第225話 犯罪成立……そして次なるミッションに
『そうですか、ミスター島田。あなたならそう言っていただけると確信しておりました。それではこちらの書類にサインを……』
背の高い方の白人男性が島田に書面を差し出す。島田は何食わぬ顔をしてそれにサインをしていた。
「事は順調に進んでいる……しかし、護衛の姿が見えないが……」
かえではこごえで手元の小型マイクにそうつぶやいた。
『うんにゃ、ぞろぞろいやがる。このホテルに来てる白人連中はほぼ全員が『神聖聖書教会』の信者だな。誰もがカバンだの紙袋だの持ち歩いてるが……わざとらしいよ。そん中に銃が入ってるのがもろバレだ。素人が武器を持つと表情が微妙にこわばるんだ。東都戦争の時に銃を持ち慣れない東和のヤクザの鉄砲玉があんな顔をして銃を持って歩き回ってた……島田がごねたらこのフロアーは血の海になってただろうな』
喫茶コーナーの入り口の灰皿に張り付いてタバコを吸っているかなめがそうつぶやく。非正規部隊の経験の長い彼女の観察眼は知っていたので誠は恐怖に震えた。
島田は出された書類にサインを済ませるとコーヒーをゆったりと飲む。しかし、その手は僅かに震えている。
「あの『鬼の寮長』でも怖いことがあるのですね。意外です。ああ、彼は妄信的なオカルト信者で幽霊の存在を信じて怖がっているとか……自分が死なないのに幽霊が怖いとは理解不能ですね」
リンは島田の震えながらコーヒーを飲む様を見ながらそうつぶやいて悪い笑みを浮かべた。
「じゃあ、先に立ちましょう。島田先輩たちの行き先は分かってるんです。会計に手間取ってあの男達に気取られたくありません」
ここは捜査経験者としての意地を見せようと誠は残ったコーヒーを飲み干してそう言って立ち上がった。かえでとリンも同じように立ち上がる。
すでにカウラとアメリアは島田の契約が成立したことを確認したことですでにバノンの身柄の確保は出来ると踏んですでに会計を済ませて喫煙所でタバコを吸うかなめに手を振った後、そのままホテルのラウンジをゆっくりと出ていくところだった。
『それでは、ミスター島田。患者の様態は一刻を争う状態です……行きましょう』
誠の耳に男の一人の低い声の男の声が響いた。
「動くみたいですね」
会計をカードで済ませたかえでを見ながら誠はそうつぶやいた。
「彼等もかけがえのない教祖の命がかかってるんだ。警戒感がおろそかになるのは当然かな……ホテルの前に黒い車がある。たぶん昨日のうちに東都の教団本部から幹部クラス用の高級車をこちらに回したんだろうね……」
かえではそう言うとそのまま足を裏の路地に駐車してある自分の高級乗用車へと向けた。




