第239話 辞めても明るい未来と珍妙極まりない仲人
「僕が失業すると誰が得をするんですか?僕の事が嫌いな菰田先輩ですか?」
誠が真っ先に思い浮かべたのは誠を目の敵にしていて何かというと文句をつけに来るカウラファンクラブである『ヒンヌー教徒』を指導する管理部の経理担当課長の菰田邦弘主計曹長の四角い顔だった。
「おいおいおい、あんなのに好かれてお前さんはうれしいのか?これからの人生設計を一緒に作り上げたい。そう願ってやまないお前に心惹かれてる女子が一人いるじゃないか……本当にアイツは不幸体質の持主だな。同情して来るよ」
嵯峨は呆れたようにそう言うとタバコを天井に向って吹かした。
『不幸体質』そんな女性は誠は一人しか知らなかった。
「パーラさん……あの人うちを辞めたがってますもんね。でも僕が失業したらパーラさんを養っていくなんて……」
落ち込みつつ誠はそうつぶやいた。そんな誠の肩を嵯峨は優しくたたいた。
「アイツはうちではレアな常識人だ。今年の受験は間に合わなかったが来年は体育大学の体育学部を受けて教師になりたいと真面目に言ってきた。俺としてはアメリアの暴走を止められるのはアイツしかいないから抜けられるのは痛いんだが……人それぞれだもの。止められないよね。そん時にアイツはかなめやアメリアにいじめに近い状況にあるお前さんの不幸な状況を切々と語って来たんだ。そして二人で一緒に暮らす貯金もあると言ってきた。お前さんが入れる教育学部のある大学の学費も全額アイツが出すそうだ。お前さん……高校の時の文系科目の成績が悪いから奨学金の対象にならないだろ?その辺も大丈夫だと言ってたぞ」
今度の嵯峨はパーラ押し。結婚する人間の80%が見合いか人づてによる紹介であるこの東和共和国なら昼は島田がかえでを、それが終われば嵯峨がパーラを押して来るのはある意味当然のように感じて誠は大きくため息をついた。
「俺は結婚は完全に失敗した口だけど、お前さんとパーラならば安心して仲人を引き受けられる。俺と秀美さんとお蔦と春子さん。それとこの話をしたら結婚なんてめったにできないから俺と一緒に仲人をしたいという立候補してくれた女性があと二名ほどいる。安心して結婚しろ」
嵯峨のとんでもない提案に誠は開いた口がふさがらなかった。
「あのー……普通仲人って夫婦でやるものですよね?なんで仲人は男が一人で女性が5人も居るんですか?そんな結婚式の話なんて聞いたことがありませんよ」
呆れた様子の誠に嵯峨はいつもの『駄目人間』の顔に戻り誠を見つめた。
「そりゃあ俺が遼州人としては信じられないぐらいモテるから!しかもその5人は全員非常に仲がいい!凄いだろ!お前さんの好きなエロゲのハーレムエンドを体現した男なんだよ、俺は。お前さんも男として産まれたら俺のようなモテ男を目指すことだな」
満々の笑みの嵯峨に言葉を失った誠はあきれ果てて嵯峨が止めるのも聞かずにそのまま『駄目人間』の巣である隊長室を後にした。




