第236話 タイミングの良すぎる女と複雑な誠の現状
「結局男って自分の事しか考えて無いのね……島田君の本音はそこに有ったんだ……」
突然背後からの声に誠と島田は驚いて振り返った。
そこには温泉卵にアジシオをかけて食べているアメリアの姿があった。
「なんでアメリアさんがこんなところに居るんですか?全部俺達の話を聞いてたんですか!」
驚いたように叫ぶ島田にアメリアはいつもの糸目をさらに細めて島田を頭の先から足先まで値踏みするように見つめた後静かにうなずいた。
「だって、全自動温泉卵製造装置は倉庫の奥にあるじゃない。『武悪』が来てからお昼には食後に温泉卵を食べることに私は決めてるの。そして今日もこうして温泉卵を取りに来たら珍しく真剣な顔をして島田君が誠ちゃんにかえでちゃんとの結婚を勧めている……そんな話聞き逃さないような甘い女に見られてたんだ……ずいぶんとまあ島田君も偉くなったものね」
アメリアの顔はいつも通り笑っていたが口調は感情をわざと押し殺したような調子でその言葉には気の弱い誠すら怯えさせるような迫力があった。
「いや、これは東和では当たり前の話です!神前と日野少佐は婚約者!日野少佐の婚約を破棄すれば日野少佐から神前は多額の慰謝料を要求されることは間違いありません!日野少佐はポケットマネーで寮を買い取っちゃうくらいの大金持ちの甲武貴族なんですよ!そんな人が要求する慰謝料を私立高教師の息子に過ぎない神前に払えると思いますか?俺はあくまで先輩として、神前の今後の生き方について語っていた訳であって……」
青ざめて言い訳をする島田をアメリアは温泉卵を頬張りながら見つめていた。
「ふうん、でもかえでちゃんはたぶん誠ちゃんに振られても慰謝料なんてケチなことは言わないと思うわよ。『恋愛は最高のゲームだ』とかいつも私に行って挑発してくるようなかえでちゃんだもの。私が勝ったところでかえでちゃんはお金の話なんてたぶん一切しない。それより……かなめちゃんは一年以内に誠ちゃんを射殺する。たぶんこれはあり得るわね。カウラちゃんは今はツキがあって毎月百万くらいパチンコで勝ってるけどそのツキが終われば自己破産する。これも十分あり得る。でも私が駄目な理由が三十路のおばさんだから?その扱い……島田君。あなたは私をそう見てるんだ……よくわかったわ……これからかなめちゃんの所に行ってあること無いこと島田君が言ってたとかなめちゃんに言ってかなめちゃんの射撃の的に島田君が志願していると伝えるから覚悟しておくことね」
アメリアは剝き終えた卵の殻を島田の弁当箱の上に乗せるとそのまま去っていった。
「島田先輩……今のアメリアさんの言動で僕の複雑な現状を少しは理解していただけたでしょうか?」
うなだれたまま、おそらく『不死人だから撃ち放題だ!』と叫んで射撃所に縛り付けられてかなめの愛銃スプリングフィールドXDM40の的になることが確定した島田に向けて誠は同情の視線とともにそんな誠の本音を口にした。




