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第77話 永遠の生存と言う名の牢獄に押し込められた不死人

 誠も三谷の存在は身近なものだった。日雇い労働者の簡易宿泊所が並ぶ三谷の街は誠の実家からもそう遠くはない。


 実際一度昼間に行ったことがあるが、そこはとても経済大国東和とは思えない世界が広がっていた。


 道行くのはどう見ても25歳前後の若者が無精ひげを生やし昼間から酒を飲んでその足元はふらついていた。簡易宿泊所の間にある飲み屋は昼間から開いていてそこに張り出された食べ物や酒の値段は物価がこの400年間まるで上がっていない東和だとしてもあまりに安かった。


 そして辻々には派手な化粧をした若い女が立っていた。道行く小汚い若者が声をかけると二人はどこかへと消えていく。


 そんな女の一人に声を掛けてきた。彼女は指を一本立てて誠に微笑みかけた。


 彼女がいわゆる『立ちんぼ』と呼ばれる売春婦だと思った誠はそのまま踵を返して三谷を出た。


 そんな東和から取り残された街。『租界』が政治的に意図されて作られた地獄なら、格差が少ないことが自慢のこの国にも残る格差を象徴する街が三谷だった。


「三谷ねえ……確かにあそこは法術師だらけ……いや、不死人だらけだな。あそこに住んでる日雇い労働者……そのほとんどがこの国が近代化される以前に産まれた不死人達だ。当然、教育なんか受けてないから履歴書も描けないから就職先もなってことであそこに集まる。あそこなら若い身体一つあればいくらだって稼げるからな。でも、ろくに教育も金の価値すらわからねえそいつ等は貰った金をすべて酒とあそこ当たりの立ちんぼや吉原の安風俗のこちらも同じような境遇の風俗嬢相手に使っちまう。だから永遠にあそこから抜け出せねえ……ただ永遠に続く同じことの繰り返し……死なないことが罰でしかない場所があそこだ」


 かなめはこれまでの喧嘩腰から真剣な表情でそう語った。


「西園寺さん、よくご存じですね……僕もあそこには一回行ったことがあるんですけど歩いている人がみんな若いんで驚きました。全員が不死人……だから年齢がどう見ても隊長ぐらい……」


 誠はあの街の若者たちのほぼすべてが不死人であると考えればあの雰囲気にもなぜか納得がいった。


「たぶん、かなめお姉さまは非正規部隊時代にそのことを知ったんでしょうね。三谷は地球からのバックパッカーには人気がある。そしてそのバックパッカーには地球圏の東都戦争で戦うための特殊部隊の兵士達も混じっている。ええ、この国が地球との密約で法術の存在を隠し通そうすれば法術師に存在する不死人の存在も世間から見えなくする必要がある。この星に遼州人が来て1億年。この島国には多くの不死人が生まれた……それが5年に一人しか生まれない程度のレアな法術だとしても2000万人の不死人が存在することになる。その多くは文字も持たない地球人来訪以前に産まれた人たち。彼等に近代的な仕事などできるわけもない。男性は単純労働。女性は性産業。彼等にはそれ以外の生きるすべがなかった……そして法術の存在を隠すためにこの国はその状況を意図的に作り出した……そしてそこに目を付けたのが今回の地球圏の法術の最重要機密を知ることが出来るレベルの超富裕層の有力者の女性……私はそう考えております」


 そう言う茜はいかにも厳しい口調で誠達を見回した。

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