第80話 神になろうとした富豪
かえでの問いに茜は青い目を隣のそばかすのラーナへと目を向けた。それは明らかに馬の合わないかえでとは口もききたくないという茜の心が見えてきて誠は少し悲しくなった。
「それでは説明するっす。『神聖聖書協会』ですが、これはアメリカで発祥した新興宗教っす。教祖はスティーブ・バノン。彼は元々テルアビブ出身のAIシステムの開発企業グループを所有する大富豪で後にロサンゼルスに拠点を移したんっす。まあ、中東は度重なる核戦争で酷い放射能汚染でちょっと下油断で被曝するような有様っすからまあ、ユダヤ人の超富裕層にはよくあるパターンっすね」
手元の端末を操作してラーナは一人の金髪の太った中年男性の顔を会議室の大モニターに映して見せた。
「ひでえ修正だな。こんな写真から本人を特定するのか?まあ宗教の教祖なんてやってる奴だ。自分を立派に見せようとする気持ちは分からねえでもねえが……やりすぎだろ」
かなめは画面に移された男の妙に人工的にも見える顔を見てそうつぶやいた。
「西園寺大尉、話の腰を折られても困るっすよ。この教義の特徴は『旧約聖書と新約聖書の融合』要するにキリスト教徒とユダヤ教を一つにまとめた宗教を作る……まあ、そんなことが出来るなら最初っからこの二つの宗教が分かれてる意味なんて無いって思うんすがね。まあ、カトリックのキリスト教徒とユダヤ教徒でなおかつ白人であることが選挙権を与える最低条件である『ネオアパルトヘイト』を掲げる今のアメリカでは受けそうな教えっすね」
ラーナはそこまで言うと場の明らかに興味を失ったような一同の顔を見て大きくため息をついた。
「確かにこの東和では宗教なんて葬式とお盆と法事しか意味無いっすし、私の生まれた遼帝国でも秋に収穫を感謝する祭りのときにこの星に『始まりの鎧』に乗って私達遼州人を連れてきた神に感謝するくらいっすけど地球人には神様の存在は自分の命より大切なものなんすから!今でも私の国の東モスレム地域ではイスラム教徒が自爆テロとか平気でやってるんっすよ!宗教がいかに地球人に私達遼州人には理解不能な行動をとらせるかをちゃんとわかった上で行動してくれないと困るんっす!」
明らかに自分達には関係無いという顔をしている誠達にラーナは腹を立ててそう叫んだ。
「要するにテック企業のお金持ちが政治と経済を牛耳るだけじゃ飽き足らなくなって神様になろうとでも考えた訳ね……お金を持つと地球人はどこまでも欲深くなれる典型と言う奴。私もこういう話を聞くと地球人の遺伝子を自分が継いでるのが恥ずかしくなるわ」
アメリアは彼女なりにそう理解したというように静かにうなずいた。




