第82話 急増した入国者、身近な宗教家
そんな発言をしたかなめにラーナは得意げな笑みを浮かべて画面を切り替えた。
「その質問、たぶん西園寺大尉かベルガー大尉がしてくるとは思ってたっす。当然、理由もありますしその辺の調べも抜かりはないっすよ。アメリカと国交のある遼州圏唯一の国である『ラップ共和国』の入国管理局に調べはついてるんすよ。ああ、普通はそんなこと教えてくれないだろうって聞きたい顔してますね。そこはそれ、捜査上の秘密って奴で……」
画像に移されたのはラップ共和国の入国データだった。それまでほとんどゼロに近かったアメリカからの入国者の数が去年の11月から急激に増加しているのが分かる。誠が目を凝らしてみれば先月は5万人の入国があったとその折れ線グラフは示していた。
「でも、そのタイミングは神前による『光の剣』の展開で法術の存在が公になってからだろ?だったら民間人に偽装した軍人や法術研究者の数が増えたとは考えられないだろうか?事実、あれ以来日本語を話せない白人をこの豊川でも見かける機会が多い。ゲルパルトや外惑星なんかの遼州圏内からの観光客なら日本語ぐらい話せるはずだ。もっとも、遼州圏の人間なら東和でもこんな見る者の何もない豊川の街なんかをうろつくはずはないがな」
カウラの言葉に隣に座るかなめも腕組みをして大きくうなずく。
「いいえ、それはだけではこの増加数は説明がつかないと思います。元々、アメリカは法術の技術においては東和に匹敵すると公言しているんですから。今更軍関係者が遼州圏に誰にでも分かるような方法でこんな数やってくるようなことは考えられません。大学や、民間研究機関の人数と言っても数千人増えるのが限界でしょう。興味本位の富豪たちが大半……それにしてもラップ共和国は遼州圏への玄関口としてその高い入国料で国家の財政を維持しているんです。そう考えると組織的、かつかなりの資金を持った宗教団体の意向と考えるとこの数はつじつまが合います。事実、『神聖聖書協会』の車はこれだけ頻繁に見かけるほど走っているんですから。カルビナ巡査、陸運局などのデータもあると裏付けが取れると思うのですがどうでしょうか?」
さすがに医師と言うだけあってリンの考え方はあくまで理論的で先を見据えたものだった。
「さすが渡辺大尉。抜かりはないっすよ。東和国内……しかもこの千要県の陸運局に3か月前に大量の新車登録が『神聖聖書協会』によって行われているっす。明らかにこれはこの千要県で何かを『神聖聖書協会』がやろうとしている……しかし、それは元々宗教を信じるつもりのない遼州人に対する布教を目的とするものではない……じゃあなんっかね?」
そういってラーナが笑うのに呆れて全員がその童顔のそばかす顔をみつめるだけだった。




