第244話 愛から憎悪へ……憎しみの姉妹
「なんだ、姉さんには隠し事は出来ないみたいだね。そうだよ、それが僕の本来の目的だ。でも、それには誠君の同意が必要だと僕は真なんだ。姉さんはそれができない人だ」
かえではここで開き直ったかのようにそう言ってこれまで姉であるかなめに向けてきた尊重の念をかなぐり捨てたように吐き捨てた。
「アタシが成長できねえ!何が言いてえ!」
かえでの態度にかなめはこれまで抑えてきた怒りを一気に爆発させてそう叫んだ。
「なあに、事実を言っただけだよ。姉さんは3歳の時から一切成長していない。自分の事しか考えない。僕に対することは良い。そのおかげで僕は本当の喜びを知ることができたから。でも義基お父様に対してはどうかな?欲しいものは全てねだって、迷惑は散々かけて……ああ、あまり身内の恥は僕もかきたくないから遠慮しておこうか。じゃあ、ここにいるベルガー大尉やクラウゼ中佐に対してはどうかな?自分勝手に暴走して、自分のやりたくない仕事は全部二人に押し付けて……それが大人の態度なのかな?」
明らかにかえではこれまでの姉であるかなめを愛するかえでから態度を変えていた。
地球人の愛は常に憎しみに変わるという。
誠は昔そんな話を聞いたことがあった。
かなめとかえで。二人とも遼州人と地球人のハーフである。嵯峨が言うにはかなめの精神構造は遼州人に近く、かえでの精神構造は地球人のそれに近いという。
かえでの今のかなめに対する態度は姉に対する愛が冷めて憎悪へと変わった瞬間のように誠には見えた。
「知るか知るか知るか!そんなことは関係ねえ!神前はアタシんだ!アタシがそう決めた!カウラ!オメエにもやらねえ!変な動画を送るのも止めろ!アメリア!趣味を理由に神前に近づいたらアタシが射殺する!ランの姐御の命令?そんなの知るか!アタシがそう決めた!それで十分だ!神前はアタシのもんだ!」
かなめはそう叫んでつかつかとかえでに歩み寄るときっちりと着こなしたかえでのスーツの襟首をつかんで引き上げた。
「ほうら、そうして何かというと暴力だ。でもその暴力が僕には快感でしかないことは姉さんが一番よく知ってるよね?それに僕は法術師。暴力の比較で言えば姉さんには一切勝ち目はない。それでも力比べで誠君を僕から奪おうというのかな?実戦慣れして強い敵とも渡り合ってきたことがある姉さんならそれがいかに無謀なことかくらいは分かると思うんだけどな?」
一回り背の低いかなめを見下ろしながらかえでは一切表情を変えずにそう言ってにこやかに笑った。
『これって……姉妹の修羅場……僕をめぐる姉妹の戦い……こんなのフィクションでしかありえないと思ってたけど……目の前で見ちゃったよ』
にらみ合うかなめとかえでを見ながら誠はその持ち前の気の弱さから何もできずに二人を見守っていた。




