第233話 急な新型機の納入と惜しい人
昼休み、誠はいつも通りハンガーで西の売っている弁当屋の格安弁当を買うと誠の05式乙型の真下で弁当を食べていた島田の隣に座り込んだ。
島田は誠の機体を見上げながら弁当と手に『武悪』の『法術増幅触媒』を使って作った温泉卵を手に持ちながら誠を迎えた。
「今回は済まなかったな……舎弟であるオメエに借りを作るなんて面白い話じゃねえが仕方がねえか」
少し照れたようにそう言うと島田は床を指さして誠に隣に座るように命じた。
昼だというのに作業音がハンガーにこだましているので誠はその奥に目を凝らすとそこには三機のシュツルム・パンツァー用の固定器具を設置する工事が行われていた。
「かえでさんたちの05式改……納品はいつになるんです?」
弁当の蓋を開けながら誠は何げなく島田に聞いてみた。島田は温泉卵を食べながら難しい顔を誠に向けてきた。
「ああ、明日。ランの姐御が言うには来月の末にはちゃんと動くように調整しろって言われててね。ただでさえ来月初めには『武悪』の菱川重工製『法術増幅触媒』が到着してその作業もあるってのに……」
島田は本当に面倒くさいというようにそう言いながら誠の機体を見上げていた。
「でも明日って……まだ年度内ですよ。よく予算の都合がつきましたね」
呆れてそう言う誠に島田は笑いかけてきた。
「これも高梨部長の置き土産だ。ランの姐御のご依頼にこたえるにはどうしたらいいかって西に作業日程を逆算させたんだが、明日中に入れないとどうしても間に合いそうにねえんだ。シュツルム・パンツァーは複雑な機体だ。しかも今回のは基本設計に無い改良のくわえられた機体だからメーカーは確かに間違いなく動くと言うが、パイロット上がりで技術屋の俺にはそんな言葉は信用できねえ。だから一度バラシて機能をチェックした後、ちゃんと動くかどうか日野少佐に外のグラウンドで動かしてもらってそれで初めて『使える』って言えるような機体だからな。ああ、高梨部長の送別会だけどそんなわけだから俺は欠席。これからは05式改の調整で何連勤になるか……頭が痛いな」
島田はメンチカツを口にツッコみながらそう言って苦笑いを浮かべた。
「でも、島田先輩は高梨部長にはお世話になってるって日頃から行ってるじゃないですか?お礼とかはしとかないと駄目ですよ」
誠の言葉に島田は満面の笑みを浮かべる。
「なあに、05式改の調整が終わったら高梨部長のおごりで東都の銀座で一緒に飲もうって話になってるんだ。俺は制服組だが、あんなに話の分かる背広組のエリートは見たことがねえよ。まったく惜しい人ほどうちを出ていくんだな……もったいねえ話だ」
しんみりした表情で島田はそう言って食べ終えた弁当を置くと誠に向き直った。




