第232話 事件の終了報告と人事異動
「……報告は以上になります」
機動部隊の詰め所の機動部隊長の席に座るちっちゃな副隊長のランとその隣のパイプ椅子でかえでの報告を受けていた茜は満足げにうなずいた。
「あー、これで年度末の最後のアタシ等の仕事も終了ってわけだ……、まあ茜には色々引き続いての仕事はあるだろうが……しばらくは法術特捜の補助任務から日野達を解放してやってくんねーかな?年度替わりの人事異動でいろいろ面倒な話が出てきちまって……」
ランは頭を掻きながらそういって足が届かない副隊長の椅子でぶらぶらと足を揺らしていた。
「そうですわね。私が追っている事件はいくつかありますがそれも人手が必要になるほどのものはありませんから。ラーナと東都警察や千要警察、その他各県警の法術捜査関係者だけでどうにかなりそうな事件ばかりですもの。それより、異動の話……色々あるんですか?」
珍しく好奇心に駆られたような顔をして金髪のポニーテールを揺らしながら茜はランにそう尋ねた。
「まーな。また、管理部の部長が変わるんだと……高梨さんはどうしても国防軍としてはうちに置いておくには惜しい人材らしーや。明後日、高梨さんの送別会やるから。アタシが月島屋を抑えといた。それと代わりに来る管理部長が……日野……聞いてんだろ?」
ランは明らかに不愉快そうに目の前で直立不動の姿勢を取っているかえでに向けてそう言った。
「はい、あの女性からは聞いています。でも、彼女も甲武の大蔵省でも次期財務局の部長を有力視されていたほどの人物ですよ。確かに、第二小隊の05式改の予算を確保するなど高梨部長の手腕は確かですが、それに劣るとは到底僕には思えませんが」
きっぱりとそう言い切るかえでの声に聞き耳を立てていた背後の第一小隊の机を叩いてかなめが立ち上がった。
「甲武の大蔵官僚が来るのか!嫌だね!大蔵官僚は自分がエリートだからってデカい顔ばかりして人を見下しやがる。しかも、あそこで管理職になるってことは公家貴族の鼻持ちならねえ血筋だけが自慢の嫌味な奴だろ?そんな奴がうちに来るのか?それとなんでオメエがそのことを……あれか、オメエの『マリア・テレジア計画』の中の女の一人か……余計面倒だ」
かなめの抗議にリラックスした表情を浮かべたかえでは姉の方を向き直った。
「そうだよ、よく分かっているね。僕が15歳の時に出会って初めてこの話を提案した素敵な女性だ。公私の峻別もできる理性的な女性だよ。婿養子の夫は結局僕の魅力に勝てずにすごすご出て行ったそうだ……まあ、僕から見ても彼女にはあの男はふさわしく無かったね。当然のことかもしれないな」
そう言って笑顔を浮かべるかえでを背後に見ながら誠は来年度はさらに色々と面倒ごとが自分を襲うことになるだろうと不安に駆られながら端末での作業を続けていた。




