第248話 不穏な歓送迎会
店につくと縄暖簾の前には先に出ていたかなめ、カウラ、アメリアの姿があった。
かなめは誠の顔を見て照れたような笑みを浮かべた後、その隣に立つかえでに敵意そのものと言う視線を投げると引き戸を開けて店内に入った。
「あんな態度無いんじゃないかしら……かえでちゃんも気にしないでね?どうせ単純なかなめちゃんのことだからそのうち機嫌も直るわよ……でも誠ちゃんは渡さない」
笑顔でそう言うアメリアに続いて無言でカウラも店内に消えていった。
「僕達も入ろうか……今日は『特殊な部隊』を本当の意味で『正義の守護者』に変えるための下準備をしてくれた『隠れた英雄』を送り出す晴れの日なんだ……つまらないことでその席を穢したくない」
かえではそう言って誠を見つめて笑顔を浮かべるとそのまま店内に入った。
「いらっしゃい!」
そう言って出迎えたのは久しぶりに見る小夏の姿だった。
これまでの中学校の制服ではなく千要県でも有力な進学校である千要東高校の制服に身を包んで得意げに笑う小夏の姿に誠は安堵の表情を浮かべた。
「小夏ちゃん本当に東高なんだ。すごいね、僕の学校より偏差値8も上だから……」
感心した様子でそう言う誠に向けて小夏は胸を張った後、階段の方に目をやった。
そこにはため息をつきながら自慢の日本髪を気にしつつ降りて来るお蔦の姿があった。
「小夏ちゃん……あの三人はなんとかならないのかい?今日は歓送迎会だ。甲武のうちの店でもそういう会は毎年あったけどあの雰囲気……とくに西園寺のお姫様の機嫌は最悪だよ……荒れなきゃいいんだけどね」
不安げにそう言うお蔦にかなめとは犬猿の仲の小夏は鼻を鳴らして笑っていた。
「ああ、あの外道に何を期待しても無駄よ。どうせ自分の事しか考えてないんだから。その点、日野少佐は気が利くし……うちにワインセラーなんてまるで都内の高級店みたいなものを買ってくれるし……私は日野少佐びいき。神前の兄さんも日野少佐ならきっといい夫婦になれると思うのよね」
たぶん嵯峨経由で春子の口からかなめとかえでが誠を取り合って壮絶な冷戦に突入していることは小夏の耳にも届いているようだった。誠は照れたように笑いを浮かべて隣で黙って誠を見上げて来るリンに目をやった。
「しかし、あのお姫様の怪力は半端じゃないからね。またテーブルの一つも叩き割って場を無茶苦茶にするんじゃないかってアタシはそればっかりが気になってさ。神前君とやら。ここは男の甲斐性で何とかしてやってくれないかね?」
お蔦の心配顔にただ愛想笑いを浮かべつつ、二階席への階段を上り始めたかえでに続いて誠も覚悟を決めて階段を上り始めた。




