第256話 関白監督の暴挙
「ああ、うちは『武悪』なんていうテロリストの手に渡ると飛んでもねえ機体があるだろ?それを理由に今度『警備部』と言う基地警備専門の部が出来るんだ。島田の野郎もあんなに手のかかる機体の整備に加えて基地の警備の人出まで割ける勝手前々からぐちってたからな。そいつ等を甲武から呼び寄せた。ちなみに部長代理はアタシが兼任する……なんか文句あんのか?そのツラ」
ビールを注ぎ終えたかなめは誠に向けてそう言ってにらみつけてきた。
「西園寺さんが呼び寄せる……しかも野球絡み……なんかものすごく高梨部長に迷惑をかけた予感しかしないんですけど」
思わず誠はそんなことを口にしながら早速豚串を口にした。
「なんだよ、うちのチームの明暗がかかってんだぞ?チームの顔のエースがその態度とは監督として泣けてくるぞ。そのメンバーだが、全員で12人。全員が去年の甲武中等学校野球大会で活躍したぴちぴちの原石ぞろいの集団だ。中には数名、私立高校が奨学金を出すから欲しいというような逸材も混じってる。これでうちが基地を留守にして長期任務に就いても問題はねえ……あの実質不戦敗みたいな補欠ばかりの雑魚のおかげで去年は4敗もしてるんだ。それが全部勝ちに変われば今年の5位と言う順位は無かった。監督として戦力補強に勤める。プロとしては当然だろ?」
かなめはいかにも自分の手柄のように誇らしげにそう言った。
「あのー、いつからうちはプロチームに昇格したんですか?たかが草野球ですよ……そんなに無茶を……それにその人材を引き抜いたお金とか……ああ、西園寺さんが全部出したとか言うんですか?」
誠は全てがかなめのわがままによるものだと理解してため息をついた。
「プロじゃなくても都市対抗の常連のチームじゃ当たり前にやってる程度の補強だ。隣の工場の工場長の武田さんと話をしたら、なんでも本社が金をくれないから今年も隣の工場の本物の野球部には補強選手は一人もいないんだそうだ。でもまだあのチームが都市対抗の常勝チームだった時の寮の建物は買い手もつかずに残ってるそうだ。そこをアタシが買った。『警備部』の連中は基地から徒歩3分の工場の敷地内のその寮に住まわせる。ちゃんと賄のパートのおばちゃんとか、専門のトレーナーなんかは武田さんが手配してくれた。かえでの奴が男子寮のオーナーならアタシは野球部のアタシ等が出ないときの補強選手の寮のオーナーだ。あんな姉を姉とも思わねえ人でなしにオーナーが務まるならアタシにできねえ話じゃねえだろうが」
かなめはそう言うといつも通り葉巻を吹かして得意げに誠を見つめてきた。




