佐が担当します!」
茜はそう言っていかにも誠と一緒の班の捜査になると決めてかかっているような表情だったアメリアをにらみつけた。




