第72話 事故……あるいは事故に見せかけた犯罪
「眠ったか……ひよこ、島田はどうなんだ?」
ダウンジャケットを羽織ったかなめは冷静にひよこにそう尋ねた。早朝、島田の寮長の部屋の前には誠、かなめ、カウラ、アメリア、そして深夜に携帯でたたき起こされてタクシーでやってきたひよこの姿があった。
「とりあえず私の『ヒーリング能力』で身体の修復は完了しました。ただ、あれだけの失血は不死人だとしても通常の生活を送れるようには数日はかかると思います。特に消化器系の損傷がひどかったのでたぶん今日一日は何も食べられませんし何も飲めません。まあ、あの状態でしたらたぶんその間は眠ったままだというのが私の見立てですが」
ひよこは静かにそう言うと心配そうに島田の部屋のドアを見つめた。
「島田があんな傷を負う……ライダーズスーツを脱がせたときに見たその破れ方からしてバイクで転んだというわけではない。明らかに何か太いものが腹に突き刺さったという感じに見えた……一体アイツは何をしたんだ?」
カウラは不思議そうに全員を見回しながらそうつぶやく。
「そうよね……あのバイクにだけは自信のある島田君が転んだりするわけないものね。しかもあれだけ楽しみにしていたレストア官僚直後の愛車。無茶な乗り方をするなんて考えられないわ」
同意するようにアメリアはそういってうなずいた。
「ああ、その件だが、アイツのヘルメットに付いてるドライブレコーダーを見てみたんだ……」
かなめはそう言うと静かに歩きだした。誠達はその後ろをついていく。
サイボーグであるかなめが有線でひよこが『ヒーリング能力』で島田の治療をしている間に島田のヘルメットから情報を抜いているのは誠も見ていた。
そのまま一同は二階の『図書館』。かつては『男のエロの殿堂』と呼ばれていたが、誠の護衛の為にかなめ、カウラ、アメリアが済むようになってアメリアが大量の18禁同人誌を持ち込んだため、『男女のエロの殿堂』と化した、ゲーム機とゲーム用端末の並ぶ部屋へと誠達は到着した。
「モニターに電源を入れろ……アタシの見た限り島田の怪我は事故なんかじゃねえ。犯罪だ」
誠はかなめに言われるままに一番大きなモニターの電源を入れた。かなめは首筋からコードを取り出すとそのままモニターの画面取り込みジャックにそれを刺した。
「犯罪?当て逃げにしてはあの傷は不自然だぞ」
カウラはそう言うがかなめは黙ってみていろと言うようにそちらを一瞥した後、画像を表示させた。
山道を走る映像が映る。道路状況は極めて悪いのが誠にも分かった。
「こんな山道を走ってたの?それじゃあ、島田君の事だから勝手に落ちて倒木にでも突き刺さったのかしら?でも島田君のテクニックならそんなことはあり得ないわよね」
アメリアがそう言った瞬間に白い大きな物体が画面に現れたのを見て一同は息を飲んだ。




