第261話 邪魔者を追い出してまでかえでが作る『料理』と謎の材料
誠が目覚めると窓からの光の強さから言ってかなり日が昇ったような時間だった。
「今日は休みだからな……西園寺さん……何時に帰って来たんだろう?それとリンさんが昨日は夜這いに来なかった……西園寺さんはその時間までには帰って……でも銃声で起こされることが無かったからそもそもリンさんは夜這いをかけなかったのかな?」
そんな独り言を口にしながら誠は着替えを済ませると食堂に遅い朝食を取りに行った。
「これは、誠様。おはようございます」
食堂にはただリン一人の姿しかなかった。他の寮母と称する事実上のメイドの人達の姿も、誠にちょっかいを出すべくこういう時は待ち構えているアメリアの姿も無かった。
男子の隊員は菰田以外はほぼ全員が整備班員であるここの寮生はこのところは隊に泊りっきりで『武悪』の機動部品の調整作業に当たっている。
「ああ、リンさんおはようございます。他の人は?」
男子隊員が全員隊に泊まり込みと言っても、誠をからかうことに生きがいを感じているアメリアがこの場に居ないのは不自然だし、今日は日曜日でランからパチンコに行くのを禁じられているカウラが暇を持て余してかえでがオーナーになってからは備え付けられるようになったカウラお気に入りのエスプレッソマシンでコーヒーを飲んでいないのもあまりに不自然だった。
「はい、邪魔な二人の女のことですね。まず、アメリアさんには有落町での人気落語家の落語会のプラチナチケットをお譲りして追い出すことに成功しました。また、かうらさんですが、クバルカ中佐には絶対見つからない穴場のパチンコ屋が本日オープンだと伝えるとこちらも出て行きました……邪魔者は居ませんのでごゆるりと……」
いかにも腹黒いリンらしい言い草に誠は半分呆れながらそのまま椅子に座りちらりと厨房に目をやった。
そこにはシェフの佐藤の他にかわいらしいピンクのエプロンに妙にきっちりとしたジャケットと言う料理をするには不自然な格好をしたかえでが居た。
「かえでさんが料理……珍しいですね。何を作っているんです?」
誠が椅子に座るとリンはエスプレッソマシンでコーヒーを作って誠の前に置くと誠の真正面に腰かけた。
「はい、かえで様自ら用意されたこの日の為のミルク料理をおつくりになられています。きっと誠様にもお気に召してこれからも週にに一度はその材料が用意できるだろうからその試食をしていただきたいとのことです……まあ、かえで様にはその材料を作るくらいの能力しかないとは私は思うのですが……かえで様は完全に材料供給に徹していただければ私がより誠様のお口に合うものを用意して差し上げるのに……」
リンは誠の理解できないような言葉を口にした。
「かえでさんが材料供給?ミルク料理じゃなくってジビエじゃないんですか?」
誠はまったくリンの言うことを理解できずにそんなことを口にした。




