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第83話 死を悟った『神になろうとした男』のすがるもの

「カルビナ巡査。思わせぶりな態度は君の魅力を損なうよ。君はかわいらしさとその口調の人懐っこさが売りなんだ。隣のお堅い誰かさんのように寂しい人生を送りたく無ければその所を考えた方がいい」


 そう言ってラーナを見つめてにこやかな笑顔を浮かべていたのはかえでだった。その当てこすりに近い言葉にラーナの隣で青い瞳で茜はかえでをにらみつける。


「恐らく、スティーブ・バノン本人はすでにラップ共和国の入管を超えて東和に向っている……いや、もうすでに東和に来ているのかもしれないね。ちなみに東和の星間シャトルの使用可能な空港として彼が向かったのは……大田かな?それとも成畑かな?」


 かえでは全ては分かり切っているという口調でそう言うのでそれまで女性を惹きつけてやまない美貌のかえでに見とれていたラーナは我に返って資料のメモを見返した。


「さすが日野少佐っすね……バノンが向かったのは大田です。ただ、一昨日空港に着いた後はまるで滞在地を知られるのを嫌うかのように姿を消したんっす。東都の五段田にある『神聖聖書協会』の東和本部にも姿を見せていないんっす。一体どこにいるのやら……」


 さすがに警察関係にはパイプの太いラーナでもそこまで追うのが精いっぱいの様だった。


「いや、そこから先は僕達が追おう。それより、これも僕の推論なんだけれど、その時のバノンの健康状態はとても見ていられないような状態だったんじゃないかな?これも入管の担当官の話を聞くこと位考え付くカルビナ巡査なら分かっていることだと思うけど」


 まるでゲームを楽しむかのような調子で放たれたかえでの言葉にラーナは驚いたような顔をした。


「そこまで分かってるとは……アタシの価値が無くなっちゃうっすよ!確かに、その時のバノンは一人で歩ける状態ではなく数人の信者が抱え起こしてようやく入国検査が出来たという程度の状態だったそうっす。しかも、パスポートはまるで別人のような紫色に変色した顔をしていたとか……そのことから日野少佐はバノンの目的が何かを分かるっすか?」


 ラーナの挑戦するような笑顔に向けてかえでは相変わらず大きな胸の前に腕を組んで笑っていた。


「そんなことは簡単さ。要は三谷の日雇い労働者を拉致している超富裕層の女達と同じ理由……しかし、バノンは男だ。彼には永遠の命を手にする資格は無い……リン?それで良いんだね?」


 そう言ってかえでは全てを見通したというように誠越しにリンの方に目をやった。

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