第262話 あどけない表情のかえでが運んで来たグラス
「やあ、ごきげんよう。今日はずいぶんとゆっくりなんだね」
厨房から誠を見つけてかえではそう言って誠に歩み寄ってきた。その手には一杯のビールの中ジョッキほどの大きさのグラスが握られている。
「おはようございます。いつもの僕の料理を作ってるんですか?でも大変ですね、こんな朝早くからわざわざ」
誠は笑顔で誠のテーブルの前にグラスを置くかえでに向けてそう言った。
「そんなことは無いよ。君の為なら僕はどんなことも楽しみに帰ることが出来るんだ。こうして君に尽くせるのは僕の最高の喜びなんだ。ああ、リン。まずは一口目が大事なんだ。口の中を奇麗にするために水を持ってきてくれたまえ」
かえでは笑顔でリンにそう言うとリンは飲みかけの誠の前のコーヒーを持ち去っていった。
「でもかえでさんみたいな奇麗な人にそんなことを言われるなんて……正直照れてます」
本心からそう言うかえではエプロンを外して隣のテーブルに置いた。相変わらず巨大に過ぎるかえでの胸が今日はさらに大きく見えるのは気のせいだと誠は思うことにした。
「でも、かえでさん……朝から牛乳ですか?これってかえでさんの健康法か何かなんですか?」
誠は目の前に置かれたどう見てもなみなみと牛乳が入っているように見えるグラスを見ながらそう言った。
「ああ、これは牛乳ではないよ。今朝搾りたての一品だ。これからは毎日これで君が楽しい朝を迎えてくれると嬉しいんだけどな」
あどけない笑みを浮かべるかえでを見て誠もつい引き込まれるように笑顔になる。
「お待たせしました、水になります。かえで様のお気持ちのこもったものですのでしっかり口の中のコーヒーの香りを消してからお召し上がりください」
いつの間にか隣に立っていたリンはそう言って水の入ったグラスを誠に手渡した。
誠は水を飲みながら目の前のかえでが言うには牛乳ではない白い液体に目をやっていた。
「じゃあ、ヤギのミルクですか?ヤギのミルクって独特の癖があるって聞きますけど……」
じっと白い液体を眺める誠をかえでは微笑んで見つめている。
「いいや、それも違うね。もっと美しいものの出す乳だよ。たぶんこれを飲めばそのものを君はより身近によりいとおしく感じることができるようになる。これからも毎日僕もそのために十分準備をして体を整えておくつもりだ。期待して飲んでくれたまえ」
かえでは相変わらずのさわやかな笑顔でそう言うとその大きすぎる胸のあたりを軽くさすった。
「じゃあ、……いただきます」
誠は悪いことは決して言わないかえでがそれほど進める以上悪いものでは無いのだろうと信じてグラスを手に取った。




