第235話 変わっていくかえでと島田の本音
「確かに……かえでさんが素敵なのは間違いないですけど……」
誠は弁当に箸をつけながらそう言って口ごもった。
「この国の貞操主義?そんなこと言いだしたら俺だって昔のヤンチャの話をサラにしなきゃなんなくなる。それ以前にうちにはそう言う物とは無縁な人間が一名いるだろ?しかもそいつが隊長やってる。本来部下の見本とならなきゃならねえ人間が一番乱れた生活を送ってるんだ。そのことを考えたら日野少佐の過去なんてどうでもいいだろうが」
島田の誠を見つめる目は真剣そのものだった。
嵯峨惟基……誠が知るだけでも嵯峨には三人の愛人がいる。お互い納得がいっているらしいところが貞操観念の強い遼州人の誠には理解不能なのだが、嵯峨が遼帝国皇帝で嵯峨の父である霊帝には7000人の妻がいたかなめが感心したように話すのを聞いていたので嵯峨の乱れた生活など遼帝国の皇帝であればそのようなものなのだろうと誠は納得していた。
「別に貞操観念とかそう言うのは関係ないですよ。かえでさんは本当に僕の事が好きみたいですし、このところは真剣に僕だけを見てくれているのはよくわかるんです……でも……」
かえでは変わりつつある。変わり続け、成長し続けるのが人間だと語るかえでが変わり続け成長し続けるのは当然のことなのかもしれないと誠は思っていた。
そしてかえでの望みは『許婚』である誠と結ばれること。
そのためにはかえではどこまでも自分を変え続けるだろう。
その心に応えたい。その気持ちが誠の中でこのところ膨らんできているのは間違いなかった。
今回の『神聖聖書教会』の起こした法術犯罪の調査に同行して彼女が仕事に対してはこれまで彼女に持っていたかえでに対する変態と言う評価以外の先を見据えて行動するすべてを見通せる理想の女性なのも十分理解できた。
それでも誠は決意をすることができずにいた。
島田は弁当を置くとそのまま茶色い短髪を掻きむしって誠をにらみつけた。
「おい、神前。ぶっちゃけた話を言うわ。テメエのモテるところが整備班の遼州人の野郎共の士気を下げてる。俺以外の彼女持ちの西。アイツがひよこちゃんと付き合うようになった時は一時的に俺の兵隊たちは絶望に打ちひしがれたがモテる地球人である西にひよこちゃんがなびくのは当然だと全員諦めがついた。ただ、オメエは連中と同じ遼州人だ。本来モテないはずなんだ。それが今こうして現にモテてる。その状況をいつまでも放置しておくわけには俺も技術部を預かる責任者として許しておくわけにはいかねえんだ。だから言う、オメエは日野少佐と結婚しろ。早い方がいい。そうすればうちの兵隊共もアイツは要するに勝ち組なんだと納得する。そうすればすべてが丸く収まる……な?俺の苦労も分かるだろ?」
珍しく島田は哀願するような口調で戸惑いつつ弁当のご飯を口に運ぶ誠に向けてそう言った。




