第226話 あまりにあからさま過ぎる護衛
ホテルの自動ドアを出ると誠、かえで、リンの三人は目の前の恐らく島田が国立左倉病院に連れていかれることになるアメリカ製高級電気自動車をすり抜けて裏手に停めてあるかえでの自動車に走った。
「相手も用意がいいですね……こんな車を用意しておくなんて」
走りながら感心したようにそう言う誠に振り向いたかえでは白い歯を見せる。
「用意が良すぎるのも考えものだよ。恐らく僕達が言い含めて無ければどんなに島田准尉が金に汚くてもこれは何かあると察して逃げ出そうと考えるはずだ。その為に……見たまえ」
裏路地に止めてあったかえでの黒い高級乗用車の周りには数台の白い軽自動車が停めてあった。
そのどの車にも『神聖聖書教会』のエンブレムが記されている。
「彼等は必死過ぎる。あまりにも滑稽なくらいにね。それが信仰と言うものかもしれないが……信仰とは理性を否定することで初めて成り立つものだ。この状況でも信仰を優先するあまり彼等は理性を欠いている。この状況では僕達でなく下手をすれば地球の新興宗教団体には目を光らせている公安調査庁すら動きかねない……そこまで彼等は追い詰められているというところかな」
車の後部座席に乗り込んだかえでの隣に誠も座り、当然のように運転席にはリンが座って車を出した。
かえでの車は二人の男と雑談をしてかえで達が配置につくまでの時間稼ぎをしている島田の姿が見える位置で停まった。
すでに通りの一隅にはカウラの『スカイラインGTR』の姿があり、その中にはかなめとカウラ、そしてアメリアが待機している。
「それにしてもカウラさんの車は目立ちますね……まあ、そう感じるのは僕が東和生まれで島田先輩のおかげで東和で開発されたスポーツカーを嫌と言うほど見せつけられたからなんでしょうけど……『神聖聖書教会』の人達は気づきませんかね」
誠は銀色のカウラの車を見ながらそうつぶやいた。
「君もあの車でいくつもの事件を追って来たんだろ?つまり東和の人間ですらスポーツカーマニアでもない限りあの車が本当にレアな車だということは気づかないということだ。アメリカ人である『神聖聖書教会』の人間には東和のスポーツカーと区別なんかつくわけがないよ。それより、僕達の車の方が心配だ。国立左倉病院は基本的に金持ちの行く病院ではない。そこにこの車が向かう……そうなれば連中も警戒するかもしれない。恐らくさっきの路地に停めてあった教団の車も動き出すころだ。リン、運転は慎重に……少し距離を取りすぎるくらいの方がいいくらいだね。見失っても島田准尉の行き先は決まっているんだから問題ない」
かえでは冷静にそう言うと身振り手振りで時間を稼いでいた島田が車に乗り込んで走り出すのを見てリンに発進の指示を出した。




