第73話 島田を狙う『神聖聖書協会』
それは白いバンが明らかに島田のバイクに対してがけ下へと追い落とそうと幅寄せをしてくる映像だった。
「こいつは酷いな……完全に島田を殺すつもりだ」
カウラの言葉に県警の交通課の下請け仕事で危険運転の映像を見慣れている誠、かなめ、カウラ、アメリアは別として、本務の看護師としての仕事と法術研究の状況調査ばかりしているひよこはショックを受けたように口に手を当てて泣きそうな顔をした。
「次の瞬間だ。いくら不死人で死なねえからってそんなにバイクが大事なのかよ」
呆れるようにかなめが言うと同時にヘルメットは急にバイクから離れてそのままがけ下に転落していく映像になっていった。
「ちょっと、かなめちゃん。さっきの幅寄せのシーンで島田君が相手のこの白いバンの横を見るところ……もう一度映してくれない?」
いつにもない真剣な表情でアメリアはかなめにそう言った。
「オメエも気付いたか……最近よく見かけるマークだ……あんなのに島田は追い回されていたのか……」
かなめはうなずくとそのまま画像を切り替え、島田のバイクに向けて白いバンが幅寄せしてくる場面が画像に映る。
「たぶん次……そこで止めて!」
アメリアの言うまでもなくかなめはその大写しされた十字架の下に誠も見たこともない不思議な文字の書かれた赤いマークが大写しになっていた。
「なんです?このマーク……十字架となんだか変な文字が並んでるデザインの紋章……確かにどこかで見たような……分かります?カウラさん」
誠は隣のカウラにそう尋ねるがカウラは静かに首を横に振った。
「なんでそこでネットと脳が直結されてるアタシじゃなくて生身のカウラに聞くんだ?この文字はヘブライ語。『神は宇宙を我々に与えたもうた』と日本語に訳すと書いてある。最近、アメリカで流行りの新興宗教『神聖聖書協会』の紋章だ」
かなめは知っていて当然という口調で誠達に向けてそう言った。
「ああ、あの団体ね。確かにあそこなら島田君を襲いかねないわね……公になっている不死人で一番捕まえやすいのは島田君だものね」
アメリアは訳知り顔にそう言うが誠には何がなんだかよく分からなかった。
「なんです?その『神聖聖書協会』って言う団体。それとなんでそこが不死人を捕まえたがってるんですか?確かにうちの法術師はネットにも散々さらされてるんで僕も迷惑してるんですよ」
誠はどこで漏れたか分からないが『特殊な部隊』の法術師全員の能力が先月辺りからネットに晒されてその事で趣味のプラモやイラストを載せていたSNSにやたらと訳の分からないダイレクトメールが来るので辟易しているのは事実だった。
「なあに、神前なんかはまだマシな方さ……地球圏から違法アクセスして来る連中の狙いは不死人……特に反撃能力が地球人でも対応できるレベルの島田は連中にとっては良いカモなのさ」
かなめはまるで騒動が大きくなることを望んでいるかのように笑いながら誠を見つめた。




