第242話 甲武四大公家末席当主の専用機
かえでの姿を一人の明るい赤い色をしたソバージュの運航部の女子隊員が目にすると周りの隊員達はかえで達の方を怪訝そうな顔で見ながら道を開けた。
「すまないね、僕の機体……どんなものか楽しみだ」
かえではそう言いながら両脇に避けていく整備班員や運航部の女子隊員に笑顔を振りまきながら自分の機体を目指した。
そこで誠には気付いたことがあった。
彼等の表情はどれもこわばった笑みのようなものを浮かべている。
『なんだ?機体に何か問題でもあるのか?変態のかえでさんだからエロいノーズアートで恥ずかしい思いをしたくないとか……さすがにそれは無いだろうな。かえでさんは仕事中は真面目だから』
嫌な予感に苛まれながら進む誠の正面に三機の真新しいシュツルム・パンツァーが並んでいたが、その中央の銀色の機体がすぐに誠の目を引いた。
パッと見たところ誠の05式と形状に違いはない。三人とも法術師のパイロットが登場するのだからこれは『05式改乙型』と呼ぶべきなのだろうが、誠の機体と同じく法術師の能力を増幅する『法術増幅触媒』はハニカム装甲の第二装甲に挿入される形になるので違いが無いのは当たり前と言えた。
しかし、二機の誠と同じオリーブドラブの東和陸軍の標準色の05式改に比べて、中央の白銀の機体は異彩を放っていた。
近づけばわかるが、ただ機体の色が磨き抜かれた銀食器ように白銀に輝いているだけでは無かった。
肩には青い縁取りがなされ、全身には金色の機体の美しさを強調するような装飾が施されている。
まるで中世の高貴な身分の騎士の鎧のような圧倒的な迫力と豪華さでその機体は見るものを惹きつける美しさを放っていた。
「なるほど、これは考えたね。一応、デザインはゲルパルトの宝飾デザイナーに一任してあったんだけど……彼の趣味が良く分かる出来栄えだ。これは僕の機体にふさわしい……気に入ったよ。まさに甲武四大公家当主の乗機には最適だね。誠君はどう思うかな?」
笑顔で誠を振り返るかえでに誠は言葉が無かった。
決して飾らない機体。戦いとは決して褒められた正しいものとは言えないもの。純血の遼州人である誠には戦場に立つことになにがしかの意味を見出しているらしい地球人とのハーフのかえでの考え方が今一つ理解できずに愛想笑いを浮かべた。
「戦いを嫌う遼州人らしい反応が君の顔には見て取れるよ。ただ、悲しいことに僕は戦うことに意味を見出す地球人の血を半分引いているんだ。戦う以上、それは意味のある者、美しいものでなければならない。そうでなければ敵に対して失礼だ。それが僕の思想さ」
そう言って笑うかえでの前に三人の制服姿の女性が立っているのが見えた。それがかなめとカウラとアメリアであることは誠にもすぐに分かった。




