第264話 食事は進み……身体を張って最高の原材料を自分の身体を使って提供したかえでは笑った
最初にかえでが運んで来たのはポタージュスープだが、明らかにかえでの母乳が多く使われているのは間違いなかった。
佐藤が一緒に運んで来たミルクの香るパンもまたかえでの母乳が多量に含まれている味がした。
『そう言えば、このごろ突然かえでさんとリンさんが姿を消すことが多かったな。そしてその度に小さな保冷のビンを持って帰って来た中身はかえでさんの母乳……それが今こうして目の前にあるわけだ……』
前菜の羊肉のミルククリーム煮を食べながら誠はそんなことを考えていた。
「誠君、あまり君はフォークやナイフの使い方が上手くないみたいだね……何なら箸を用意しようか?」
誠の隣に座って誠が自分の母乳をたっぷりと使った料理を食べている様を満足げに眺めていたかえでが笑顔でそう言った。
「いいえ、西園寺さんが言うにはこういうのは慣れが必要みたいなんで……がんばります」
何気なくそう言った言葉にかえでの表情が曇った。
「姉さんの話はしないでくれるかな?あの人にはデリカシーと言うものが無い。どうせ、誠君の意志を無視して洋風の料理を食べられて一人前の軍人だとか言っていたんだろ?あの人らしい愛情表現だが……見ていてもどかしくなる。それに、僕は君と食事をするのは楽しみにしているがその時に無理やり慣れていないフォークやナイフを使えなどと言う気の利かないことはしないよ。君は東和人だから端の方が慣れているんだろ?だったら、その店のシェフに行って箸でも食べられる大きさに切ってもらうような気遣いは当然の話なんじゃないかな?」
かえではそう言って今は喧嘩中の姉の欠点を指摘して自分の気遣いの売り込みにかかった。
「でも、そんな事って出来るんですか?」
誠が前菜を食べ終えるのを見るとリンと佐藤がこれもまたかえでの母乳をたっぷりと使ったステーキにたっぷりとクリームソースをかけた誠の見たことも無いような料理を運んできた。
「僕の乳と絡み合う最上級の和牛の脂を楽しんでくれたまえ。きっと君のこれまで食べた最高の肉料理になることは請け合いだ。僕はその為ならどんな努力をしてでも乳を君に捧げ続けるよ」
どんな顔をすれば分からないような言葉を口にする笑顔のかえでを一瞥して、確かにおいしそうに見える大きな皿に誠は目をやった。
ナイフはすんなりと肉に入り、肉の脂と白いかえでの母乳を材料としたソースが絡み合う。
誠は恐る恐るその一切れを口に運んだ。
正直おいしかった。
これまで食べたどんな肉料理よりもおいしかった。そしてそのことで漏れる笑みでかえでが最上級のほほえみを浮かべて誠の顔を見つめてくる視線が最高に痛かった。




